顕現……
爆発した王城を見て直ぐ様、〈鷹の目〉を発動させ、爆発した箇所と窓から見える範囲を見渡す。気配探査と気配感知、熱感知を併用し、周辺を状況を把握に徹した。
コレは、クーデターだ。
オレもやったことがある。前竜王を力もプライドも全てを砕いて喰った。化身変化レパートリーの中でも、一、二を争う攻撃型だから重宝している。
閑話休題。
クーデターの事を舌足らずに話して、空間が緊張していく感覚が大人から感じる。
「急いでこの国から出ましょう。西方に私の実家がある国があるのでそこに行きましょう!」
「……わかったわ。他の子たちも一緒に連れていきたいけど、私たち以外は城だから」
苦しい顔をする女王。それはそうだろう、お腹を痛めて産んだ他の子たちを見捨てる様な事だから。
寮を出て直ぐ様西側に続く道路に出る。あちらこちらに人がいるが、気配操作を使いこちらに気付かれない様に移動する事は簡単な話だ。
だが、そんな簡単に行くわけがなかった。
ドゴォォォン!
地面が爆発したかの様に割れる。土煙が晴れてそこに身の丈程のハンマーを肩に置き立つ男。
「アンタは、鋼の大槌!何でギルドメンバーのアンタがここにいる。ギルドの掟を破ったのか!」
母さんの言葉に何処吹く風の厳つい男が返答する。
「そのとーりだぜ、シルアサ~。」
ギルドの掟。
人を助ける為に作られたギルドの理念とも。国に縛られない為にある程度の決まり事を決めたのが掟だ。
この掟を破る者は、軽くて借金、最悪牢獄入り若しくは処刑される。だが、未だ処刑された者はいない。
「此所は、私がアイツの相手をします。王妃は、リュート達を連れて先に!」
「バカ言ってんじゃないわよ!ブランクがある貴女に任せる訳なないでしょ!ココは二人で一気に……チッ」
舌打ちの理由、それは……周りが囲まれてしまったからだ。気配感知できる王妃の隙を突く技術は、母さん銀色の暗殺者と同じ程の実力者である事を示す事だから。
「囲まれたか……アンタが気付かないってことは、ゴールド並の実力があるってこと……暗殺ギルドの精鋭…かな」
「エルの言う通りかと、私より強いってことも……」
母さんより強い。
コレは事実だろう、オレの訓練で多少体を動かしているが、以前の実力には程遠い筈だ。
「さあ、仕事の時間だ。アンタらを無惨な感じで殺してくれってオーダーなんでな、手足折ってから犯して殺すとスッか」
そう言った男は、嗤いながらハンマーを構え力を込めていく。
……?あの男、ナンテイッタ?
母さんたちを殺す?フザケテンノカ?
いや、本気なのだろう。まるで腐った豚の様な顔をしているからな。
あんな奴らに、前世では最期まで得られなかった血の繋がりを……家族を……みんなを……母さんを……死なせるものか!
リスク?保身?自重?正体の露呈?知るかそんなモノ!そんな事考えている場合か、そんなのあのバーサーカー連中に投げてブチノメセ!バーサーカー共なら悦んで殺しに来るぞ!
死んで漸く出来た家族を失ってなるものか!
神話になった竜王の逆鱗をその憐れで矮小な魂に刻み込んでやる!
聖属性の最高位の蘇生魔法も呪属性のアンデッド化魔法すら出来ない塵にしてやる!
さぁ、魅セテヤル。震ワセテヤル。知ラシメテヤル。解放シテヤル。
化身変化!
化身顕現、化身竜王オーバーソウル!
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「ブッ潰れろー!」
ハンマー野郎の声と同時に四方八方から各属性の魔法が飛び、標的に殺到する。
標的に着弾し煙を上げる。
嗤いながら標的に近付こうとしたハンマー野郎と暗殺ギルドの精鋭たちに今まで味わった事の無い殺意と言うなの重圧に晒される。
近付こうとした足を全員止め、未だ晴れぬ煙を凝視する。
重圧が消えないことに段々と冷汗をかき、呼吸が乱れていく。
まるで時間が遅くなった様に感じられ、焦りだけ加速していく。
「…………は…………?」
誰かの口から呆けた様な、息だけ吐いた様な音が静寂な空間に響く。
晴れた煙から出てきたのは、白銀に煌めく鱗と金色に輝く眼を持つ巨大な竜が無傷で佇んでいた。