もしかしたらの好きと嫌い:sideパラレルワールド
web拍手のお礼に掲載した小説です。
※ パラレルワールド編。本編の松岡とは別人だと思って読んで下さい。
中間試験の最終日、虹の丘公園で陽太君に二度目の告白をされた私。そこに突然松が現れて、私の腕を強くひいて歩き出す。
展望台から離れたとこで止まった松は握る手にぎゅっと力を込めて、私をまっすぐに見すえる。その瞳には言い知れぬ熱が宿っていた、見られていることに身じろいで視線をそらす。
「話ってなに……? 早く、陽太君のところに戻らないと……」
「……あいつと付き合うのか?」
低く掠れた声でつぶやかれたその言葉に、私はわずかに眉根を寄せる。
またその話題なの――? そう思わずにはいられなかったんだけど、思いつめたような鋭い視線を向けられて、身が強張る。
「俺が好きなのは芹香だよ――」
言っている意味が分からなくて、瞠目する。
「な、に、言ってるの……、松は美咲ちゃんと付き合ってるんでしょ……?」
「付き合ってないよ、美咲とはもう付き合ってないんだ。夏休みに告白されて、俺は芹が好きだからって断ったけど、期間限定でもいいから付き合ってほしいって言われて、それも学園祭までの約束だったんだ」
突然告げられたことに、頭の中がパニックになる。
だって、松が本当は私のことを好きだったとか、美咲ちゃんとは期間限定の彼カノだったとか――
「うそ……そんなこと信じられない……っ」
私は掴まれたままの腕から逃れるように身を捩って手を振り払おうとしたんだけど、強く握られていて振り払うことが出来ない。
もう、なにがなんだか分からなくて、なにも信じられなくて、ぽろぽろとこぼれてくる涙を隠すように俯く。下ろしていた髪がぱらぱらと肩からすべり落ちて、涙でぐちゃぐちゃの顔を隠してくれた。
「芹、こっち向いて――」
その言葉に、頭をふるふる振って拒絶する。
今、松の顔を見たら、私も松のことが好きだって言ってしまいそうで怖くて顔を上げられない。
だって、美咲ちゃんは松のことが好きで、二人は両思いで――
ぐるぐるとどうしようもない思考に悩まされて、強く頭を振る。これが夢なら、こんな甘い夢は早く覚めてほしいと思って。
瞬間、ぐいっと強く腕を引かれて反動で顔をあげてしまって、顔を傾けた松が顔を近づけてきて唇が触れる。
触れたんじゃなくてキスされたって気づいて、かぁーっと顔が赤くなる。
「これでも信じられない?」
息が触れるような距離で言った松は、美しい瞳の中にうっとりするほど甘い光をきらめかせて、不敵に微笑んで私の心を射止める。
驚きでどうにかなりそうだった頭から湯気が出始めて爆発寸前だった。
「なっ、なっ……」
「芹、好きだ――」
艶やかな余韻を含んだ声で言うと同時に、松が再び顔を傾けてきて私はぎゅっと目を瞑った。
※ 第63話、本当はこういう展開にもっていきたかったのですが……ヘタレ松岡ではこんなに強気にいけないでしょうね。残念。




