第16話 怒りと気持ち
新神優亜改め花神雪亜回です~
「ルアナ……お前、今日おかしいぞ?」
「おかしくなんてない」
「これでも長くいたんだ。お前のことくらいわかる」
「わかるわけないじゃない!何がわかるって言うの?私の何が!!」
私は……ドラゴンなんかじゃない。
この苦しみがレノにわかるわけがない。
簡単に分かってもらっては困る。
私は地面を強く蹴り空へ飛んだ。
いつもより高く……とても高く。
レノを置き去りにして。
とても長い時間が経ったような気がする。
私は適当なところで森の中に降り立った。
迷い込んでいた一人の人間を食べた。
ただがむしゃらに。
始めて人間を食べたときと同じように。
――ガリッ
歯に金属が当たる。
とても硬い……。
「これって……」
吐き出した私が見たのは鎧の一部だった。
そしてそこには紋様があった。
私が泊まっていたあの王国の王家の紋様が。
私は脱力する。
ガシャンと音を立てて私の手から落ちる。
食べてしまったのは……王家の軍隊に所属する者の1人。
つまりレノの……仲間。
「どうしよう……どうしようどうしよう」
硬い皮膚に一筋の涙が流れる。
強い肉体とは裏腹に私の心はとても弱かった。
「泣いているの?」
声に驚き辺りを見回す。
だが、誰もいない。
「ここよ」
私の足元にいた。
以前逃げられてしまったウサギが。
「前はごめんなさい……。怖いと言って逃げてしまって」
「い……いの。それはっ……事実だから」
「私はもうあなたが怖くなんてないわ。あなたはなぜ泣いているの?」
そう言うウサギの身体は細かく震えていた。
きっと……勇気を出して来てくれたのだ。
「私……食べちゃったの……!レノの仲間を!」
「レノ……っていつも一緒にいた人間よね?」
私は嗚咽を吐きながらもウサギに説明した。
本当はウサギじゃなくても良かったのかもしれない。
誰でも……。
「なるほど……ね。でも、それはあなたが生きるためにした行為じゃない」
「でも私は……あなたも怯えていたじゃない。食べられるって」
「そう……だけど。でも考えれば私たちが生きるために食事をするようにあなたも食事をしなきゃいけない。食事というのは命をとること。でもそれを……その命と共に生きるって考えたらどう?」
「共に……生きる」
考えたことがなかった。
私は命をとって生きていると思っていた。
「ありがとう……少し楽になった」
「ううん。じゃぁ私行くね」
「うん。ばいばい」
レノと……話さなきゃ。
私がしてしまったことを隠し通せるわけがない。
だから、レノのところに行こう。
私は再び飛び立った




