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第三十五話:尋問



 すぐに魔力探査をかけたが、何も掴めない。こういうのは私よりもユリアーヌの方が得意なので、早々に諦めた。

「千羽さん、今の事をユリアに伝えて欲しいのだけど」

「別にいいけど、ユリアーヌ先生がどこにいるか分かるの?」

「うん、それは大丈夫。それで、ユリアに魔力探査を頼んでもらえるかな」

「魔力探査?」

「魔石を起動させた時の魔力が残っていれば、小野田さんが転移で飛んだ先が分かるかもしれない。厳しいとは思うけどね」

「分かった、伝えてくるから、どこに行けば」

「あ、転移で送るね」

「えっ――」

 驚きの表情を浮かべた千羽さんが、パッと光を散らしながらこの場から消えた。ユリアーヌの傍に千羽さんの魔力が移動したのを確認してから、河野君を見る。

「河野君には、アレクに今の出来事伝えてきて欲しいのだけど」

「アレク?」

 訝し気な表情を浮かべる河野君に、そう言えば彼らの前で呼んでいなかったかと言い方を改める。

「アレキス軍団長の事」

「あぁ、アレキス団長とも仲良いのか。てか、倉賀野って結構あだ名付けてるんだな」

「あだ名っていうか、どうも日本人以外の名前って何故か覚えられなくて」

 お陰で海外作品の小説は、登場人物を把握するのにすごく時間がかかってしまう。

 それに前回は召喚されてだいぶ混乱していたのもあって、ユリアーヌとアレキスのたった二人の名前すら中々覚えられなくて、見かねたアレキスが縮めたらどうだと提案してくれたのだ。

 流石に今では覚えているが、それでも通常よりはだいぶ時間がかかっただろう。

「俺も名前噛みそうになるから、倉賀野式で呼んでいいか聞いてみようかな」

「ついでに、街での魔獣の件も伝えておいてもらえるかな。それで今の出来事とその後の対応はアレクにお任せしますって伝えてもらえると」

「わかった」

 千羽さんを見ていたので、河野君はその場に立って待っている。私が彼に魔法をかければ、河野君の姿も光と共に消え去る。

「倉賀野さん、僕は何をすればいいかな?」

 真剣な表情の大友君に、私は頷く。

「小野田さんが何者かと接触していたのは間違いないけれども、小野田さんが城外に出ていたとは考えられないから、おそらくこの城の中に不審者が侵入していたはず。でも転移魔法の魔石を作れるような人物がここに来れば、私かユリアが必ず気づく。今まで特に問題はなかったから、おそらく接触があったのは私達が遠征に出た後……小野田さんに変わった事が無かったか、お城に残っていた人達に聞き込みをお願いしたいのだけど」

「分かった。倉賀野さんはどうするの?」

「私は……一番関わってそうな可能性が高い奴から聞きこみかな」

 足下に視線を移せば、大友君の視線も私の足下に移動する。縄でグルグル巻きに縛られ転がされている変態を見て、納得したのか頷いた。

「気を付けてね」

「ありがとう」


 大友君を小野田さんの部屋前に送った後、私も変態を連れてさっさと部屋に転移した。そして変態の猿轡を外し縄を半分解いてから窓の外に放り投げ、解いた紐の端を握りしめる。

 まさにミノムシの様に窓から垂れ下がる変態に声をかけた。

「いちいち言わなくても私が聞きたい事は分かると思うのだけど、何か言う事はある?」

 窓の外を歩いていた人達が、変態ミノムシを見つけたのか階下からざわめきが聞こえてくる。

「魔石の使用が一瞬だった為、私にも魔法の解析をする事は出来ませんでしたが、私たちが使う転移魔法と似た物を感じました」

「つまり、小野田さんに接触したのは貴方の知り合いの可能性が高いという事ね?」

「こちらの世界にやって来たのは、間違いなく私が最初。つまり、タイミングは分かりませんが、ヒュンケルト君以外にもこちらの世界に来ていた者はいるようですね」

「どこに居るかは分からないの?」

「おそらく、こちらの方は魔力が薄すぎるので、魔族側に居るとは思いますが、正確な場所までは」

「そう……」

 無理かもしれないが、念の為魔界に行って魔力探査をかけてみた方がいいのかもしれない。

「私達にバレないよう接触し、魔力痕跡を消し去り、魔石を渡すような相手に、心当たりはないの?」

「そうですね……コランドール君でしょうか?」

「どんな感じの奴なの?」

「一言で言えば、魔法脳筋ですね」

「……えぇ?」

 イメージが全く湧かない組み合わせがきた。

「何でも魔法で片づければいいと思っているので、深い作戦はできません」

「でもそれだと、わざわざ異界の勇者に接触して何か吹き込んで魔石持たせて探らせて痕跡消して、っていう用意周到さと合わなくない?」

「おそらく、カトリアス様が知恵を授けたのかと。私とヒュンケルト君が戻っていない上に連絡も入れていないので、おそらく偵察を放って様子を探らせマリネ様に辿り着き、揺さぶりをかける為に他の異界人に手を出したのかと愚考致します。コランドール君は頭は回りませんが、言われたことぐらいは忠実に実行できますので」

「その、カトリアスっていう人? は何が目的なの? やっぱり侵略?」

「この世界にとってはそうかもしれません」

「含みがある言い方しないで、ハッキリ言ってくれない?」

 手に持った縄を揺らせば、プラプラと変態も揺れる。階下の騒ぎがちょっと大きくなってきたので、いい加減引き上げた方がいいかもしれない。

「私達に、侵略しているという気持ちはありません。元々、この世界は私達のものなので」

「……ん?」

「この間話していた創世記ですが、不思議に思いませんでしたか? 何故、魔族と人間は元は同じ生物だと断言されているのか」

「あぁ、そう言えば」

 魔族と人間側のどちらにも、元は同じ生物であるという記述がなさている。おそらく原本となった物にそう記載されていたのだろう。

「さらに言うなら、そんな生まれたてほやほやの頃から、創世記という書物を書き残す事ができるのか?」

「口伝……じゃ、限界があるわね」

 地球の場合は科学によってネアンデルタール人がどうだとかホモ・サピエンスが何だかんだと言われているが、この世界にそこまでの科学は存在しない。

「つまり、創世記の原本は貴方達が作成している、もっと言うなら、この世界は貴方達が作った?」

「流石マリネ様。その通りです」

「面倒くさそうな事にしかならない気がする」

 そう言いつつ、変態を引き上げる。

「おや、もう終わりですか?」

「ご褒美が欲しければ、小野田さんがどこに居るか探してくる事ね」

 縄を消失させれば、自由の身となった変態は意外そうな顔をして私を見る。

「もしかしたら、そのまま逃げだすかもしれませんよ?」

「もしそうなったら、苦痛を感じる間も無くサクッと燃やし尽くしてあげるわ」

 意識してニッコリ笑って言ってやれば、変態はクツクツと楽し気に笑う。

「それはそれは、そんな事になるのだけは避けたいですね。マリネ様にご褒美を頂けるよう、最善を尽くしましょう」

「ま、期待しているわ」

 男の身体がまばゆい光に包まれ、消失する。

 まずは、今回の件をダル達にも報告しなくては。それから、小野田さんを見つけ出して、そして……。

「さて、どうするのが一番手っ取り早いのかな」

 身体をぐっと伸ばす。気合を入れる為に、パチンと頬を叩いた。



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