01話① 4月1日 「あと数日で中3か…(朝)」
─サラサラサラ─
静かな部屋に万年筆が走る音だけが響く。
─サラサラサ─ガチャッ!─
と、突然部屋の扉が勢いよく開かれた。
「ご主人さま〜!コーヒーを淹れてきましたー」
入ってきたのは猫のケモモノのメイドさん。ピンクの髪としっぽをふわふわさせながら、コーヒーの乗ったお盆を片手に可愛いらしい仕草で部屋に入ってくる。一方ご主人さまは…。
「間違えた…。」
今のでしっかりと字が乱れていた。そもそも字が汚いので誤差だと自分に言い聞かせつつ、入ってきたメイドさんに向かって、「ありがとう、ニーシャ」と返す。
「…!その万年筆、この間私があげたやつ!ちゃんと使ってくれてるんですね!…ところで、ご主人さま、何してるんですか?」
「ん?…えっとね、日記を書いてるんだ…。折角ならこの生活を日記に残したいと思って。」
「そうなんですか!読みたいです!」
そう言われてご主人さま─城乃は、恥ずかしそうに目を逸らしつつ、
「…わかった。書き終わるまで待っててね。」
「は〜い」
「…そうだ、手伝ってくれない?ボクが寝てる時とかの部分も書きたいからさ。」
「いいですよ〜」
「ありがと。」
しばらくして。
「書き終わったぁ…。…読んでいいよ。」
「ありがとうございます!…えーっと…『4月1日 「あと数日で中3か…」』…ほぇ〜…『今日は…』」
「声に出すのやめてくれる?…恥ずかしい…。」
「あ、ごめんなさい」
『 今日はついに4月に入ってしまった…。あと少しで中3になって…受験のことを考えないといけないなぁ…。ボクは引きこもりだから…怖い…けど頑張らないと…。
─朝。 えっと…日もそろそろ高くなってくる頃まで、ご主人さまは広いベッドに一人で寝ていました。私はそんなかわいいご主人さまを起こそうと…起こそうとしてお布団に潜り込みました。ご主人さまは…それに気づかず寝てたけど。
ほっぺたをつんつんしたり、頭をよしよししたり……いろいろ……してから起こそうと声をかけました。
「ご主人さまぁ♡お昼ですよっ。そろそろ起きましょ?」
起きません。まぁこのくらいじゃ当然ですね。ので、一旦ベッドから降りて…布団をどかしてご主人さまの上に乗っかってみました。腰のあたりに座って…体勢がやばいことは気にしないようにして…ゆすってみました。そうするとご主人さまがかすかに目を開けたので、すかさず抱きつきつつ耳の近くでウィスパーボイス。
「おはようございます。ご主人さまっ♡このままだとお耳を食べちゃいますよ〜?」
…といった感じでした。…その後のことは詳しく覚えてません。なんででしょうねー。
今日ボクが起きて…一番最初に覚えてるのはニーシャがボクの上に乗っかりながら赤面してるところ…かな。その後体に衝撃が走って、
「このままだとお耳を食べちゃいますよ〜?」
って聞こえた。…からこう返した。
「お耳食べてもらえるのぉ…?…うれしい…なぁ…」
少しの間の後ニーシャが悶える声が聞こえてきて、そこでようやく体を起こして起きた。ニーシャの方を見るとなんかオーバーヒートしてたから…つんつんして可愛さを吸収。…そのあとお姫様抱っこでリビングに連れて行ってソファに寝かせておいた。
そのとき、
「ご主人様ぁ〜おはよう♡よく眠れたかな?」
と、奥の方からふわりとした声がした。
「おはよ、リリィ。まぁ12時間寝てるし…。」
ふわふわの髪にふわふわのしっぽ。ふわふわのケモ耳を備えた母性溢れる銀の狼のケモモノのリリィ。今すぐにでも甘えたい。
「そっかそっかぁ…。それはよかった♡…あれ?ニーシャちゃんどうしちゃったの?」
ボクもリリィもソファの上のニーシャに目をやった。
「わかんない。」
「そっかわかんないかぁ」
…こんなやり取りしたけど。…適当すぎるなぁ…。いつものことだけど…。
そのあと…眠かったからソファでボクも眠ろうとしたら後ろから抱きつかれた。
「だーれだっ」
こんなことするのは(厳密には3人だけどこんな状況でするのは)1人しかいないよね…と思いつつ答えた。
「ミメー、でしょ。眠いんだけどぉ…。」
青い髪のキツネのケモモノ、お洒落番長のミメー。…こう書くとボクに刺さってる理由が詰まってるな。…まぁ…ミメーはそれを聞いて呆れ気味に答えた。
「いや、寝ちゃダメでしょ。早く顔洗ってきなー」
「えー…ぃやだぁ…」
「わがまま言わない」
普段言う側のミメーにそう嗜められて…そのまま引きずられるように洗面所に行った。
顔を洗って帰ってくると食卓には朝…食…(11時半はまだ朝…朝…)が並べられてた。静かにお箸を並べている垂れたケモ耳の執事、ハロに声をかけた。
「ありがと、ハロ。今日も美味しそぉ…。」
続いてミメーも、
「っ!ヤバっ今日のもおいしそ!しかもめっちゃ映える!」
それに対しハロは落ち着いた様子で
「ありがとうございます。今日のブランチはハニートーストとコーンスープです。」
と返す。
…ブランチって手があったか。…と考えながら席に着くと、洗濯物を片付けていたリリィがニーシャを起こしつつ席に着いた。そのあと…全員が席に着いて早速食べ始めた。ハロの料理はやっぱり美味しくて…30分くらいの食事のあと…昼寝しようとしてみんなに止められた。』
「…長くないですか…?」
と、顔を上げたニーシャが言う。
「ちょっと…楽しくなっちゃって…。」
「これ…朝の分だけで、ですよね…?」
目を逸らす城乃。その仕草が可愛いとしか思えないニーシャ。
「…ニーシャ…。」
名前を呼ばれて首を傾げたことで猫耳が揺れる。
「朝、あんなことしてオーバーヒ─」
「露骨な話題転換はやめてください!!」
猫耳をピンと立て顔を真っ赤にしながらニーシャは反論する。
「さ、早く次書きましょ?」
「そーだね…。折角なら3人も呼ばない?」
「いいですね♪では呼んできますねー」
くるりとターンししっぽを揺らしながらニーシャは部屋を出ていく。
「可愛いぃ…。食べちゃいたい。」
※これは4人のメイドと1人のご主人様が送る「百合」ラブコメです。
世界観:技術レベルは同等。亜人がいたり、メイドという職業が一般的だったりする。
ケモモノ:動物系の亜人のこと。種類は様々。ケモ耳やしっぽがあるだけのケモモノもいれば、動物がメインなケモモノもいる。ちなみにハロはケモモノではない。
思った五倍長くなりそう…。
メ主百合とでも略してくださーい。




