怒りと信念が交差する、銀河衝突の刻(とき)
「うおおおおおおおおッッッ!!」
黒き翼が唸る―― 天雄星・ガルーダのアイアコスが、荒れ狂う獣の如く小宇宙を燃やす! 「鳳凰座一輝……かつての聖戦……そして今また……何故俺は、何故この俺が聖闘士に勝てぬッ‼」 彼の咆哮は、敗北を重ねた怨念、そしてなおも戦い続ける“矜持”そのもの。
「俺が冥界三巨頭の一角である限り、誰一人としてジュデッカにはたどり着かせんッッ‼」
そして―― その怒りを真っ向から受け止める、双子座の斗馬が一歩、前に出る。
「……気持ちはわかる。怒り、憎しみ、それもまた力となる。だが、それに囚われていては、何も守れはしない。」
斗馬の小宇宙が、空間すら震わせるほど高まっていく。
「俺もかつては同じだった。だが今は、違う。」
瞳に宿るのは、ただ静かな覚悟。
「俺は双子座の斗馬。守るために戦う者だ。地上を脅かすものならば、例え相手が神であろうと――俺は、倒す‼」
そして、斗馬が動く!
「アナザーディメンション‼」
一瞬でアイアコスの周囲の空間が捻じ曲がり、時空が歪む。が――
「――その程度ではッ‼」
アイアコスの小宇宙が闇を裂き、同時に叫ぶ。
「ギャラクティカ・イリュージョン‼」
異次元の圧力と幻影がぶつかり合い、空間そのものが爆ぜる! 衝撃――! 爆風――! 地割れの如き轟音が、冥界の奥深くまで響き渡った!
「クッ……ならばこれならどうだ‼」
斗馬が拳をかざす――
「幻朧魔皇拳‼」
精神を支配する恐るべき拳がアイアコスへと迫る! だが、
「フン、無駄だ‼俺は“神速”の翼を持つ者‼そんなものが、この俺に――当たるかァ‼」
一瞬で身を翻し、光速以上の加速で幻朧魔皇拳を回避!
「さあ来い、ジェミニの小僧‼かつてのサガが、カノンがそうしたように、お前もその技を使え‼ギャラクシアンエクスプロージョンをな‼」
アイアコスの挑発に、斗馬は応える。 静かに、確かに――両の拳を構える。 「ならば……受けてみよ、これが双子座の誇り、銀河をも砕く拳――」
「ギャラクシアン‼――エクスプロージョン‼‼‼」
一瞬――冥界が、銀河の閃光に包まれた。 すべてが、白く塗りつぶされる。
星々が砕ける音。空間が引き裂かれる振動。そして、轟音。
「グ、オオオオオオオオオオオッ‼‼」
アイアコスが悲鳴を上げる。かつての敗北とは明らかに異なる、圧倒的な力の奔流。 その巨体が、翼ごと冥界の岩場に叩きつけられ、闇の中に沈んだ
―― 静寂。
斗馬は拳を下ろし、深く息をつく。 「終わったか……」 燃やし尽くした小宇宙の残滓が、周囲を静かに漂う。 ――だが、アイアコスはまだ立ち上がる気配はなかった。




