表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

益体のないファンタジー考 ~RPG風ファンタジー世界~

作者: いかぽん

 僕は前々から、RPG風のファンタジー世界を作りたいと考えている。

 しかし、これがなかなかに難しい。


 「えっ、そんなの『小説家になろう』にはたくさんあるじゃん」と疑問に思うかもしれない。

 これはその通りなのだけれど、僕の場合はこの頭に「僕にとって理想の」という枕詞が付く。


 要はRPGの持つ主人公優先の物語の面白さを活かしつつ、同時に社会というものを、比較的無理のないものとして成立させたいという気持ちがある。


 例えば、RPGにとってお決まりの「レベル」という概念を、物語の中に導入しようと考える。

 このとき、物語の主人公がそれなりの冒険を1回終えて帰ってきたら、レベルが1上がる、という程度の成長具合を想定する。

 例えば、村から出てきて冒険者になったばかりの主人公が、パーティを組んでゴブリン退治に向かい、見事達成して帰ってきたら、1レベルだったのが2レベルに上がっている、という塩梅だ。


 この上がり方は、読者によっては地味だと感じるかもしれない。

 実際、「ステータス」や「レベル」を扱っているなろうファンタジー作品の人気作の平均と比べると、相当地味なほうだと思う。

 個人的には、地味すぎず派手すぎずという絶妙なラインがこの辺で、これよりもレベルアップが地味だと、RPG風であることの魅力を活かせなくなってしまうように感じる。


 ところが、これを社会的に考えると、わりととんでもないことになる。


 仮に冒険者という職業が、毎朝9時に冒険に出かけて夕方の6時に帰ってきて、週5日の健全な労働を行なうような超ホワイトな職場であるとする。

 年間52週間、260日の労働を行なうと想定すると、1日に1レベル上がれば、彼は5年後には1300レベルである。


 なお僕は、5年間というのは、おおよそ一つの仕事において一人前の実力を持つに至るために必要な期間であると考えている。

 この感覚は、実際に5年以上、一つの仕事を続けている人には、わりと納得してもらえる体感なのではないかと思う。


 世間的には「一万時間の法則」というのがわりと知れ渡っていて、ある一つの仕事で一人前や一流になるためには、一万時間の経験を積む必要があるという説がある。

 毎日実働8時間労働で年間260日働けば5年間で10400時間なので、こう見ても、5年間という月日は、一人前の職業人を育てるのに必要な期間であると考えられる。


 さてこう考えてくると、ファンタジー世界で一人前の実力を持った冒険者や騎士などは、1300レベル超えということになってしまう。

 しかしこれはどうにも、やりすぎ感が否めない。

 ファミコン版ドラクエⅢをこよなく愛したRPG世代の人間としては、レベルは何となく、最大を99レベルに抑えたいという気持ちがある。


 なお、物語上の一つの正解としては、1300などとケチ臭いことを言わずもっとガンガンレベルが上がっていって、最終的には何千、何万、何十万、あるいは何億、何兆というレベルになってゆく、という形だと思う。

 要は、RPGはRPGでもディスガイアをやるのであり、漫画で言えば私の戦闘力は53万ですな宇宙最強さんと戦うような物語を作るべきなのだと思う。

 ただ、そういう派手に派手にインフレしてゆく形は、僕が作りたい理想像からは外れるので、ここでは考えないものとする。


 さてそうなると、「1回の冒険で1レベル上がる」というのは、レベルアップが「派手すぎる」ということになる。

 ただ前述したように、これよりもレベルアップが遅いと、物語として読んだ時の感覚としては「地味すぎる」という印象になってしまい、「RPG風」であることの魅力を活かせなくなってしまうと思われるため、ここに「物語」と「社会」との矛盾のような状態が発生する。


 これに関する一つの解決法は、そのレベルアップの速度を、物語の主人公の特殊性、スペシャリティとすることである。

 1回の冒険で1レベル上がってゆくという超高速の成長速度は、主人公が持つ特異な能力──なろう風に言うところの「チート能力」のようなものと考えるわけだ。


 ただこの場合、これを「チート能力」と大々的に触れ込んでも、一般的ななろうファンタジー作品のレベルアップ速度に慣れた読者には「これのどこがチート?」と首をひねられるので、最初のうちはひそかに裏設定として匂わせておくというぐらいが、描写の仕方としては妥当なところだろう。


 なお、僕の脳内に浮かんだ発想としては、世界人口の1万人に1人ぐらいの割合で「勇者」と呼ばれる特異人種が生まれ、その「勇者」に限り、1回の冒険に1レベル上がるというような成長速度を持つ、というものがある。

 この辺は、あわよくばTRPGの世界観にしたいというような欲求もあり、主人公だけを唯一のスペシャルにしたくないという要求も含まれている。

 (この点において、僕の自作の最高ポイント作品は、僕の理想を正しく叶えてはいない作品である)


 また、別の解決法としては、低レベルのときにはレベルアップが早いが、高レベルになるにつれて加速度的にレベルアップが遅くなる、というような仕組みにすることである。

 これはリアルと照らし合わせてもなかなかよくできている気がして、わりとお気に入りの解決法であるが、主人公にもこれを適用すると、やはりレベルアップが遅すぎて「RPG風」であることの魅力が損なわれてしまうという欠点がある。

