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第二十七話:合流



 急いで向かった書庫では、ピリピリと張り詰めた空気を醸し出す魔族の皆さんと、その中央に同じく緊張感をみなぎらせるユリアーヌとアレキスの姿。

 私に気づいた魔族さんが、道を開けてくれるので礼を言いつつ通り抜ける。気づいたユリアーヌが、わずかに表情を和らげた。

「マリネ、無事だったか」

「ユリア、アレク、一体どうして?」

 首を傾げる私を見て、ユリアーヌとアレキスは顔を見合わせて苦笑を浮かべた。

 後からやってきたディーが、周囲に集まっている魔族達に向かって声を張り上げる。

「皆は元の仕事に戻りなさい。人間……マリネの友人達は、こちらへ」

 後ろ髪を引かれる様子で、魔族の人達が戻っていく。

「ワリィな、嬢ちゃん。なんせ、連絡手段が無くてなぁ」

 アレキスはディーが魔王だとは思っていないのだろう。くだけた呼び方に、わずかにディーの眉が跳ねる。それよりも、隣に立つユリアーヌはディーの魔力量でなんとなく想像がつくのか、目を見開いてアレキスを見た。

「アレク、この子は――」

「マリネ。とりあえず部屋に行きましょう」

 ディーに促され、とりあえず言葉を飲み込む。確かにいつまでもここに居ては、司書さんが落ち着かないだろう。

 私がディーの後について行けば、二人も私の後を付いてくる気配がある。それからボソボソと二人で話あっているのが何となく聞こえた。

「ぅえっ?!」

 変な声が聞こえたので振り返れば、アレキスが自分の口を両手が押さえている。どうやらユリアーヌがディーの正体を伝えたようだ。

 まぁ、気持ちは分かる。魔族は人間よりも寿命が長いので、外見からは年齢が判断しにくい。おそらく、ディーも百歳は超えている筈だが、見た目は二十五歳ぐらいにしか見えない。

 ディーの歩く道行きを考えると、もっと外見詐欺の人物に出会う事になるだろうけれども。


      *


「はじめまして。わたしは、ダルケニスオブランシア。ながいので、ダルとよんでください」

「魔族ってスゲーな。赤ん坊が喋ってる……」

 呆然とするアレキスの脇腹を小突く。ハッとした顔をして、気まずげに咳払いをして誤魔化す。

「俺は、アレキス・ハーバリオン。マリネにはアレクと呼ばれているので、俺もアレクと呼んでくれ」

「私は、ユリアーヌ……」

「ユリアよ。ユリアが私の魔法の先生で、アレクが剣の師匠ね」

 ユリアーヌが、本名か偽名かどちらを名乗るべきか悩んでいるようなので、勝手に紹介を進める。何か言いたげな視線をユリアーヌの方から感じるが、下手に王子だと名乗られても、ダルは気にしないだろうがディーとヴァリエの反応はちょっと気になる。

「完全に実力的に負けてて師匠ってのもなぁ」

「教えてもらった事実は変わらないでしょ。で、こっちの女の子がヴァリエ。こっちがディーね」

 雑な説明の仕方に、ヴァリエとディーがジト目で見てくるが、私は気づかないふりでやり過ごす。

「それで、早速だけど」

「マリネ、その人? の説明は無いのか?」

 アレキスが、床を指さす。私はそちらに視線を向ける事も無いまま、窓の外へ向けてソレを蹴り飛ばした。

「ありがとうございますぅぅぅ――!」

「それで、早速だけど」

「え? ……え?」

 突然の凶行を前にしても魔族側は平然としているので、アレキスとユリアーヌはとりあえず気にしない事にしたのか、動揺しつつも視線を私に戻す。

「いきなりどうしたの? というか、どうして魔法陣使えたの?」

「マリネお前、自分が街から消えた時の状況を考えてみろ?」

「……どうやら、私が原因みたいね」

 ディーが目を閉じて息を吐く。

 そういえば、私はディーによって魔王城に連れて来られたのだった。普段平然と魔王城に来ていたが、ユリアーヌ達には普段から魔王城に行っていた事を伝えていないし、目の前で消えたらビックリするのも当たり前か。

「って、そういえば大友君は!?」

「血相変えて心配してる」

「あぁ、なんて謝ろう……」

 いや、まずどう説明すればいいのか。

 腕を組んで唸る私を、アレキスはちょっと呆れたように見てくる。

「いい加減、諦めて本当の事話すしかないんじゃないか?」

「それは……所で、なんで魔法陣使えたの?」

「マリネの魔力が書庫で度々消える事には気付いていたから、何かあるだろうなと」

 苦しい話題転換だとは思ったが、ユリアーヌは話に乗ってくれた。

「それで、アレクと共に急いで街から城に転移した後、書庫を探査して何とか見つけたんだ」

「でも、魔力紋も一致させないと使えない筈なんだけど?」

「マリネに作ってもらった魔道具に、マリネの魔力紋が残っていたから」

 ユリアーヌは結構平然と言っているが、正直ビックリ所の話ではない。まず街から城への転移、それも二人ともなれば結構な魔力が必要な筈だし、隠蔽魔法を破るのにも相当な魔力を使ったはずだし、魔道具の魔力紋だって練り上げた魔法を解析しなければ分からない。

 私は莫大な魔力と現代科学知識によるゴリ押しによって色んな魔法を使う事ができるが、それを知識とセンスで突破してくるユリアーヌは、本当に大賢者なんだなと思う。私とは凄さのベクトルが違う。

「それで、マリネの方はどうなんだ? 用事が終わったなら、オオトモ達も心配しているから城に帰って来て欲しいんだが」

「緊急の用事は終わったと言えば終わったけれど……」

 窓の外に視線を向ける。まだ変態は復活してきていない。

「さっき、私が蹴り飛ばした男がいたでしょ?」

「あぁ、やっぱり居たよな。あまりにも平然と蹴り飛ばすから、眼の錯覚かと思ってた」

「私もできれば錯覚であって欲しかったのだけど、アレ、私と同じく異世界の住人らしいのよね」

「……え?」

「そしてダル曰く、侵略者なんだって」

「……えぇ?」

 訝し気な表情の二人に、私は街から消えた後の話を二人にざっくりと話して聞かせる事にした。



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