スクラップ=カン
舞台は1800年代のオーストラリア。ゴールドラッシュで大量の人々がやってきた時代だ。人々は金を求めて、オーストラリアにやってくると言っても過言ではない。
そして、スクープとは喉から手がでるほど欲しいものだ。オーストラリアのとある酒場にてスクラップ=カンという青年がカメラを持って聞き込みをしていた。彼の目当てはこのオーストリアに古くから伝わる謎の生物、バンニップだった。
「バンニップがどこにいるかって? そいつはこっちが教えてもらいたいね」
酒場の主人はコップをこねくり回しながら、そっぽを向いた。
「お願いします。教えてください!」
「だから知らないってば」
「オレはこのスクープに賭けて全財産を投げ打ってここに来たんでさあ……今更手ぶらで帰るなんて真似できっこないじゃないですか!」
そんなこと他人が知ったことじゃないと、スクラップ=カン自身も分かっていたのだが、背に腹を変えられないという事実も、また分かっていた。
「落ち着け。そもそも、なんで俺なんかに聞くんだよ」
「だって……酒場の主人は情報通だって昔から決まってるじゃないですか」
スクラップ=カンは主人の足元にしがみついてオロオロと鳴いていた。
「そんな理由かよ!」
「はい」
「確かに俺は情報通だが、何でも知ってる訳じゃねえぞ!」
その通りだ。しかし、ここで引き下がるスクラップ=カンではない。
「だったら一緒に探してくれませんか?」
うるうると涙目になりながら、捜索の手伝いを依頼する。
「なんで俺が!」
「人助けだと思って……たのんます!」
必死に懇願を続けるていると願いが通じたのか、
「分かったよ。手伝えばいいんだろ、手伝えば!」
他の客の視線が痛かったらしく、接客業を営む主人にとっては要求せざる終えなかったのだろう。
「ありがとうございます。ではさっそく行きましょう」
「行くって何処にだよ」
「バンニップが住んでいると噂の池を発見しました。この店の裏にあります」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!」
すると、スクラップ=カンの口が押さえつけられたと思うと、主人は謎の奇声を叫びながら裏口を通って店の外に出た。確かに、店のすぐ後ろに池が存在する。
「ど、どうしたんですか。急に」
「店の近くにバンニップがいるって噂になったら商売あがったりになるだろうが!」
そう言いながら、主人は怒っていた。
「す、すみませんでした」
スクラップ=カンは平謝りする。
「まあ過ぎたことは仕方ない。とっととバンニップを見つけて帰るぞ」
酒場の主人はめんどくさそうに溜め息を漏らしていた。
「はい。無事、バンニップを見つけたあかつきには貴方にもスクープの賞金を分けてあげますからね」
こうして、二人は池に踏み込んだ。ところが、彼等が生きて戻ることは無かった。翌日、二人の遺体が池に浮かんでいる所を近所の住人がみつけたのだ。遺体は二つともに顔が無くなっていて、首元から大量の血が流れて池が汚染されてしまっているのだ。そして、近所の住人は口を揃えて噂していた。バンニップの仕業だと。
バンニップの正体を知る者は数少ない。しかし、明らかにされている事実もある。それは、奴に見つかれば生きては帰れないということだけだった。