魔神士(ディーヴァ)編 幕間:七つの影、地上へ
――時空の狭間、“闇界の玉座”。 黒き空に星はなく、大地は腐敗し、空気は凍てついていた。 その中心に、巨大な漆黒の玉座が佇む。 漆黒の玉座を囲むように座すは、七人の将。 既に動き出した“双炎の魔将”アドラメレク、 そして敗北の報を持ち帰った“黒炎の魔将”ヴァラク。
「……まさか、聖闘士が今なお生き残り、我らの計画に牙を剥くとはな」 ヴァラクが忌々しげに歯を鳴らす。
「いいじゃないか。ちょっとくらい反撃してくれた方が、狩りが楽しくなる」 軽薄な口調の男の声が、影の奥から響く。 その男のシルエット―― 長身にして、両腕が異様に長く、まるで鞭のようにしなる。 “鎖の魔将”ザガン。その笑みは狂気に満ちている。
「フン。遊びたいならテメェ一人でやれ。オレは与えられた使命を果たすだけだ」 太く、重低音のような声。 その影は巨大で、両肩に鉄のような突起を持ち、地を揺るがす足音が響く。 “地獄の魔将”モロク。沈黙の巨人。
そしてもう一人。 細身で背が低い影。だが周囲の闇が、まるで生きているかのように彼の肩にまとわりついている。 “夢幻の魔将”アミー。 目の見えない少年のような姿、しかしその口元には不気味な微笑が絶えない。 「夢の中ではね。誰でも、聖闘士をも超えることができるんだよ。ふふ、皆……すぐに気づくよ」
玉座の前、七つの影が揃う。 だがその中央、一際深き闇に包まれた者――その存在だけはまだ輪郭すら見せぬ。 「……“地上の小宇宙”は、再び活性化し始めた。 ならば、我らディーヴァの“新生の儀式”を妨げぬためにも、障害は排除せねばならぬ」 アドラメレクが玉座の前で一礼する。 「命により、各地の“遺跡”を掌握する。 かつて神々が地上に遺した“小宇宙の泉”――それが目覚めれば、聖域も我らの計画を無視できぬはず」
モロクが背を向け、巨大な斧を担ぎながら沈黙のまま去っていく。 ザガンは腕をくるくると回しながら、歪んだ笑みを残し闇に溶けた。 アミーは口ずさむように言葉をつぶやきながら、影に吸い込まれて消える。 「さあ……聖闘士の小宇宙と、“悪神復活”のどちらが先に花開くか……ふふ……試してあげるよ」 ヴァラクはアドラメレクに一礼し、再び地上へと向かう。 やがて――玉座の最奥で、沈黙を保っていた第七の影が、微かに動いた。 その動きは、まるで「目覚め」を示すかのように。 地上の聖闘士たちがまだ知らぬ、真なる災厄の胎動が、静かに始まっていた。