ユニコーン邪武編第2章:折れぬ角と舞い翔ける翼
アンドロメダ島に現れた影―― それは、黒衣に身を包んだ1人の男だった。 漆黒の仮面に覆われたその顔。 纏うのは、聖衣とは異なる異形の鎧。 それは禍々しい金属の意志を感じさせる、“もうひとつの神の力”。
「聖闘士よ……地に這う虫共よ。神なき地に、お前たちの役目はもうない」 名乗った名は――アドラメレク。 魔神士七魔将のひとりと称された男。 「来るぞ、邪武!」 「上等だ……オレたちの修業の成果、見せてやろうぜ!!」 敵が手をかざすと、空間が黒く歪む。 闇の中から現れるのは、影の魔獣たち―― その一体一体が、かつての聖闘士並みの小宇宙を宿していた。 「まとめてかかってこい! ユニコーンギャロップ!!」 邪武が放つ蹴りの連撃が、闇の獣を貫く。 しかし、獣の一体が影に溶けて背後へ回り込む。 「邪武、左――!」 静真が鶴のような踏み込みで舞い上がり、 「鶴翔破!」 放たれた一撃が魔獣を宙に打ち上げ、空中で霧散させる。 「お前の“角”は前しか見えない。でも、俺の“翼”は空から全てを見渡す」 「なら、お前に空を任せる。オレは真っ直ぐに、あいつの顔面ブチ抜く!」 その瞬間、ふたりの息が合う。 邪武が突撃し、真正面からアドラメレクに迫る。 防御を固めたかに見えたその時、空中から静真が回り込み、 「鶴爪舞」! 鋭い斬撃がアドラメレクの視界を遮り、邪武の拳が迫る。 「いっけええええぇぇっ!! ――ユニコーン・ギャロップブレイク!!」 それは、修行の果てに編み出した新たな必殺。 跳躍と突進を組み合わせた、疾風の蹄が唸る拳――! アドラメレクの仮面に亀裂が走り、闇の中に後退していく。 「面白い……ならば、“真なる神のしもべ”を送り込もう。 その時こそ貴様らの価値――神が測ることになる」 そう言い残し、アドラメレクは闇へと姿を消した。 重い空気が消え、島に静寂が戻る。 「……やったな」 「いや、まだ“最初の一撃”を返しただけだ」 邪武と静真は肩を並べ、そして拳を軽く合わせる。 「でもよ……オレ、少しは強くなれた気がするぜ」 邪武の言葉に、静真は小さく微笑む。 「その角が、まだ折れていないうちはな」 そして2人は、再び立ち上がる。 さらなる戦い――魔神士との、本当の戦いの幕開けが迫っていた。