目を開けたら……
頭が段々と覚醒していくのを感じながら目を開ける。
……開ける。
………開ける?
…………開かない……。っていうか目が開かないんだけど?!
意識はあるけど体が動かない。
ペシ…。
?何か固いものに当たったような……。
あれ?手とか腕動いてるな。ぎこちないけど動いてる。動くなら眼も開けれるかな。
うっすらと目蓋が開いて光が隙間からいきなり入り込んでくる。思わず目蓋を閉じてしまう。
恐る恐る目を開け光に慣れてきて、眼に映った景色を漸く知覚できるようになった。
天井。
うん、天井だ。これを見間違うほどバカではない。
自分の手が見えた。あれ、鱗が無い、というより手が小さい?のか短いのか判断しにくい。
「あーあうーあ~」
今更ながら声が出ないと思ったが、いつの間にか出ていた。オレが出した声でいいのか? まるで人族の赤子の様な声だった。
………様なじゃねー!
赤子!しかも人族の?!え、何で人族なの?オレ、いつの間にかあの凶戦士共と同じ種族になっちまったのかよ。最悪だ。
……あれ?おかしいな。
オレの能力を以てすれば、人族になるのは然程難しいことでもない。
だけど力を使った記憶も無いのに何でだ?
オレの能力、『化身変化』は、触れたり喰ったモノの力や姿形を真似て本物と同じ様に力を振るう事が出来る。昔、死んでた人族の男の肉と魔力を食べたことがあるから人族になるのは簡単である。変化した体は、条件によっては本物より強くなったり、複数の力と姿を同時に化身することによって戦場を無双出来る程の力を出せる。ちなみに、一対一の時は、相手の苦手な属性に切り替えて戦えるので相手は必ずと言っていいほど、「キタネェー!」って叫ぶのだ。
キタナイ?誉め言葉です。ありがとうございます。
閑話休題。
たぶん、オレは死んでしまいこの人族の赤子に生まれ変わったのかもしれない。そう考えた方が辻褄が合うのかもしれない。
例えそうだとしても死ぬ前の記憶がどうもあやふやだ。オレ自身は、大抵変幻自在に体を変えていた為人族の赤子になっていても違和感がなかった。無さすぎだったのは能力の弊害というべきなのだろう。変化出来る能力は自分の肉体に執着することを忘れてしまったようだ。そういえば竜王になってからは、人の姿ばかりしていたのを思い出す。
色々と思考しているとお腹が空いてくる感覚が生まれてくる。まだ上手く体を動かす事が出来ない上、声も出せない。
飢餓感に思わず声をあげて泣き出してしまう。意識があっても本能に従ってしまうのは、まだ赤子であるからなのだろうか?
暫くしたら、人族の女性が現れた。侍女の服装をしていることからこの家に雇われているのか、と考えながら顔を見る。
まだ幼さが残る顔つきだった。恐らく十七、ハ歳位に見えなくもない。いや、下手したらもう少し下の可能性も……。
「はーい、どうしたの、リュート?オムツ……は臭いが無いからお腹が空いたのね」
リュート?
それがオレの名前なのか。
泣くオレを見て判断をし、女性は自身の胸をさらけ出した。
ここで疑問が浮かび上がる。人族の国に行った時、赤子に乳をあげるのは、母親がする行為だと聞いた事がある。
……ということは、つまり、この女性がオレの母親なのか?
色々考えていたが、乳を飲みお腹が膨れた事で眠気が襲いかかってくる。
(色々と考えても仕方ないし新しい生命になったけど今は………)
抵抗出来ずそのまま意識を手放すように目蓋を閉じて眠ってしまった。