ちょっとだけムカついた……
ステータス確認が終わってヒカリを見た。いつも笑ってる彼女は、花の様にキレイで可愛らしい。
「どうした?ボクの顔をみて、何かついてるの?」
「ううん!えへへ、リューにぃのよこがおかっこいいからみとれちゃった!」
「ありがと」
可愛いことを言う妹の頭を撫でる。ほぼ毎日、キリカやヒカリを撫でているから手馴れてきた。人懐っこい動物のように、自分からスリスリとしてくる。
「仲睦まじく良き事ですね。これで祝福の儀は、終わりました。これからも健やかに成長することを祈らせていただきます」
「はい、今日は忙しい中、ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
司祭の言葉に、オレが挨拶をすれば、ヒカリはオレの言葉に続ける。
儀式が終わって神殿を後にする。神殿入り口で控えていたキリカと合流して王城行きの馬車に乗って帰る。
はぁ~……あのクソジジィ、良い人気取りやがって……アイツの視線が一瞬鋭くなって何かに覗かれた気分になり頭の中で鐘の音が鳴った。絶対、鑑定系のスキルを使ったな。……改竄しておいて正解だったな。アイツとその周辺に気を付けんとな。
……意外とつかれたな~。よし、寮に戻ったらキリカをモフモフしよう。
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暗い空間に一人で立つ老人がいる。今日の出来事を振り返って考え込んでいた。
そこに声が落ちてくる。
「どうだった?小さい王族どもは……」
「どう、とは?」
「我らの計画に支障を来すか、と聞いている」
少し怒気は含んだ声が落ちてくる。老人は、動じることなく応え返す。
「二人の内、一人、王女の方は大丈夫だろう。問題があるとするならば、王子……いや、落し胤の方だろうな」
「ほう……落し胤、か……」
「そうだ。私の鑑定で見た称号だったからまず、間違いはないだろうな。……して、どうする?」
「傀儡にするかどうかは、次の集会で話せばいい。他、スキルとかはどうだった?」
「パラメーターは歳相応。そして、二人ともスキル持ちだったということ位だ」
「……本当か?」
スキルの大半は、経験によって手にするモノ。例外としては、先天的若しくは遺伝によるもの。鑑定などの経験し辛いスキルが、希少とされる所以だ。
「どのスキルも持っていておかしくない物だったよ。強いてあげるのなら落し胤の直感と気配感知、王女の火と光と聖属性の三重属性持ちだった事とスキルは一つ、天候操作というのがあった事だ」
「王女は、物珍しいと思うが……問題があるのは落し胤だな。直感と気配感知あるとなると下手に動いて奴に近づこうとすると気づかれるか……忌々しい」
ギリッ、と歯を噛み締めた音が響く。
溜め息をついた老人が場を締める。
「お主が言った様に次の集会で決めれば良い。ここで考え込んでもよくないじゃろう」
老人の言葉を最後に、分かりやすく気配が消え、老人だけとなる。
「我慢が出来ん奴じゃな勘づかれても知らんぞ」
老人は、知らない。
警戒した者に、既に警戒されていることに……。
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侍女寮に帰り、ヒカリが王妃と一緒に王城に帰って、モフモフし終わったキリカも親の所に帰ったのを確認して、母さんに例の称号について聞いてみた。
「ねぇ、おかぁさんってあんさちゅしゃだったの?」
恥ずかしい。おもいっきり噛んでしまった。まぁ、それでも伝わったはずだ。
だって、お母さん……。口、開けっ放しだからね。
「ど、どうしたの急にお母さんは、侍女ですよー」
お母さんわっかりやすーい!
「称号にシルバーアサシンってあったよ!コレおかぁさんのことだよね。おかぁさん分かりやすく足音消したり、スカートの内側に刃物隠してるからね。だから分かっちゃったよ」
言い逃れ出来ない岩石を落とす。
でも、コレって三歳が言っていいことじゃないな。まーた、自分の年齢忘れちゃってた。……ボケたか、オレ。
母さんは勘弁したのか、息を吐いて同じ目線まで頭を下げた。
「いい、リュート。確かにお母さんは、銀色の暗殺者なんて呼ばれていたけど、本来は冒険者だからね。魔物や盗賊相手に暗殺紛いなことばかりしてたからそう呼ばれてしまったの、刃物と足音は癖なのゴメンね」
目に涙を溜めて今にも泣き出しそうな顔をしている。
オレは、泣きそうな母親の頭を撫でて落ち着かせることにした。