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旅立ち6

 村に火の手が回りきる前に、助けた人から順に村の外へ避難させた。


「おかあさん! よかった! よかった……」

「あなた!」

「信じられない……生きているのか俺は。夢でも見てるようだ。」


 生き返った実感もわかないまま急いで村から逃げ出したみんなも、ここにきて会話ができる余裕ができたのか、お互いの無事を確認しあい、命がある喜びを分かち合っている。



 無論、それだけじゃない。自身が死したときのことを思い出し、錯乱してる人もいる。無理もない。そして。



「「うわああああああん。」」

 マグルスとビッキーは僕に抱きつき、ただひたすら泣いている。


「大丈夫、悪い奴らはみんなお兄ちゃんたちがやっつけた。もうなにも怖いことなんてないんだよ。」2人を強く抱きしめる。


「「ぐすっ、うん。うん!」」

 僕も泣きながら2人を抱く力を強める。本来なら助けられなかった命、だけど今こうして暖かい。それが嬉しかった。もう二度と手に入らないと思っていた暖かさがここにはある。



「カイト、アジュール。お前たちにはなんと感謝を言ってよいか。今わしらがここにいるのはすべて主らのおかげじゃ。」

「ニグル村長、俺は何もできなかった。すべては我が弟アジュールのおかげです。」

 近づいてきた村長にカイト兄ちゃんは答える。


「村のみんなのため、自分ができることをするのは当然のことです。ダレン兄ちゃんがいたら同じことを言うはずです。それより、」


 僕は村へ視線を向ける。いまだに燃え盛る、僕たちの村。「俺たちが過ごしてきたイスト村が・・・」「あたしらはどうすれば。」周りから悲痛な声が上がる。



「そうじゃな・・・。住むところを失ってしまった。夜が明けるまでここで休むしかあるまい。カイト、アジュール、お前たちが一番疲れているだろうが、すまん。夜が明け次第、近隣の村へ助けを求めに行ってらえないか。」


「はい、ニグル村長。」

 カイト兄ちゃんは答える。隣のマリア姉ちゃんは心配そうに僕たちを見るけど、それが最善だとわかっているから声には出さなかった。


「ちょっと待ってください!」

僕の声に皆が振り向く。諦めるのは力を試してからでも遅くはない。僕は願う、村を戻す力を。



ギフト【創造主(ザ・クリエイター)】発動:クリエイトスキル【時空魔法】⇒ランクG



できた。【治癒魔法】を手に入れた時よりもはやい。【創造主(ザ・クリエイター)】の使い方に慣れてきているのかもしれない。



「対象イスト村、5時間前へ時間を指定、《レストレーション》!!」

 呪文を唱えるとイスト村全体が魔法陣に包まれる。



「アジュール、これはいったい?」「お兄ちゃんなになに?なんなのこれ?」

 戸惑う家族たち。魔方陣から青い光の粒が出る。それらは村全体に広がった。そして光が消えたとき、そこには山賊に襲われる前のいつものイスト村の光景があった。


「うそ? 村が私たちの村が元に戻ってる!」「ほんとだ!まるで奇跡だ!」

みんなの歓喜の声が響き渡る。


「すごーい! すごーい! 神様みたい!」「さすが、アニキだ! やっぱアニキは最強なんだ!」

 先ほどまで怯えていた、弟たちは魔法を見て恐怖なんて吹き飛んでしまったみたいだ。「ね、ね! どうやったの!」なんて興奮しながら見上げてくる。



 ふと見渡すと、村のみんなの視線も僕に集まっていた。みんなの顔にはどうして?なぜこんなことができる?そんな疑問が浮かんでいる。


 怖がるよねきっと。。



 何を言えばいいか迷っていたら、不意に肩を思いっきり叩かれた。


「ワハハハ! おめーら、そんな細かいことはどうだっていいじゃねーか! アジュールのおかげで、俺たちは生きてる! 村だって戻ってきた! 今はそれで充分だ! そうだろみんな!?」