 したがって、これは前述の「勇者」みたいな案と併用するのが、妥当な運用ではないかと思うところである。


 ところで、そういう風にワールドデザインを考えていった場合、いわゆる兵士とか騎士とか、あるいは一般の冒険者とかいう人々は、どのぐらいのレベルに設定するのが妥当だろうか。

 これはもう、感覚的にしっくりくるのがどのぐらいか、という基準で考えるのがベストではないかという結論に至っている。


 僕の敬愛するドラクエⅢでは、ゲームのクリアレベル、大魔王ゾーマを倒すレベルというのは、だいたい40レベル強である。

 このレベルの勇者たちというのは、おおよそ「超人」の域であると想定してよいだろう。

 人間離れした身体能力やタフさを持ち、仮に戦争に紛れ込んだら一騎当千、凡百の兵士や騎士などまるで歯牙にもかけずに薙ぎ倒すような存在であろう。

 土台、このような存在は単身でドラゴンよりも強かったりするわけだから、一般の軍隊がドラゴンを相手に「う、うわー、ダメだー!」になるのであれば、超人を相手でも「う、うわー、ダメだー!」になるのは必定である。

 仮にこの40レベル強というあたりを、「世界最強クラスの達人」という位置に設定する。


 ちなみに、上限99レベルなのに世界最強クラスを40レベル強で止めておくのは、上にバッファを残しておいたほうが後々の自由度が残っていろいろ便利だからというのもある。


 で、一般の兵士はどのぐらいのレベルか、と考えたときに、「みんな1レベル」というのでは面白みがない。

 「超人」と「世界」とのバランスを考えながら、それなりのレベルにセッティングするのが理想的と思う。


 ここでまたドラクエⅢに戻ると、例えば「魔法使いはギラを使えるようになると一人前(=7レベル以上)」とかいう世界観にすると、なかなかに面白い感じになるように思う。

 国の魔法兵団の長クラスになると、ベギラマやヒャダルコなどの中級呪文を使えるレベル(14~20レベル)という具合。

 ベギラゴンやマヒャドなどの上級呪文を使える(30レベル前後)のは、世界に名立たる達人のみ。

 これをベースに、騎士と魔法使いを同格と考えると、一人前の騎士は7レベル以上ぐらい、騎士団長で14レベル以上ぐらい、などといった感じになる。


 こんな感じの世界バランスにすると、40レベル強の超人であっても、個人で国を相手に喧嘩を売ったら負けるかも?という感じになる……かもしれない。

 いや、それでもちょい厳しいかな? 国が負けるほうが、可能性が高いかもしれない。

 まあいずれにせよ、単純に武力衝突した場合の話であるが。


 ちなみに、物語として描写をするにあたっては、超人的な能力には何らかの超常能力による裏付けをしておいたほうが、より多くの読者が楽しめる作品になると思う。

 何らかの超常能力というのは、例えばドラゴンボールで言うところの「気」であったり、ハンター×ハンターで言うところの「念能力」であったり、あるいは無職転生で言うところの「闘気」であったりする。


 というのは、世の中の読者には色々いて、「ファンタジー世界の住人なんだから、人間って言ったって現実の人間と全く同じじゃないよ。ファンタジー世界の人間が、現実の人間が持ちえないような能力を持っていたっておかしくないよ」と考えてくれるような「わかっている」読者ばかりではないということである。

 まあ、「レベル」や「ステータス」が存在するRPG風のファンタジー世界を許容できる読者層ならば、だいたいは「わかっている」タイプの気はするが、それでも、「読者がビジュアルを想像するための理論武装」は、ないよりはあったほうが、その世界観を受け入れられる読者の割合は増えると思う。

 例えば、「丸腰の人間に対して、ナイフで首を思いきり突いても死なない」というような現象に対して、「気」や「念能力」というような超常的な概念が作中に登場していれば、読者はその金ぴかのオーラによってナイフが止まったのだなと、そのときの絵を想像しやすくなるという塩梅である。


 さて、あとは「レベル」や「ステータス」という概念を、作中のキャラクターが認識しているかどうかというような問題なんかも書いていきたい気もするけど、そろそろ長くなってきたのでやめようと思う。

 いつも通り、読んだ人の発想や思考の契機になればいいぐらいに考えて書いているので、思ったこと、考えたことを感想に残していってもらえると、いい感じに醸成されて面白い感じになるかもしれない。


 そして、その中に良いアイディアがあったと思えば、全力でパクりたい所存。

 ……みんなで幸せになろうよ(後藤隊長っ面で)


 ではでは。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  レベルの際限なき成長によるインフレをご懸念とのことであれば、先日新刊が発売された「オーバーロード」さんが上手い具合に設定されていました。  つまり個人によって、生まれ持った「レベル総量の上…
[良い点] >RPGの持つ主人公優先の物語の面白さを活かしつつ、同時に社会というものを、比較的無理のないものとして成立させたい気持ちがある。  ↑ここは勝手ながら、いかぽんさんにものすごく共感して…
[一言] 内容の端々から同年代であることが伺えますなあ。 それはともかく、 >例えば、「丸腰の人間に対して、ナイフで首を思いきり突いても死なない」 いや、死んでしまっても別にかまわないのでは? と個…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