プロローグ
構想自体は勇ゴブより先に作ってたものです。勇ゴブとついでに読んでいただけたら幸いです。
何時からだろう?
この夢を視るようになったのは……。
いや、正確には夢ではなく記憶、我がオレになる前の記憶だ。
懐かしさすら覚えるその光景。
我が……オレが、そこに立った最初の日。沢山の障害を乗り越え、力と信頼と仲間と共に勝ち取った居場所。
ォォォォォォ……。
オレを呼ぶ声が響く。
城のバルコニー続く廊下を突き進む。進む途中で臣下、女中が膝をつき礼をする。
その中には、ガキの頃から知ってる者がいたため臣下の礼をされると未だに慣れないため、尻尾の付け根が痒くなる。
あぁ、ここまで来れば我が人間でないことが何となく判るというものだ。
姿はほぼ人間らしくしているが気分で鱗に覆われた尻尾はそのままだ。眼は蛇のように鋭く、腕の辺りは白金に耀く鱗、鋭く伸びた牙と爪。
一言で現そう、オレはドラゴン。竜族と呼ばれていた。
竜族は様々な個性を持って生まれる。似たり寄ったりの個性を持つ中でオレだけ違っていた。
オオオオオォォォォォ……。
……おっと。
それよりも記憶の夢の続きを……。
今日はオレのお披露目だ。
前任のバカをボコボコにして、プライドも力もへし折って退かせてオレがその後を継ぐことになった。
決して他のやつらに懇願されたとかではない。
……ホントだぞ。
廊下を進んでバルコニーに出たらそこには────。
──────大小様々な竜族で埋め尽くされている光景であった。
歓声、というかほぼ咆哮なんだが……。
獣人族とか魔族辺りは逃げ出すだろうな絶対。
獣人族は、臆病。魔族は、引きこもりが多いからな~。
他の種族?いるけどダメだ。アイツら絶対狂喜乱舞するのが眼に見えている。
まず、人族。
コイツらの王が無類の戦好きの戦闘狂だ。自国民に好かれているから良い王だと思うよな?
しかし、国民の総人口の半分以上が凶戦士ってどんだけ戦いに飢えているのかが分かるがワカリタクナイナ……。
次、天族。
コイツらも似たり寄ったりであるが、違うところと言えば、狂信的なところだろう。神の末裔とか云われてたけどホントかは知らん。翼を持つコイツらは、嗤いながら特攻紛いなことを平気で仕掛けてくるから質の悪さは人族とどっこいどっこいナ感じだ。
ラストは、妖精族。
人族と天族とは違い温厚な種族であるが、自分たちを害する者と戦争には笑って天変地異を引き起こしてヤってくる。……ホント怖いネ。
お前ら竜族はどうだったって?
まぁ、戦争を吹っ掛けて来ない限りは大人しくしてたのは、前任のバカ以降……つまりオレが後を継いでからだ。理性的だけど本能には素直な為、あっちゃこっちゃでケンカしてたな。
そう考えるとほぼまともな奴がいない世界だったな。……笑えねー。
閑話休題。
バルコニーの手すりまで行き横に控える者に眼を向ける。眼を向けたソイツは、この国の宰相である。
老いた宰相がこちらを見て合図を送り、オレはそれに対して首を縦に一回軽く振る。
宰相が集まっている同族に向けて言葉を発する。
その言葉を聴きながらこれからの事に思いを馳せながら前を見る。
これは記憶。
だから分かる。
宰相が言う言葉を知っている。さあ、間もなくあの言葉を紡ぎ出すぞ。
「────我らが王!竜王、『化身竜王』メタリファス=ドライオンに栄光を!」
その声が響くと集まった民たちが一斉に咆哮をあげ始める。
同族だからだろうか、その咆哮に心地好さを感じながら右腕を挙げ声に応える。
この日、この時に竜王は、竜族国家『ドラゴアニマ帝国』にて、『化身竜王』メタリファス=ドライオンは本当の意味で竜族の王になった。
段々映像が霧に包まれるが如く、白くなっていき、最後には黒い世界へと変わり、オレの頭は眠りから覚醒していく。