第12話 竜騎士の本
優亜回です~
私は一人で王宮の地下図書までは行けない。
なぜなら私が王都に行けば魔物が王都に出現ことになり大きな混乱を生んでしまう。
そのことに気づき、昨日、レノと話をした。
王都に住んでいるレノだが、今回は自分にも非があるということで一度森に来てくれることになった。
レノと、一緒に行くことで少しでも混乱を防げたらと思った。
レノとの約束の時間まではあと少し。
だが、今、私の横にフローナはいない。
いつものように笑って話をするフローナが昨日何も言わず消え、そのまま帰ってこなかった。
「ルアナ、遅くなった」
「大丈夫だよ。まだ約束の時間前だし」
「ルアナが先にいる時点で遅れてるんだよ」
レノは苦笑した。
なるほど。
私より先に来ないと早く来たことにはならないんだね。
「……なんで?」
「なんでって……お前な。男としてだよ」
「ふーん」
そんな一言が私には嬉しかった。
男として。
それは私を女として見てくれている証拠だから。
「行くか」
レノは私に乗る。
どうやら飛んで行っていいらしい。
しばらくすると私の下に街が見えてきた。
人目につかないようかなり上空を飛んでいたが、そんな街の景色に少しずつ下りていた。
「あれ……何?ママ」
子どもが私を見ていた。
そして、私を見た母親らしき人物が悲鳴をあげていた。
「大丈夫だ。王宮へ向かおう」
「……うん」
レノが優しい声で言ってくれた。
でも……やっぱり心に刺さる。
私を見て怖い思いをする人がいると思うと……。
「ルアナ、そこだ」
考えているうちに王宮の上空にいたらしい。
私たちは地に足をつける。
青々と茂る芝生。
その先には白を基調とする王宮があった。
レノに連れられ、中に入る。
中は外観とは違いさらに豪華だった。
レノは迷うことなく廊下を進み、階段を下りていく。
私もそのあとに続き階段を下りる。
下りたところにドアはなく、ただ壁一面に本があった。
そんな中に昨日あった王女サーシャがいた。
「待ってたわ。そこに座ってちょうだい」
「さっそくだが、話してもらえるか?」
「えぇ。でも、その前に1つ確認したいの。レノが竜騎士の本を見たのはいつ?」
「そう……だな。正確には思い出せないが2年くらい前だったな」
「私が最後に確認したのが1年前のちょうどこの時期よ。ここを管理しているのも私で人間が盗むことはまず不可能なのよ」
「なんで?だってここにはドアがないじゃない」
「魔力を察知するための魔法壁があるの。ここにはなくなった竜騎士の本以外にも本当に重要な本がたくさんあるから」
「なるほどな。そういうことだったのか」
「竜騎士の本……と言うよりここにある本は1冊1冊も魔法がかかっていてこの場所からは持ち出せないようになってるの。そして許可なくここに入ることもできないはずなんだけどなぜレノは入れたんだろう」
レノが竜騎士の本を見たときはサーシャに許可など取ったわけではなかった。
それでもこの場所に入れたという事実がある。
それはなぜか、今それを考えても答えが出るはずがなかった。
「レノ、あなたが読んだ竜騎士の本の話はドラゴンさんにしてあげたの?」
「いや……そうか。話さないといけないな」
レノが私を向き竜騎士の本の内容について話してくれた。
「竜騎士がいたのは今から何百年も前だった。人々は四六時中争い、権力を求めていたその時の王家も常に命を狙われていたんだ」
「でも、レノたちみたいな人がいたんでしょ?」
「いたことにはいたんだ。でも、そいつらは王家を裏切った。全員とは言わないがほとんどの者たちが自分自身が力を得るために裏切ったんだ。裏切らなかった者の中の1人がのちの竜騎士だ。そのころはドラゴンなんてそこら中にいた。ルアナ、お前がいた森にな。このあとは竜騎士になったあとの話だったから。ここからは俺の想像になる。そいつは俺と同じようにあの森に行った。そして、俺と同じようにドラゴンと出会い、仲良くなった…」
レノがまっすぐ私を見る。
でも、その空気を叩き切るようにサーシャが言った。
「レノは昔から人とは違ったのよね」
「昔って、ほんの4年後前だろ」
「レノならなんかやると思っていたけど……竜騎士になるの?」
「ルアナと一緒にな。それで、お願いがあったんだ。竜騎士の本がなくなった。その事実は消えない。だけどな、なくなったものが見つかるのを待つより新しいものをつくったほうが早いんじゃないか?」
「……まぁ、そうね」
「だから新しい竜騎士の本(俺たちの本)を書いてほしい」
「……言うと思ってたわ。私が帰る直前そんな話をしてたものね。でも、実際とても難しいの。ここで有する必要があるような本。それが出来る?」
「やるだけのことはやってみる。それしか今の俺に言えることはない」




