第18話 信頼
花神雪亜回。
現在は相方受験のため終了前最後の投稿。
「なぁ、ルアナ……」
「ねぇ、レノ……」
抱きついていた体を離し口を開いたのはほぼ同時だった。
思わず笑いが溢れる。
「ルアナから言えよ」
「うん。少しここを離れないかなって」
「俺も……同じ事を言おうとしてたよ」
「本当に!?」
なんでかはわからないがとても嬉しい。
以心伝心だな。
周りの人たち……サーシャを除いてはみんな呆然と立ち尽くしていた。
いきなり現れたドラゴンが敵を倒し俺と抱き合い話し始めたのだから無理もないが。
「レノたちはこれからどこに行くの?」
「私、レノに見せなきゃ……言わなきゃいけないことがあるの。だからそこに行こうと思って」
ルアナから突然笑顔が消えた。
人間の顔のように表情豊かではないがなんとなくわかる。
「じゃあそこに行ってその後は……また考えよう」
「うん」
ルアナに連れて来られたのはいつもの森だった。
いつもと変わらない森の風景。
だが、いつもと違うものがあった。
それが……ルアナだ。
「レノ……私ね……」
しゃがんで草を触ったり木の周りを回ったり……落ち着かない様子だった。
そしてその足を止め、ルアナが後ろを向いたまま言った。
そして振り返りながら――
「人を……レノの仲間を食べてしまったの……」
振り返った手に持っていたのは俺たちのつける鎧の一部だった。
足が震え目の前が真っ青になった。
「ごめんなさい……。言い訳になるかもしれないけど私は食べなきゃ生きられないの。だから……レノと竜騎士になりたいから……だから」
「……わかってる。わかってるけど少し待ってくれ……」
「……うん」
魔力がなくなると死んでしまう。
それはわかってることだ。
『人食いドラゴン』そう呼ばれたから俺たちが退治をしに行ったんだ。
だが、自らの手にある鎧の一部がルアナの食欲を物語っていた。
自分もいつかあの牙の餌食になるかもしれない。
そんな恐怖が頭から離れなかった。
「……俺は……」
俺はどうしたい。
俺になら油断しているルアナを敵として討つか。
それとも全てを受け入れルアナと共に今まで通り戦うか。
――そんなの考えなくたって決まってる
「ルアナ……心配するな。俺は仲間だ。仲間ならその責任を俺も負う。だからその人の分も生きるんだ」
突如未来を絶たれた人のために。
恨まれたっていい。
俺はルアナを信じる。
ルアナと共に生きる。
「ルアナは……ドラゴンだ。だから食べなければならない。でも、約束してほしい」
「何を?」
「俺に隠れて食べるな。全てを俺に言え。……とは言っても本来俺がルアナの行動を縛ることはできない。でも……約束してほしいんだ」
ルアナが人を殺すのを見たくない。
でも、これは目を背けてはいけない問題だと思う。
だからこそそれを見届けたいと思った。
「わかった……でも見てていいものではないと思うよ」
「あぁ……」




