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第二十一話:定番アイテム



「そうやって軽いノリで国宝級のお宝を作るのがマリネだなって、俺、そう思う」

「同じく」

 道具の性能を説明したら、アレキスとユリアーヌが遠い目をして虚空を見つめる。

 私が作ったのは、空間魔法を付与したマジックバッグだ。あまり容量が大きいものは作成に時間がかかるため作れなかったが、一週間分くらいの食料品が劣化無く入る。

「そんな、大げさな」

「マリネ……お前の感覚はおかしい……おかしい……」

「そう? 欲しいなら二人の分も作っておこうか?」

「「欲しい」」

「なんだかんだ言っても遠慮はしないとこ、二人だなって私は思うわよ」

 呆れつつも、メイドさんに用意してもらった布を入れた小箱を引っ張り出す。二人には何色が似合うだろうか。

「しかし、マリネの世界は魔法がないのだろう? それにしては魔道具がたくさんあるのだな?」

「いやいや、流石にマジックバッグは無いけどね」

「無いのか……無いのに、作れるのか」

「実在はしないけれど、想像の世界では定番だからね。そこは想像力と魔力でサクッと」

「これを、サクッと……」

 ユリアーヌが、心なしか老けたような気がする。アレキスはそんなユリアーヌの肩に、慰めるように手を置いた。

「希望の色とか、何かある?」

「もうちょっと大きい容量ってできるのか?」

「できるけど、遠征までには間に合わなくなるかも」

「そうか……じゃあ俺は特にないな。ユリア……も、ないだろう」

 ユリアを見る。泣いてはいない。ただ、微動だにせず置物と化している。

「そっか。じゃあ適当に作っておくね。あ、大友君達にはアレクから渡してもらっていいかな? 勇者の為の専用アイテムって言えば、きっと普通に受け取るから」

「分かった」

 アレキスは大友君達の分のマジックバッグを受け取ると、ユリアを引きずって去っていった。仮にも王子様をあんな扱いできるのはアレキスだけだろう。

「さて、忘れないうちに作っちゃおう」

 ぐっと身体を伸ばして作業に取り掛かる。遠征まであともう数日しかない。



 結局ケーキはまだ持って行っていない。遠征準備で予想外にバタバタしてしまったので、遠征が終わったら持って行く予定である。

 そして、魔力スポットの確認をしたい。


 おそらく、魔力スポットを塞げれば、この世界から魔獣は減っていくはず。

 すべてのスポットを封じてしまうと魔族から反感がでるだろうから、できれば一か所は残して、他の二か所を閉じられれば……。


 だが、代々の魔王ですら持て余してきたものだ。おそらくそう簡単には行かないだろう。まずは下見をして、ユリアーヌやディーと相談しながら事を進めていきたい。

 そして魔獣が居なくなれば、きっと人と魔族の関係にも変化が出る、はず……。


 そう簡単にはいかないだろう。分かっている。

 でも、私は一度死ぬ思いの努力ができたのだ。もう一度ぐらい、死ぬ気で頑張る事は出来る。

 しかも、今回は一人じゃない。

 私の考え不足をフォローして、嗜めてくれる仲間が居る。


「よし、頑張ろう」

 はさみと布片手に、気合を入れる。


 今度はもう、間違えない。間違えたくない。



      *



 とうとう遠征の日になった。

 ギリギリ完成したマジックバッグは、すでにユリアーヌとアレキスに渡してある。

 今回は遠征の割には人数が少ない。それでも五十人ぐらいはいるだろうか。

 乗っていく為の馬が、あちこちで嘶く。私も移動の為の馬を用意してもらった。真っ白い鬣が美しい白馬である。

 久々の乗馬だったが、先程試しで乗せてもらったら馬が賢いからか、特に問題はなかったので大丈夫だろう。

 すっかり馬での移動を忘れていたので、他にも忘れている事があるんじゃないのかと気になってきたが、指折り数えても思い当たるふしがない。


 まぁ大丈夫かな、と思った所で、一人の兵士に呼ばれた。

 嫌な予感に眉を寄せつつ、大人しくついて行けば困り顔のアレキスがいた。

「マリネ、悪いな」

「いや、私は大丈夫だけど……どうしたの?」

「すっかり忘れていたんだけどよ、オオトモ達が馬に乗れないんだ」

「…………あ」

 私も失念していた。

「あー、そっか。そうだよね、私も気付かなかった」

「思えばマリネも最初の頃乗れなかったもんな。だからとりあえず、オオトモ達はそれぞれ他の奴らと相乗りしてもらう事にしたんだが、マリネはどうする?」

「私だけ乗ってる訳にもいかないかなぁ……」

 日本で乗馬の経験者は少ない。私も前回召喚時に覚えただけで、元々はできなかった。彼らの前で平然と乗っていれば、向こうでの経験者と思ってもらえるだろうが、面倒な嘘をつかねばならなくなりそうだ。

「私も誰かに乗せてもらおうかな」

「そうか。じゃあマリネはユリアに乗せてもらえ」

「え? なんで?」

「なんでって……お前ら、そういう設定だろ?」

 油断するとその設定も忘れてしまいそうだ。

「別に他の人でもいいんじゃないの?」

「馬鹿言え、俺は自分の嫁さんが他の男と相乗りしてたらブチ切れるぞ」

「同性ならいいでしょ?」

「お前……自分が周りからどんな反応されているか思いだしてみろ。選べるのは、俺かユリアの二択だ」

 チラリと、ここまで案内してくれた兵士を見る。彼はすぐさま顔を逸らした。なるほど、なるほど。

「馬は敏感だからな。騎手の気持ちが伝わって、暴れるかもしれない」

「……どうせ凶暴な女ですよ」

「はいはい、むくれないむくれない」

 アレキスが、私の頭をぐしゃぐしゃと撫ぜる。

 周りにこういう反応をされてしまうのも、前回の失敗だろう。


 慕って欲しいとは思わないけれど、せめて人間扱いしてもらえるようになれたら、いいなぁ。



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