ライオネット蛮編第2章:獅子の誇り、再び ― 蛮 VS モロク
「オオオオオオッ!!」 雄叫びと共に、蛮の拳がモロクの胸部を打ち抜かんと迫る。 だがその一撃は、まるで岩山にぶつかったかのように、鈍い音を立てて弾かれた。 「無駄だ」 モロクが腕を振り下ろす。 地が裂け、石柱が砕け散る。 それでも蛮はよろめきながら立ち上がる。 「“拳”に頼る小宇宙か……所詮、青銅の限界よ」 巨腕が振り上がる。 (くそっ……重い……!こいつの力……異常だ……!) 蛮は感じていた。己が鍛えてきた筋力でも、この“魔将”には届かない。 それでも、立ち上がる。何度でも。 モロクが不気味な声でつぶやく。 「その執念は評価しよう。だが貴様の拳に宿るものは、破壊にも到達せぬ」
そのときだった。 ――「違うぞ、蛮」 「……!?」 頭の奥に響いた声。 暖かく、だが鋭く。 そして、どこか懐かしい。 (この声……まさか……) 獅子宮の中心部、砕けた石床の下から、金色の微光が差し込む。 そこに確かに――かつてこの宮を守護していた男の意志が、残されていた。 「お前の拳は、ただの力じゃない。 痛みを知る拳、仲間を思う拳。 それこそが“獅子”の誇りだ」 (アイオリア……!!)
モロクの拳が振り下ろされる――! だがその瞬間、蛮の身体から金と紅の混じるような小宇宙が爆発した! 「ぬっ……!」 拳を受け止めたのは、蛮の両腕。 その筋肉が、光を纏っている。 「さっき言ったな……俺の拳は、破壊にも届かないって」 蛮が、ゆっくりと拳を構える。 「じゃあ、届かせてやるよ。俺なりの、ライオンの一撃をな!」
モロクが再び腕を振り上げるが―― その動きより早く、蛮が踏み込む! 「喰らえッ!! 獅子咆哮拳ッッ!!」 地を砕き、空気を震わせる咆哮と共に、 拳から放たれた無数の衝撃波が獅子の咆哮の如く、モロクを飲み込んだ! 「グ、グワアアアアッッ!!」 モロクの鎧に亀裂が走り、身体ごと壁に叩きつけられる。 「この……青銅如きが……!」 それでもなお立ち上がろうとするモロク。 だが、蛮は静かに一言、呟いた。 「立つな。次は……倒す」
燃え尽きるように煌めく小宇宙。 かつて最も評価されなかった小獅子は、今、確かに“獅子の血”を目覚めさせた。 その光の中、獅子宮の奥から再び、微かにアイオリアの声が響く。 「よくやった、ライオネットの蛮。お前は、もう……誇り高き“獅子”だ」 ――その光は、静かに消えていった。