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ライオネット蛮編第1章:小獅子座の決意

――ギリシャ、アテナ神殿跡地。 聖域サンクチュアリは、冥王との大戦により、かつての威容を失っていた。 だが、そこに残る十二の宮殿は、今なお不動の威厳をたたえている。 その五番目、獅子宮―― 朽ちかけた大理石の柱が並ぶ静寂の地に、一人の男が足を踏み入れた。 ――ライオネットの蛮。かつて銀河戦争で敗れた。 その後、鍛え直し、力を増したが、仲間たちの中でも最も評価されない男。

「……」 蛮は、言葉をほとんど発しない。 だがその眼には、獣のような闘志が宿っている。 呼吸一つ乱さぬまま、彼は黙々と獅子宮の中心へ歩を進めた。 床に刻まれたレオの紋章。 そこに静かに手を触れ、目を閉じる。 (アイオリア……あなたのようにはなれない。だが――) 回想の中に浮かぶのは、己と邪武との戦い、仲間の成長、そして、自分に向けられる憐れみの視線。 蛮はその全てを己の拳に刻んできた。 (俺は、俺なりの“獅子”になる)

その瞬間だった。 ――ズゥゥン……! 大地が、低く唸るように震えた。 獅子宮の空間に、黒い瘴気がゆらめく。 「……貴様が、残された獅子か」 轟音のごとき声と共に、巨大な影が現れた。 その身は三メートルを超える異形の巨躯、全身を漆黒の岩のような装甲で覆い、 足を踏み出すたびに大地が沈む。 “地獄の魔将”モロク。 「……俺は、命じられた。ここに残る小宇宙を、すべて粉砕せよとな」 蛮は無言で構える。 言葉は要らない。 敵が前にいるなら、打ち砕くだけ。 モロクの足が動く。その一歩は、地響きを生む。 「貴様に“獅子”の名など、相応しくない」 その言葉に、蛮の拳が静かに震えた。 だが、それは怒りではない。燃え上がる意志だった。

「俺は……」 蛮が、久しく沈黙を破る。 「……俺は、“小さな獅子”でもいい。 だが、この拳だけは――誰にも、折れない」 次の瞬間、二つの巨体が衝突した。 “静かなる闘志”と“沈黙の破壊”―― 獅子宮の地で、かつてない激突が始まろうとしていた。

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