No1の景色
僕は水泳部。
物心ついた時にはもう水泳を始めていた。
そんな僕がキツイ練習に耐えてこれたのは・・・
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中学に上がって最初の大会。
緊張で足がガクガクになっていた。
出る種目は練習が楽だという理由で泳ぎ始めた『平泳ぎ』だった。
僕の名前が呼ばれ、プールサイドに立つと笑顔のチームメイトが声援を送ってくれた。
緊張で頭がいっぱいだった僕に勇気をくれた。
そして、けたたましい笛の音が鳴りついに僕の出番がきた・・・
チームメイトが、名前が僕の名前を叫び、応援してくれている。
僕の足はもう震えていなかった。
ヨ―イ。。。。ピッ!
開始の合図と共に選手全員が飛び込んだ。
飛び込んでから水面に浮かび上がるまでが、すごく長いように感じていた。
しかし、水面に上がって僕が目にした景色は・・・
自分の右にも、左にも、他の選手が居ない・・・
ただ見えるものそれは観客席で自分のチームを応援する人達。
広いプールで自分だけが泳いでいる、そんな気分になった。
他の選手たちは全て自分の後ろに居る。
呼吸を前方でする平泳ぎは視野が他の泳ぎに比べ抜群に広い。
息つぎのたびに見えるものそれは、前方に自分以外、誰も居ない世界だった。
自分がたてた水のしぶきがライトに照らされ宝石のようにキラキラと輝いていた。
その景色を他の選手に見せたくなくて、僕は最後までトップで泳ぎきった。
泳ぎ終わり、観客席に目をやると歓喜の表情を浮かべているチームメイトが居た。
電光掲示板の1位の表示に僕の名前が浮かびあがり
仲間たちが笑顔で僕の名前を呼ぶ。
勝者のみが見ることのできる、その景色、それが『No1の景色』だった。
詠んで頂いてありがとうございました。
これからも僕は水泳を続けます。