第十六話「俺と彼女のラブ甘デート」
またまた菜月とのデート!
今回は菜月の気が晴れるようなデートにしたい!
そして今回も俺は早めに到着。なんか張り切ってるみたいに思われたらどうしよう。
まあ、今更か!
しばらく待ってると菜月がやってきた。
淡いオレンジのワンピースにカーディガンという、もはや俺の彼女なにを着ても可愛すぎるだろ状態です。
そして俺のファッションは、無難と平凡。清潔感だけは意識してる。
「お待たせ〜」
「今日も可愛いね菜月」
自分でも驚くほどするりと言葉が出てきてびっくりした。
「や、やだな〜照れるじゃん」
「ごめん、柄にもないこと言った」
二人して照れてる俺たちは他の人にはどう映っているのだろう。
「今日はスイーツに映画にゲーセンに、とにかく楽しいことは全部やる!」
菜月が吹き出す。
「何それ、受ける」
菜月が笑ってくれてる。それだけで嬉しくなる。
「それじゃあ行こうか!」
まずはゲーセンか。この前取れなかったカイトのフィギュアをゲットするためのリベンジだ!
「うわ〜難しい所にあるなぁ」
「本当だね。あの場所から取るのは難易度高すぎない?」
「そうと分かってても、男には挑戦しなければならないときがある!」
「あはは、何よそれ」
「待ってろよカイトー! お前を手に入れてやる!」
……その結果。俺は結構な金額をつぎ込んだが全て失敗に終わる。
「落ち込まないで慎吾くん。もういいよ」
「ぐぬぬ……申し訳ない」
「いいよ別に。さ、次はどこに行く?」
「あ、前に食べたいって言ってたパンケーキ屋、今日こそ行こうよ」
「いいね〜。たくさん食べちゃいそう」
「我慢しないでガンガン食べよう!」
さすが話題のパンケーキ屋。なかなかの盛況っぷり。行列ができてる。
「並ぶ? 嫌だったらやめるけど」
「並ぶ! せっかく来たんだから食べないと帰れないよ慎吾くん!」
「わかった! じゃあ並ぼう」
並んで一時間弱、ようやく俺たちは店の中に入れた。
「わ〜どれも美味しそうで迷う〜」
「どれでも好きなの選びなよ。なんなら全部頼んでもいいし」
「なに言ってるの。私そんなにお金持ってきてないよ!」
苦笑する菜月に俺は至って真面目に「お金なら俺が払うから気にしなくて良いよ」と言うと、菜月に怒られた。ぶっちゃけカイトとして稼いだお金は結構な金額なんだが、物欲があまりない俺はこんな機会でもなければ使い道がない。
菜月は一番人気と書かれたパンケーキを頼んで、俺はフルーツが乗ってるやつを頼んだ。
やってきたパンケーキは分厚くてふわふわだった。
「慎吾くん、こっち向いて!」
カメラの音がなる。スマホを見せてもらったら、何とも閉まらない顔をしている俺が写ってた。
「映えてる! いいね〜!」
「いやいや、俺めっちゃ間抜けな顔してるし! 俺じゃなくてパンケーキだけ撮ればいいのに」
「せっかくデートしてるんだから、恋人と一緒に撮りたいじゃん」
菜月の頬が微かに赤くなる。くぁー! 可愛すぎか!
菜月はパンケーキを崩さないように慎重にナイフを入れてフォークで口に運ぶ。
「うわ〜めっちゃふわふわで美味しい!」
「ん、こっちも美味しいから食べてみ」
俺が自分のパンケーキを菜月の皿によそう。
「え! いいよ! 気を使わなくても……」
「美味しいものは分け合うと、もっと美味しくなると思わない?」
「でも〜」
「気にしないで食べて」
菜月は頷くと、俺があげたパンケーキを食べる。笑顔で小さく首を揺らしているということは、美味しかったようだ。良かった。
パンケーキを堪能した俺たちは、次に映画館へと向かった。
「なにを見たい? 俺はなんでもいいけど」
菜月は真剣に悩んだ結果、CMでもよく流れてるアクション映画を選んだ。
「私の友達が面白かったって言ってたから」
はにかむ菜月に俺は頬が緩む。
「じゃあチケット発券しよっか」
「うん!」
そのアクション映画は大当たりだった。隣をチラリと見ると、菜月は両手を握ってスクリーンに魅入ってる。
エンドロールを最後まで見終わると、菜月はほうっ、と吐息をついた。
「すっごく面白かったね! 飛行機から飛び降りるシーンなんてハラハラしちゃった」
「電車と電車の間に立ってたシーンも凄かったね」
「そうそう! いや〜この映画を選んで良かった〜」
互いに感想を言い合いながら、俺たちはブラブラ歩いてた。菜月が聞き慣れた歌を口ずさんでいる。
カイトの歌だった。可愛らしい歌声だった。とその時、菜月が俺の方を向いた。
「ね、この歌、慎吾くんの声で聴きたいな」
と無茶ぶりしてきた。
「いや、俺カイトの歌知らないし……」
「私が教えるから、ね?」
「下手でも笑うなよ?」
「笑わないよ! まずは──」
菜月のレクチャーのもと、俺はカイトの歌を口ずさむ。わざと音程を外してみたりして、カイトだとバレないようにする。
「これでおしまい! もう、歌わないからな!」
「なに言ってるの。凄く良かったよ!」
「お世辞ありがとう」
「お世辞じゃないって〜!」
俺は照れくさくて菜月を追い越す。
まさかその時、菜月が涙ぐみながら「やっぱり……」なんて呟いてたなんて俺は知らなかった。




