11.王宮に女性文官誕生。
翌朝。
さっそく王宮より通達が来た。
「よし。これで愛妾の件は潰せたはずだわ。」
メグは数度王宮からの通達に目を通した後めちゃくちゃ文句を言い続けているホソイと恋人である文官に会えるのを楽しみにしていてご機嫌なトリノを連れて豪華な二頭立ての馬車で王宮に向かった。
「それにしてもずいぶん早い通達でしたね。」
トリノはメグの前に座ってちょっとウキウキした表情のまま話し出した。
「それはそうでしょう。どこかの高貴な方のせいでいま王宮にいる文官はてんてこ舞いですから。そういえばトリノさんも最近はデートの回数が減ったのではないですか。」
「えっなんで知ってるのホソイ。」
「そりゃあ彼のところが一番忙しんはずですからわかりますよ。」
「えっそうなの。」
ホソイはトリノ質問に素直に頷いていた。
まあそうよね。
あのバカ王子とバカ聖女もとい今は王子妃だったか。
あの二人が飢饉の元凶を作ったんだから・・・。
ぶー垂れた表情のメグは二人の話を聞き流しているうちに馬車が王宮についた。
御者が書類を出すとすぐに馬車の扉が開いて待っていた侍従が現れた。
メグを先頭に三人は侍従の案内でセドリックの執務室に向かった。
侍従が執務室の扉を開けるとセドリックと数人の文官がこちらに視線を向けた。
メグが嫌そうな表情のセドリックを無視して室内に入ると本人から文句が飛び出した。
「おい。普通入れと許可が下りてから入るもんだろ。」
「わかりました。では」
メグはくるっと後ろを振り向いて扉に向かおうとしてセドリックに呼び止められた。
「もういい。でっ何しに来た。」
「そこにいらっしゃる文官の仕事を手伝いに来ました。」
「出来るのかそんなこと。」
メグはセドリックの言葉に思わず心の中で反論した。
てめえよりは出来るわ。
とはいえ一応王子なのでもう少し丁寧な言い方にした。
「お試しに何か書類をください。」
セドリックはむっとした表情のまま持っていた書類をメグに渡した。
メグはそれをサラッと見ると却下の箱にそれを入れた。
「却下する理由は?」
「利益もあがらないのにこの炊き出しをする理由がありません。」
「理由はある。多くの孤児が飢えから救われる。」
「資金がかかりすぎます。」
「なら飢えている人間を放置しろというのか。」
「何もしなければ飢えるのは当たり前です。」
「お前ならどうする。見捨てるのか。」
「何もしない人間は見捨てます。」
二人は睨み合いを始めた。
「話にならん。もう帰れ。」
「では何かをしている人間から多くを搾取することはいいんですか。」
「どういう意味だ。」
「そのままです。我々商人や農民は努力して働いてお金を稼いでいるんです。何もしない人間に無駄に奉仕するために働いているわけじゃないんです。」
「たくさんあるんだからいいだろう。これくらい。」
「なら一番多く持っている王子と王子妃のお二人だけが支払えばよろしいんではないですか。」
「屁理屈をこねるな。ならその資金源をお前ならどうする。」
「私なら彼らを働かせてその対価で食料を出します。」
「例えば?」
「教会・大通り・公園の清掃。」
「掃除だとばかばかしい。」
「いくらかかってますか。」
メグが王子の言葉を無視して傍にいた文官に話しかけた。
「今炊き出しにかかっている費用の三倍です。」
「彼らがそれを肩代わりすれば費用はどう。」
「やり方にもよりますが上手くすれば赤字ではなく利益も上げられるかもしれません。」
「なっ・・・。」
固まっている王子を無視してメグは答えてくれた文官の傍に空いていた椅子に座ると白紙の書類に事業計画書をサラサラと書き出した。
数十分で書き上げた書類が王子の前に差し出された。
「王子、承認のサインをお願いします。」
王子は苦々しい表情のままサインをするとそれを手荒くメグに渡した。
メグはサインされた書類を受け取るとすぐにそれを実行すべく傍にいた文官に書類を関係部署に渡してくるように言い渡した。
それからメグは王子の執務室にいた文官を顎で使って次々に書類を捌いていった。
書類の山が目に見えて減って来た時、ものすごい音が響いてセドリックがいる執務室の扉が開いた。
バッターン!




