第22話 心当たり
私の胸の中にあるものは信じたくはない。
ただ、誰がこの『真っ黒な森』の犯人か。
その犯人は――
「ルアナ!!」
「レノ……」
「やっと見つけた。探してたんだぞ……いや、それよりどうした?」
私だって、レノがどこにいるのか気になって探していた。
お互い探していたから見つからなかったのかな。
迷子の子がお母さんを探して歩き回ってたら、さらに迷子になってしまったような。
いや、それじゃあ私が迷子だったみたいじゃない。
だが、そんなこと以上にレノの質問の真意が私にはわからなかった。
「どうしたって何が?」
「顔……いや、ドラゴンだからわかりにくくはあるが眉間辺りに皺がある気がするんだが、何かあったのか?」
確かに人間みたいにわかりやすくはないけど、竜だって眉間くらいある。
ただ、眉間に皺がよるかと言えば元から皺がよっているわけで多少増えようと気づくのは難しいだろう。
「えっ……あの……」
「何隠してる?」
「隠してなんか…ないよ」
「嘘だな。俺の目を見て言えるか?」
一気に私との距離を縮め、私の方へ手を伸ばす。
次に気づいた時にはレノの手が私の顔を両手で優しく、でも力強く包んでいた。
仮にも男の力……ドラゴンである私は簡単に振りほどくことが容易だったが、何故かそれをすることはできなかった。
レノはまっすぐな瞳で私を見ていた。
「………」
「俺は……頼りないか?そんなに信用できないか……?」
「そんなことない!そんなことは絶対ない!!」
レノが下を向き小さな声で言葉を紡いだ。
それを私は聞き逃さず、大きな声で否定した。
「じゃあ話してくれるか?」
「う……それは……」
「やっぱり……」
「話す話す!話すから!!」
私の「話す」という言葉に反応するように、レノは顔をあげた。
その顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「騙した!」
「なんのことだろうなー?俺にはわからないな。それより、ほら」
「レノのばか……。別に大したことじゃないんだよ。犯人の……想像ができちゃっただけ…」
「ルアナもなのか……」
レノの表情と言葉には驚きが全面に表れていた。
「それは……ここにいないやつか?」
「そう…だね…」
驚いたのはレノだけではない。
私自身、レノが同じことを考えていたとは思わなかった。
私とレノ……出会ってからそれなりの時が経った。
それは私たち心を通わせるためのものだったのかもしれない。
そっとレノが私の頬と思われる部分から手を離し真剣な顔になる。
「あいつの居場所に心当たりはあるか?」
居場所……。
あいつが私のことをどれくらい知っているのかそれはわからない。
ただ、私が知っているあいつの情報より、あいつの知っている私の情報の方が多いだろう。
でも、想像はできた。
「『真っ黒な森』だと思う」
「犯人がわざわざそこにいるか……?」
「そういう性格だから。やることをやりきらないとその場所を離れない。必要最低限でしか動かないかな」
顎に手を置きながら「なるほど……」と呟き考え込むレノ。
私は『真っ黒な森』には何かがあると考えている。
私もレノも想像がつかないような何かがあるのだろう。
「じゃあ『真っ黒な森』に行ってみるか」
「うん。行ってみるしかないよね」




