第21話 異変
DIRR回です
国中で『真っ黒な森』の噂が飛び交うようになった頃だった。
一人歩きで市街地を漁る。けれど、なんだかスッキリしなかった。やはりアイツが必要なのか、でも、人間的な性格だからこんなにも考えてしまうのだろうか。そうやってまた複雑化させることしか知らない思考。
ここ数日で数えきれないほどの溜め息をまた吐いた。ボーッと考えていたら誰かにぶつかってしまった。
「あっ、すみません!……って、何してるんだよ」
「私に向かってその口とは…説教ね」
サーシャだった。
「お前の眠くなるだけの話なんか聞いてられるかっての」
「世間様からの声も教えて存じようかと思ったのですが?」
無性に腹立つ。
「で、あの噂を知ってるか?」
「『森』?」
「犯人はルアナだって言ってるヤツが居るらしい。でも、アイツはそんなことすると思うか?」
サーシャは少し笑って答えた。
「解りきっている事を訊くんじゃないわよ。ルアナはしないわ。このサーシャが保証するわ」
「………じゃあ、誰が?」
この時、うっすらとある存在が浮かんでいたが、レノはそれを取り消した。
(うわ、本当に真っ黒……)
実に真っ黒で、木や草が灰のようなどす黒い色に成り果てていた。更に、凄い魔力を感じる。重くのしかかるような、強い魔力。
ここで何が有ったのだろうか、検討がつかない。ただ単にドラゴンだの何だのが暴れていたとすれば、山火事のような状態になっているか、そもそも木が大量に薙ぎ倒されているはずだ。私が暴れたら?少なくとも20は倒しちゃうね。
「何者………」
ただ、化物であることは正真正銘、分かっている。それと、魔物の輩で有ることも。これほどの魔力は、この世界にごく限られた獣か魔物のどちらかしか居ない。私はここまで強いかどうかは知らないが…。
それにくっきり色が別れているのも変だ。ある境界で普通の草木か、真っ黒な草木か。
ひとつ、溜め息。
やっぱり不安なんだね。
それが今の私の心境だった。誰か居れば相談できる、情報を教えられる、一緒に逃げられる。けど、今は誰も居ない。なんだか、私はこんなに臆病者だったのかと情けなくなるほど………。
ねえねえ、向こうの神社まで行こうよ!
ええ、あそこ出るんでしょ?
そんな訳ないじゃない!行こう!
やだなぁー…
ほら!行こう!
そして手を引っ張られた………。半ば絶叫しながら。
急に思い出したそのワンシーン。かつての私とは違って、今はとても怖いんだと理解した。そして強く願っているのだとも思った。何を?解ってるんじゃないか?自分の心が………。




