驚き……
早くも二歳になった。
この一年で大きく変わった事がある。
まずは、力に関してだ。
転生する前のオレ、竜王としての力である変身能力が使える事が判明した。
二ヶ月前に床を這っていこうとして力を込めたら手が前世の竜人状態の手になった。近くに誰もいなくて良かった。こんな姿を視られたらメンドーになるのは必然だ。
ま、この力のお陰で歩くことが出来るようになった。体そのものは変えずに、中身である筋肉と骨を少し弄って丈夫にしてみた。応用技術だが記憶はそのままだから、そこまで難しくはなかった。……が、力を使っている間だけの話なので、まだまだ二歳児でしかない。
次は、オレがいた時代が神話だの御伽噺になっていた。
人族、獣人族、天族、魔族、妖精族、海人族、竜族、の七王が主人公の話になってた。
誰だソイツって言いたくなるような美化されたり、英雄譚になっていた。
ビックリしたのが海人族の話。一回だけだが海王には会っている。海の中だから呼びかけない限り出てこないので王の中で一番影が薄かったりする。
まぁ、そんなことになっているから母エリシアに読み聞かされたとき恥ずかしさで一杯になって顔にでないように必死に我慢した。
次、同僚の侍女の娘をオレの専属侍女あるいは、許嫁にされそうな会話を聴いてしまったこと。
オレ、まだ二歳児何ですが……。しかもその娘さん二歳年上で、獣人族だ。何回か見た事があるが、モフモフしたくなるような狐耳と尻尾備えた金髪の娘だった。将来、美女になるのが決まっているような容姿だったから、満更ではない。……と思える。
後は、周りに喋ることが出来るアピールをしたこと。とは言うものの、二歳児位が話す言葉で、だ。変化すれば造作もなく会話は可能だ。
オレが喋った時、ちょっと騒ぎになりかけた。
「えりしあ~」
「え?もしかして、リュート?」
戸惑いながら振り向き声を発したであろう子どもに釘付けになった。
「言葉……喋れるの?」
「あい、えりしあま~」
ぷるぷると震えだした母に首を傾げた。
「う~?」
ガバッと、いきなり予備動作なく抱きつかれた。子どもの眼じゃあ追えなかった程速かった。前世なら最速であった人王すら捉えることが出来たんだがなぁ……。凹むなぁ~。
「リュート、あ~私の可愛いリュート。スゴい、スゴいわ、まだ二歳になったばかりなのに……天才、神童……いいえ違うわ!天使、天使よ!私の可愛いリュートは、天使!えぇ、それしかあり得ないわ、みんなー!私の、可愛いリュートが喋ったの!」
エリシアに、抱きしめられたまま部屋から出て同僚の侍女に報告、もとい自慢しに走る。
オレの母が、親バカであることをこのとき知った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
今、オレはたくさんの手に揉みくちゃにされている。
たくさんと言っても四人だけど。
エリシア、ヒカリ、エルティア、そして件の狐耳の獣人の娘名前はキリカと言うらしい。
正面をヒカリ、背後はエリシア、左にエルティア、右がキリカ、という具合に包囲されナデナデの地獄から逃げ出せない。
ヒカリは、座ってるオレの足を枕にして寝ているだけだが……。
囲まれている中で、エリシア、エルティアの会話に耳を傾ける。
「あらあら、ヒカリったらリュート君に逆に撫でられて寝ちゃったのね。キリカちゃん、あなたも撫でられてみる?」
「い、いえ王妃様。ワタシにそ、そんな……」
「資格、若しくは権利がないって言いたいの?エリシア、ちゃんとお話はしたの?」
「お話はしています、エルティア様。キリカは、まだ小さいですが聡明です。ですが、エルティア様というこの国の王妃が隣に何故かいるのです、緊張しない方が難しいかと……」
半眼で、エルティアを見るエリシアに、エルティアはバツの悪い顔をする。
「で、でも今は、王妃ではなくエルティアという一人の母親として……」
「それが通じるのは親しい者だけです」
エルティアの言葉を容赦なくブッタ斬るエリシア。……お母さん、王妃の侍女ですよね?王妃の対応酷くないですか?本人がいいなら別に構いませんよ?
「キリカ、まだ幼いあなたにはまだわからないかもしれないからこれだけは言っておきます。リュートのことを成長しても変わらず好いてくれるなら……キリカ、あなたを許嫁にしてもいいかしら」
「ワタシで良いのですか?獣人族のワタシで……」
「あら、そんなこと言ったら、私やリュートは、竜族の血がほんの少しだけだけど混じっているのよ」
「え?!」
え!マジですか!純粋な人族じゃなかったの?違和感無くて当然だよ!元々竜族なんだから。
「少なすぎるから竜の姿にはなれないけど、力は人族としては強いの、で?獣人族だから何かしら?」
「え、あの、その……」
「ごめんね意地悪だったわね。はい、いいえ、で良いわ。キリカ、リュートの侍女であると同時に許嫁になりたい?」
ほんの少しの静寂を破る様に大きくハッキリとした声で……。
「ハイッ!なりたいです。おねがいします!」
五本ある尻尾を千切れないかと思う位振っている。その姿を見れば、どれだけ嬉しいのかが判るだろう。
こうしてオレの専属侍女兼許嫁が決まった。……決まっちゃった、のが正しいかな?
返事をした後に、頭、耳、尻尾をナデナデしたら幸せそうな顔をしてくれた。……モフモフ、癖になりそうだな!