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第十一話「まさかの浮気疑惑!?」


 

 

「お、俺が浮気!?」


「そうだよ! 私ずっと気づいてたんだから!」


「ちょっと待って! あり得ないから! 俺が浮気とか、本気であり得ないから!」


「じゃあ何で毎日忙しそうにしてるの? 私以外の彼女に会いに行ってるからでしょ!?」


「そんなわけないから!」


「だって最近、慎吾くん変わったもん! 何だか体が引き締まってきて、前は付けてなかったのに、コロンなんて付け始めてるし! 新しい彼女に会いに行く為にしてるんでしょ!」


「違うよ! 体は最近ランニングしてるからだし、コロンはシャワーで汗流しても、まだ匂いしてたら菜月に嫌われちゃうな、って思ってしてるだけだから!」


「ランニング? そんな見え透いた嘘つかないで!」


「嘘じゃないから!」


「じゃあ何でそんなことし始めたの!?」


 うっ、と言葉に詰まる。正直に言えるわけ無いから、苦し紛れに思いついた言い訳をついた。


「な……菜月に見合う彼氏になりたくて」


「……どういうこと?」


 俺は少し俯いて嘘の言い訳を始めた。


「菜月は大学でも一二を争う可愛い女の子でしょ? でも俺は絵に書いたような平凡男で……一緒にいると、どうしても見劣りしちゃうじゃん? だから菜月が一緒にいても恥ずかしくない男に少しでもなれたらな、って思って」


 菜月は呆然としている。そして次の瞬間にはまた爆発した。


「そ……そんな馬鹿なこと何で考えるのよ! 私は見かけで慎吾くんと付き合ってるわけじゃない! 慎吾くんの中身が素敵だから付き合ってるのに、なんでそんな事考えるのよ! ばか!」


「ご、ごめん……俺、菜月にもっと好かれたくて」


「十分好きだもん! そこら辺のイケメンより、私は慎吾くんの方がイケメンだと思ってるし!」


 菜月が真っ赤になって訴える。


「私の容姿だって、歳を取ったらしわしわのおばあちゃんになるんだよ? 永遠に今の私のままじゃないから!」


 菜月の目が潤み始める。まさか……


「で、でも……浮気じゃなくて……よか……たよぉ」


「な、菜月泣かないでよ。えっとハンカチ……あった!」


 ポケットからしわしわのハンカチを出して菜月に渡す。


「それちゃんと洗ってあるやつだから! キレイだから!」


「うぅ……あり、がとう」


 ボタボタ大粒の涙を流す菜月に、俺は嘘をついている後ろめたさと、些細なところまで俺を見ていてくれてた菜月に嬉しさを感じた。なんて厄介な二つの感情なんだろうか。


「ぐすっ……ハンカチ、ちゃんと洗って返すから……」


「いや、いいよ気にしなくて。菜月が泣きやんでくれるだけで嬉しいから」


 菜月はハンカチで目元を拭いながら、ようやく落ち着いてきた。


「……変な誤解して……ごめんなさい」


 菜月が頭を下げる。


「いや、俺が誤解されるような真似をしたから」


「でも嬉しい。私のために頑張ってくれてたなんて……私やっぱり慎吾くんが彼氏で良かった」


 くううっ! 胸が痛い! 本当の理由が話せないのが恨めしい!


「ほら、菜月笑って。俺は菜月の笑顔が好きだから。向日葵みたいに周りがぱあっ、て明るくなるから」


 菜月が真っ赤になる。


「慎吾くんって、時々凄く恥ずかしいこと平気で言うよね」


「え!? 俺なんか恥ずかしいこと言った?」


「ふふっ、内緒」


「なんだよもう!」


 ようやく菜月の可愛らしい笑顔が戻ってくれて、俺はホッとする。

 菜月、俺いつか必ず本当のこというから、それまで待ってて。


+++


 浮気騒動の後でも俺は体力作りに余念がなかった。菜月はもうそんな事しないで良いと言うが、そうはいかない。もうライブイベントはそこまで迫ってるんだから、手は抜けない。

 菜月は仕方ないなぁ、って顔してた。


 そしてついにチケットの当否が分かる日がやってきた。

 俺と菜月は放課後の大学でスマホを握りしめて、発表の時間が来るのを待った。


「当たってなかったらどうしよう」


 菜月が急に弱気になる。その気持ち、分からなくもないけど、一次がだめでも二次チケット販売もあるし、深刻にならなくてもいいと思った。


「あ、時間だ」


 教室の時計を見る菜月だったが、手の中のスマホを一向に見ない。


「菜月? 見ないの?」


「怖くて見れないの! どうしよう慎吾くん……」


「大丈夫だって! ほら、見てみようよ。俺も見るから」


「そ、それじゃあ、いっせーの、で見ようね?」


「うん。よし、いっせーの……」


「せっ!」


 スマホの画面を見る俺と菜月。


「あー俺は駄目だった。菜月は?」


 菜月は茫然自失と言った顔をしていた。


「い、」


「い?」


「いけたー! 二枚チケット手に入れたー!」


 菜月が席から立ち上がって喜びを全身で表す。


「やった! やったよ慎吾くん! 毎日お祈りしてたおかげだよぉ!」


 例の神棚にカイトのアクスタを並べてるやつか。


「よかったね、菜月」


「うん! 本当に嬉しい! 嬉しすぎる!」


 菜月はスマホを胸に当てて感慨に浸っている。


「あ! 帰りにチケット購入しなきゃだ! 慎吾くんも付いてきてくれる?」


「いいよ」


「ありがとう! は〜……生カイトが見れるんだついに」


「ところで二枚ってことは、あと一枚は誰と行くの?」


 菜月はなにを言ってるの、って顔で俺を見てくる。


「慎吾くんも一緒に行こうよ!」


 え、それは絶対にできないというか、不可能なんだが……


「ごめん、俺その日は家に母さんが来るんだ。だから行けない」


 母よ、言い訳に使ってごめん。


「そうなんだ……じゃあ、真由に聞いてみる!」


 俺たちは大学を出ると、コンビニに寄ってチケットを発券した。

 帰り道、菜月は本当に嬉しそうでずっとニコニコしていた。


 あとは俺が菜月のこの笑顔を守るためにも頑張らなきゃいけない番だ!


 

 

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