「アントンの言う通りじゃ。皆疲れているだろう、今日は戻り休むのじゃ。アジュールからは落ち着いてきてから説明してもらうとしようじゃないか。……それでよいな?」


「はい!」


 アントンさんとニグル村長の優しさが身に染みる。きっと2人だって知りたいはずなんだ。けど聞かずに、落ち着けるまでの時間をくれる。それが有難かった。


 みんなそれぞれ村に戻っていく。


「アジュール。」ばあちゃんが僕を抱きしめながらゆっくりと口を開く。


「お前は村を救った英雄さ。みんなも今は気が動転してあんな態度になってるけど、ほんとは全員感謝してるんだ。けど忘れちゃいけないよ。人よりおかしな力があるからってお前はお前、イスト村の一員であり、私の可愛い息子のアジュールなんだよ。」

 カイト兄ちゃん、マリア姉ちゃんは優しく頷いてる。ビッキーはニコニコしながら僕の手を握りしめてる。


「何を言ってるのおばちゃん!アニキは最強なんだから何でもできて当然なんだよ!」

 指をチッチッとさせながらマグルスは笑ってる。


「マグルス!あんたまた私のことおばさんって言ったな!おばあちゃんだって何回言ったらわかるんだい!!」

「やっべー鬼が出たー! 逃げろー!」村に向かって走るマグルス、それを追いかけるばあちゃん。それを見てみんな笑っていた。


「マリア姉ちゃんが暴力的なのは、ばあちゃんのせいなのかも。」

 笑いながらそうつぶやくと、後ろから殺気が!「アジュール、あなたもお仕置きが必要なのかしら??」こわい!なんだこのモンスターは!



「僕たちも逃げるぞ!」

 ビッキーを抱きかかえて、僕もマグルスたちの後を追う。帰ろう、僕たちの家に。







=================================================================================================


 マグルスとビッキーは家に戻るなりすぐ寝た。ばあちゃんも二人を寝かし終えたあと、少しばかり僕と話し、その後眠りについた。



 暗闇の中僕は考える。これからのことを。ばあちゃんはこの力があっても僕は村の一員だといってくれる。マリア姉ちゃんだって弟だと言ってくれた。ほかのみんなもそうだ、決して僕を恐れず、今まで通り付き合ってくれている。


 けど、それはきっとだめなんだ。この力は僕がイスト村で静かに暮らしていくことを許してはくれない。そして何より――



 ――――『力があるものは弱いものを守る義務がある』



 僕が今どれほどの力があるのかわからない。けど、少なくとも普通じゃない。なら、僕が助けることができる人たちがこの世界のどこかにきっといるはずだ。その人たちを置いて、僕がここでただ過ごしていくことはできないんだ。




 村を出よう。僕ができることを探すために。僕が守れる人を守るために。



 決意はした。長くいれば、きっと出れなくなる。だから今行こう。けど、体が震える。それは村を出ることとは別の理由。村を出る前にやらなきゃいけないこと、その行為に体が竦む。



 今日、この村で起こったことは誰にも漏らしちゃいけない。人の命を蘇らせること。燃え盛る村を元に戻すこと。どちらもランクGの魔法だ。これが知れれば、その真偽を探りにイスト村で余計な騒動が起こることは明らかだ。



 だから。



 だからみんなの記憶を消す。この村を襲った山賊はみんなの力で退治した、奇跡的に誰一人けがすることなく。アジュールなんて人間はここにはいなかった。



 山賊から奪った弓と短剣を持ち、ゆっくりと部屋を出る。足取りは重いがそれでも一歩ずつ進み、やがて孤児院を抜け出した。



 見慣れた家がやけに遠く感じる。思い返せば楽しい思い出ばかりだった。とても居心地がよくて、ずっと浸っていたくなるそんな思い出。


 この思い出さえあればきっと大丈夫。みんなが僕を忘れても僕が覚えている。家族のみんなと過ごした日々を、村のみんなと過ごした日々を。




ギフト【創造主( ザ・クリエイター)】発動:クリエイトスキル【精神魔法】⇒ランクG



「行ってきます――。《忘却の風オブリビオン・ウィンド》」


そよ風が村を駆け巡る。そして、村から少年はいなくなった。



 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 文章なんて学生時代の読書感想文以来でつたない文章ですが、少しでも暇つぶしになったのなら幸いです。


 なんで山賊が来たのか等書きたいことは山ほどあるのですが、そうしていると一向にヒロインが出てこないのでやめました。最後が駆け足なのはそのせいです。


 一応8話にはヒロインが出てくる予定です。萌えが苦手なのでそこまでラノベチックに描けません、ご了承を。

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