ベアー檄編第1章:牙を折られし熊、ジャングルに吼ゆ
――かつての敗北が、今も脳裏をよぎる。 銀河戦争。観衆が見守るコロッセオでの第一試合。 楽勝だと思っていた少年――ペガサスの星矢に、檄は手も足も出なかった。 「……オレは……オレは弱かったのか……?」 その問いに、未だ答えは出せていない。 だがひとつだけ分かっていることがあった。 あのときの自分は、力を“使っていただけ”だった。 だからこそ檄は、己の力をもう一度見つめ直すためにここへ来た。
ブラジル・パンタナールの密林―― かつて牡牛座のアルデバランが修業した、聖域からも認められた聖なる地。 「……来てやったぞ、黄金の力の跡地ってヤツに……!」 しかし、檄を出迎えたのは静寂だけではなかった。 森の奥。 巨大な滝の裏手に、ひっそりと存在する石造の神殿。
そこにいたのは―― 「ようこそ、大熊座よ。お前も、力に溺れた者か?」 神殿の中央に座していたのは、 大地の民に伝わる“原始の闘士”を名乗る男、アレウス。 身にまとうのは聖衣ではない。 しかし、その体から発せられる小宇宙は、檄を圧するほどに荒々しく、そして“重い”。 「アルデバランの遺した地に来たということは、己が“強さ”を誤っていたと悟ったからだろう?」 「うるせぇっ! 偉そうに語るんじゃねえ! 力ってのはよ――ぶちかましてナンボだろうがッ!!」 檄は拳を振るった。 山をも砕くその破壊の一撃―― しかし、アレウスはそれをたった一指で受け止めた。
「“力とは、誇りと優しさを守るもの”。 アルデバランは、最後にそう遺した」 「……!」 檄の拳にひびが入る。だが、その目は折れていなかった。 「教えてくれよ……あんたは誰なんだ?」 「私は――アレウス・ド・トロス。 アルデバランが最後に鍛えた、ただひとりの弟子だ」 その言葉に、檄の血が沸騰する。 「だったらオレに、教えろ。 あんたが見た、アルデバランの背中ってやつをよ……!!」 そして、ふたりの修業が始まった。
太陽を浴びて拳を交わし、 激流の滝壺で足場を鍛え、 星が瞬く夜には、沈黙の中で小宇宙を燃やす。 そして数日後―― 檄は、熊のような巨体に見合わぬほど繊細な“気配”を感じ取る力を得ていた。 「ベアー・グラウンドブレイカー」 それは、大地と共鳴し、 敵の攻撃を受け流しながらも、足元から圧倒的な打撃を伝える、 新たな必殺技。 「……やっと見えたぜ。オレが……“力”ってやつに憧れた、本当の理由が」
そんな折、アレウスが空を見上げる。 「……来るか、魔神士」 森の奥から、空を裂いて現れた漆黒の炎。 それを纏った謎の男が、ブラジルの大地に降り立つ。 「我が名はヴァラク。魔神士七魔将の一角にして、“堕ちた力”を喰らう者」 檄は拳を握りしめる。 「試してやるよ……“折れねえ力”ってやつをな!」 ベアーの雄叫びが、再びジャングルに響き渡る――!