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旅立ち2

 イスト村は自然に囲まれた、住民100名弱程の村である。そこには戦争等で身寄りがなくなった子供たちを助けるための小さな孤児院があった。


 孤児院では現在6名で暮らしている。

 孤児院を運営している老婆、シスターテレサ。

 みんなのお姉さん役、シスター見習いのマリア。

 若いながらも村一番の剣士であり、村周辺の警備を担当しているカイト。

 同じく村周辺の警備を担当している弓使いのアジュール。

 そしてマグルス、ビッキー兄妹。


 年齢はそれぞれ、55歳、18歳、18歳、14歳、10歳、9歳である。


 マグルスとビッキー以外は血のつながりはないが、それでも普通の家族以上の強いつながりをもった家族であった。


 かつてはここにダレンもいた。この世界では15歳で成人のため、今は20歳である。



「ばあちゃん、マグルス、ビッキーただいまー」

 孤児院の玄関を開けると、小さな人影がこちらに飛び込んできた。「おっと」そういいながら抱きかかえると、小さな人影がこちらに挨拶してくる。


「アニキおかえり!」「お兄ちゃんおかえりなさい!」

 マグルス、ビッキー兄妹だ。


「アニキーあいつやっつけた?」

 目を輝かせながらマグルスは言う。隣のビッキーも期待に満ちた目をしている。今回の大猪退治についてはマリア以外の孤児院のみんなに話していた。


 いきなり黙って退治に行けば、いなくなったことに家族のみんなは大慌てするだろう。かといって行く前にマリアに話せば止められるに決まっている。


 そのため、マリアには直接言わず、二人は退治に出かけたのであった。だからこそ、戻ってきたときには、マリアに怒られたのであるが。



「で、で、やっつけたの?」

 兄妹から期待の眼差しで覗きこまれていることに気づき、アジュールは答える。


「ああ、カイト兄ちゃんと一緒に大猪を退治してきた。そしてお前たちにいいことを教えてやるぞ。今日は村で大猪鍋祭りだ!」

 カイト兄ちゃんはすごいんだぞ。と付け加えながら、アジュールが伝える。


「すげーやっぱアニキたちは最強だ!」「すごーい。お兄ちゃんたちかっこいい!」

 鍋祭り~鍋祭り~なんて歌いながら兄妹は部屋を走り回る。その喜びよう、そして弟たちからの心からの称賛にアジュールも嬉しくなって笑みが溢れてくる。



「アジュールよく帰ってきたね。けどあんまりマリアに心配かけるんじゃないよ。」

 私は全然心配してないけどね。なんて笑いながらばあちゃんが来る。手には教本が握られてるところを見ると、さっきまでマグルスとビッキーに勉強でも教えてたんだろう。


「ははっ、マリア姉さんは今カイト兄ちゃんが宥めてるから大丈夫さ。そうだ、ばあちゃん。今日は村で大猪を使った大鍋料理をするんだ。ばあちゃんも手伝いに行った方がいいよ。」

「そうなのかい?んじゃパールのところへ行ってくるかね。アジュール、二人の世話は頼んだよ。」

「おっけーばあちゃん、任せといてよ。」


 ばあちゃんは料理に、カイト兄ちゃんとマリア姉ちゃんはしばらく戻ってこないだろうし、僕がお兄ちゃんとしてしっかり面倒見ないとね。



「おーい二人とも、祭りの準備の間僕と一緒に遊んで待ってよう。なにがやりたいー?」

 走り回ってた二人に声をかけると「ヒーローごっこ!」「お本読んでー」と、走るのをやめこちらにやってくる。


「おっけー、時間もあるし半々にしよう。まずはヒーローごっこだ。よーし、外で遊ぶぞ、二人とも準備して来いよ。」

「「はーい!」」二人はそれぞれ準備をしに部屋へ戻っていった。


 さてと、僕も準備しなくっちゃ。




==========================================================================================


 祭りは夜遅くまで続いた。大猪の鍋はとっても美味しかったし、酒に酔ったおじさんたちが馬鹿騒ぎするのを僕たちは楽しく見ていた。


 そしてなにより、


「マリア・・・愛している。俺と結婚してくれ!」

「・・・ぐすっ、その言葉ずっとまってたわ。私も愛していますカイト。喜んで。」


 うおおお!と村中から歓声が上がる。


 なんとカイト兄ちゃんがマリア姉ちゃんに結婚を申し込んだんだ!今日のお昼二人は戻ってこなかったけど、そこで何かあったのかな?

 そんなことはともかく、すごくうれしい。僕は二人が好き同士なのを知っていたから、やっとかっていう気持ちもあったけど、いざそうなるとやっぱりおめでとうって気持ちが溢れてくる。



「おめでとう、カイト兄ちゃん、マリア姉ちゃん」

「ありがとう、アジュール」

「ぐすっ、ありがとね、アジュール」

 照れくさそうに顔をかきつつ、カイト兄ちゃんが答える。マリア姉ちゃんはいまだに泣いている。


 泣いてる姉ちゃんなんてすごい珍しい。これは今後からかいのネタにしよっと!


「そうだ、今度からはマリア姉ちゃんと僕の部屋を変えようよ。僕がばあちゃんと一緒の部屋で寝るから、マリア姉ちゃんはカイト兄ちゃんと同じ部屋で寝なよ。」


「なっ!」

カイト兄ちゃんは顔を真っ赤にする。火でも吹きそうな勢いだ。


「だってそうでしょ、僕がいたら二人がするとき邪魔になるもんね」

「あ、アジュール!あなたいきなり何を言ってるの!」

 マリア姉ちゃんも同じく顔が真っ赤だ。マリア姉ちゃんがこんなに照れるところなんて見たことないからついついからかいすぎちゃうね。


「ばあちゃんには僕の方から言っておくから。じゃっ、お邪魔虫はたいさーん」

 照れてる二人を後に僕はばあちゃんと、マグルス、ビッキーのもとに戻る。僕もいつかはあんなきれいなお嫁さんがみつかるのかなー、なんてことを思いながら。




-------


 それから1カ月後、平穏な日常は終わりを告げることになる。


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