少し鍛えた……
祝福の儀を終え、母親の秘密を知った。
母さんは、オレを産む前、七、八年前まで冒険者をしていた。そんな冒険者の母は、ゴールドランクだったそうだ。……ちなみに、ゴールドは上から三番目のランクだ。
冒険者のランクは、ロック、アイアン、カッパー、シルバー、ミスリル、ゴールド、アダマンタイト、オリハルコンの順番にランクが高い。
ミスリルランクからゴールドランクに上がろうと思えば、何かしらの一芸がなければならない。
母さんにとっての一芸は、我流の暗殺術がそれに当たる。
ミスリルランクまでは、色々とこなす器用貧乏を量産されるが、ゴールドランクから上は、一芸特化が基本になっている。
そんな訳で、ゴールドランクから上は極端に少ない。ゴールドランクで、百人ちょっとで、アダマンタイト、オリハルコン合わせて十人もいない。
余談だが王妃も、元冒険者だったらしい。母さんと同じくゴールドランクで、通り名は、〈血塗れのエルティア〉。
千を上回る魔物を武器を使わず、防具─ガントレットとグリーブ─と己の体だけで殲滅し、魔物の血で汚れ、血塗れてない所がなかったのが所以らしい。それ故一芸は、武術特化となっている。……父親が王妃に尻敷かれているのはその為か……。
祝福の儀からどんだけ経ったか?半年程かな。
まだまだ三歳ですが、母さんから暗殺術習ってます。
気配の消し方、殺気の出し方、足音を立てない歩き方、短剣とナイフの扱い方、暗器の隠し方、暗殺者流の体の鍛え方等々、とても役に立つモノばかりで楽しい。
母さんも良い笑顔で教えてくれる。もちろん、間違っていると叱ってくれるのでメキメキ上達してる。
気配と殺気についての修行は、結構早く終わった。まぁ、元々気配感知はあったし、竜気操作もあったからだろう。気配系の修行が終わった後、ステータス確認したら称号に〈気配マスター〉とスキルに気配系のスキル、〈気配操作〉と〈気配探査〉が加わってた。感知と探査の違いは、前者が受動で、後者は能動という違いだ。気配操作、気配感知、気配探査を揃えることが称号の〈気配マスター〉を手にする条件のようだ。
短剣とナイフ扱い方は、いまいち進んでない。前世の感覚で、武器を振るってしまう。前世の戦い方なんて単純過ぎたのだ。爪と牙、尻尾が扱えれば良かったからな。本来の戦い方は、化身変化で、状況によって姿を変え、敵をぶちのめしていくのだが……今は、化身変化を実質的に封印状態であるから体を、武器を振るえる体に変化出来ないのが、辛い。
その代わりなのか知らないけど、王妃に武術を教えて貰って体を鍛えている。母さんが王妃に頼んだのだろう。
王妃……意外と実践派で、拳の打ち込み方から気を練って相手の体に流して内部から破壊するやり方まで叩き込まれた。
暗殺術と武術の掛け合わせでエグい事が出来そうだ。
暗器は、もうズルだな。服の袖口、他人には見えないトコで、化身変化を使って肘、背中に蛇の頭を化身させてその口から『暴食』を発動させ『最果テノ胃袋』から呑み込んだ暗器を取り出す反則技を使った。
蛇を服の中に出すから服が不自然に盛り上がらない様に少し大きめゆったりした服を着るようにした。
さっき、封印状態と言ってった?間違ってないよ。目に見える変化が使えないから封印状態と言っていいのは間違いない。オレは、わざわざ相手と同じ土俵に立つバカではない。むしろ積極的に相手の嫌がることを推奨している。
……正々堂々?ナニソレ、オイシイノ?
そんなことしてどうする?……誇り?矜恃?食べることが出来ない物の為に命を張り続ける何てバカらしい。
誇りとかを完全に否定する訳じゃないが、生きるか死ぬかの場面で、別の事を守るよりまず、自分を守る事。それが出来ない奴に誇りだのプライドと言ってる暇あるなら鍛えろっての……。
……話が逸れた。
ステータス確認をしておこう。
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〈名前〉リュート・フォン・アスティラ
人族 男性 3歳
〈真名〉《メタリファス=ドライオン》
《竜族》 ──────
レベル:1
〈筋力〉33 (1~???)
〈体力〉32 (1~???)
〈敏捷〉36 (1~???)
〈耐久〉34 (1~???)
〈魔力〉24 (1~???)
〈魔耐〉20 (1~???)
〈幸運〉1 (1~???)
〈属性〉無属性(火、水、風、地、雷、鋼、氷、音、光、闇、聖、呪)
《( )は化身変化メタモルフォーゼ時に変動可。( )を他者は視ることが出来ない》
〈称号〉
『化身竜王』、『全テヲ喰ラウモノ』、アスティラ王の落し胤、銀色の暗殺者の子、血塗れのエルティアの弟子、気配マスター
《『 』を他者は視ることが出来ない》
〈スキル〉
化身変化〈蛇、鷹〉、『暴食』、『最果テノ胃袋』、竜気操作、『能力統合分離』、『能力譲渡簒奪』、直感、トラブルの鐘〈被〉、『竜王の』威圧、『改竄』、最適化、気配感知、気配操作、気配探査、暗殺術〈暗器、歩法、同調〉、武術〈操気、破拳、呼吸法〉、剣術〈ナイフ〉、熱感知、鷹の目、毒生成
《化身変化時にスキルは、自動に変動可》
《『 』を他者は視ることが出来ない》
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ここ半年で、ステータスのパラメーターがアップした。レベルは、魔物を殺さないと上がらないみたいだ。
幸運値以外は、ぐんぐん上がっている。
魔力、魔耐が他より低いのは、魔力を使ってないから。ほぼ体作りに時間をかけてしまって魔法を使う機会が少ない。一応、無属性の《フォース》を使っている。
《フォース》は、どの属性にもある。簡単な話、《フォース》は、自身が持つ属性のオーラを出す魔法ただそれだけの効果しかない。
化身変化で、蛇を化身した恩恵である、毒生成と熱感知、暗殺術修行の時に使った化身である鷹の恩恵、鷹の目。
化身変化を使えば使う程スキルが増える。けど、前提条件は、化身先の肉、魔力を取り込む必要がある。
幸いな事に、化身変化のレパートリーが前世のモノを引き継いでいる事だ。これで前世と同じように相手を十分に蹂躙出来るだろう。
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何時もの如く侍女寮にて、何時ものメンバー化している、五人──オレ、ヒカリ、キリカ、エリシア、エルティア──とキリカの母親のキヨメで談笑していた。
キリカ、ヒカリの髪を梳かしていた時……オレの直感とトラブルの鐘による警鐘が鳴り響いた。
窓の外を急いで見ると……壁の一部が爆発する王城を見てしまった。