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第六話「大好きな彼女からのファンレター」


 

 

『黒瀬カイトさんへ


 はじめまして。いつも配信や動画を楽しく見ています。


 実は大学に入学した頃、友達ができなくて家にこもっていたんです。

 そんなとき偶然カイトさんのショート動画を見て、配信にも遊びに行くようになりました。

 勇気を出して「大学に行くのが憂鬱です」ってコメントしたとき、カイトさんが「辛いときは無理に頑張らなくていいと思う。心が元気になったら大学に行けばいいと思うよ」って言ってくれて……あの言葉に本当に救われました。


 少しずつ大学に行けるようになって、今では大切なお友達もできました。大学で友達ができたのは、カイトさんのおかげです。


 これからもずっと応援しています。いつかカイトさんに会いたいです。

 体調に気をつけて、楽しく配信してくださいね。


 篠田菜月より』

 

 俺は何度も読み返して喜びに浸っていた。

 菜月は文字まで可愛い。しかし問題の一文が……。


『いつかカイトさんに会いたいです』


 会いたい……そりゃあ俺も会いたいよ! 毎日会ってるけど、黒瀬カイトとして会いたいよ! でもできないんだよ! そんなことしたら、俺も黒瀬カイトも生活もバッドエンドを迎えてしまうんだよ!


「あ、カイトさん会社に来るなんて珍しいですね」


 そう、俺は今所属している会社ふわラボに来ている。ファンレターがどっさり入った段ボール箱から菜月の手紙を探し出し、それを読み耽っていた。

 大学であらかじめ読ませてもらっていたけど、正式なファンレターとして読むと、改めて胸に沁みる。


「ファンレターが届いてるから、取りに来るようにって、佐久間さんから連絡がありまして」


 事実はこうだ。

 佐久間さんに恋人菜月がファンレターを送りたがってるけど、どうしたらいいか聞く→とりあえずファンレターを出させて、会社に届いたら私から連絡するから、すぐに取りに来るように→ラジャー、の流れである。


「そのファンレター、全部チェックしたやつですか?」


「あ、佐久間さんがチェックしてくれました」


「だったら持って帰ってくださいねー」


 俺は段ボール箱を抱えて急いで会社を出た。万が一菜月の手紙を会社の誰かが見たらエライことになる。いや、ただのいちファンだから、そこまで大事にはならないと思うけど、万が一ということもある。

 この手紙から、俺と菜月の恋人関係がバレたら……想像するだけで背筋が寒くなる。俺はそそくさと段ボール箱を持ってマンションに帰った。


 そしてまた、菜月の手紙を読み返す。

 可愛い文字だよなぁ。菜月の可愛さが文体にも現れてる。

 黒瀬カイトととしても、ますますやる気が出てくる。ファンに応えるのも仕事の一つだ。

 がしかし。


『いつかカイトさんに会いたいです』


 これだけは! これだけはどうしても叶えてあげられない!! 何というもどかしさ!

 なんで俺は黒瀬カイトなんだ! なんで菜月は黒瀬カイトを好きになってしまったんだ!

 まるでロミオとジュリエットじゃないか! いや、違うか。


「あーどうしたらいいんだ俺は」


 困ったときの佐久間さん。


 ポチポチとメッセージを書く。


『ファンレター回収しました。菜月の手紙が可愛すぎる件について。あと菜月は想像以上にカイトにガチ恋してます。どうすればいいですか?』


 またもや三十秒以内に返答がきた。


『あくまで一ファンとして接してください。過剰反応は禁止。あとあなたの恋人が可愛かろうがブスだろうが、私には関係ありません』


 いつもながらクールだぜ佐久間さん。文面にちょっと棘があるのは気のせいだよな。

 あー! 俺はこの二重生活をどうしたらいいんだー!


 +++


「やっぱりファンレターの返事なんて来ないよね」


 大学のカフェで菜月は凹んでいた。


「詳しいことは分からないけど、人気のあるVTuberなんだろ? 忙しくて返事書く暇がないだけなんじゃないか?」


「ううん! もしかすると読んでくれてない可能性もある! 沢山いるファンの中で私の手紙を読んでくれる可能性なんてありえないかも……」


 すっかりぺっしょぺしょになってる菜月に俺は励ますことしかできない。


「ちゃんと読んでくれてるはずだよ。黒瀬カイトってそういうの大切にしそうなタイプなんだろ?」


「うん……多分」


 そこは自信を持って!


「きっと……いや、絶対に菜月の手紙は読まれてる! 俺が保証する! だってあんなに思いのこもった手紙を読まないなんてあり得ないから!」


「プッ! なんで慎吾くんが保証するのよ。でもありがとう。元気出た!」


 いつもの菜月の笑顔が見れて俺はホッとする。

 彼女が悲しむ顔は見たくない。


「慎吾くんはいつも私を元気づけてくれるよね。私慎吾くんに助けられっぱなしだよ」


「そんなことないよ。俺だって菜月にたくさん救われてるよ。菜月といると楽しいし、俺に優しくしてくれるし、しんどい時は励ましてくれるし、感謝しかないよ」


 これはホントの気持ち。

 菜月は肘をついて手を頬に当てると微笑んだ。


「私、慎吾くんの彼女になって良かった」


 くっ、またそんな心臓に悪いことを言う!

 やっぱり俺の彼女は世界一だー!


+++


 うっし! 今日も配信頑張るか! 今日は雑談配信だ。マシュマロのお焚き上げも兼ねてみんなと雑談だ。


 そして俺はあることを決意していた。

 菜月には辛い話になるかもしれないけれど──


 

 

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