17.戦場に向かう。
レリックに連れられ気が付くと近衛兵がいる王宮の一画に来ていた。
「ちょっとレリック。あなたは近衛兵でしょ。よく考えてみればなんで戦場に行く必要があるの?」
「あれ言ってなかったか。平時は王宮で近衛兵の第一部隊を指揮しているけど一旦戦端が開かれるような緊急時には俺の部隊は守備隊と一緒に戦場に行くんだよ。」
「そんなの聞いてないし、それよりなんでそれに女性である私が行かなければならないの。」
「そりゃ魔王討伐もしてて経験豊富な人間なんだからあたりまえだろ。出発は三日後の早朝だから。」
レリックは何やらいろいろと部下に命令しながらめんどくさそうにメグに説明した。
「これをどうぞ。」
先に執務室を出ていたレイにメグは書類を手渡された。
そこにはいつの間に書かれたのかメグの名が記され王印も押された正真正銘の”出兵命令書”が彼女の手の上にのっていた。
なんでこんなものがここにあるの。
誰のしわざよ、これ。
考えた瞬間に王太子とアンジェの顔が浮かんだ。
あの二人・・・。
ちょっと待って。
まさかこれからもこんなことがある度にお呼びだしされたりとか・・・。
メグはいやーな予感に出発準備をしているレリックの傍にいるレイの肩を背後からぐいっと掴んだ。
「どうかされましたか。」
レイはメグの行動を予測していたのか驚く様子もなく振り向いた。
「これ、どうやって手に入れたの。」
メグは渡された”出兵命令書”をパンパンと叩いた。
「ああ、それならあなたの養父からかなり前に提出されていたものです。」
何ですと。
王太子夫妻じゃなく養父!
あいつが・・・でもなんでだ。
これが何か商売上特になる・・・うーん思い当たらない。
「メグ・・・メグ・・メグ!」
レリックに背後から肩を掴まれやっと我に返った。
「聞いてたか。」
いやまったく。
聞いてませんでした。
レリックはため息を吐きながらも馬はこっちで用意するがそれ以外のものはどうすると聞いてきた。
レリックのくせに今回はやけに気が利くなと思いながらも基本魔法を使うのが攻撃の主力になるので後は自分で準備するから大丈夫だとことわってメグはすぐに王宮を出た。
待たせていた馬車にはすでにホソイが乗り込んで待っていた。
「遅かったですね。」
「そりゃこんなもの見せられれば遅くなるわよ。」
メグはホソイに”出兵命令書”を見せた。
ホソイは驚きもせずそれを見するとすぐに返して寄こした。
「いつから知っていたの。」
「相談されましたので国境沿いがきな臭くなっている旨はお伝えしました。」
原因はお前か!
しまった。
戦争となれば物も金も人も動く。
狙いはそこ!
メグがホソイを見れば一言も発していないのに頷いた。
どうやらメグをだしにして軍関連の備品売買に食い込んでたわけね。
なんだかくやしい。
「メグ様。さすがにもう軍関連では入れる余地はありませんよ。」
メグたちを乗せた馬車はガタゴトと音を立てながら王都にあるメグの自宅に向かった。