新たなる光の誓い──教皇・貴鬼の決意
太陽がゆっくりと傾きはじめた頃、ギリシャ聖域の大地に再び二つの影が現れた。 その一人は、かつて“聖闘士候補生”として戦いに身を投じ、今は新たな力と決意を持って戻ってきた男──ユニコーン邪武。 そしてその傍らには、アンドロメダ島で修行を共にした仲間の一人、クレインの静真の姿があった。 「……ここが、聖域……かつての戦いの舞台……でも、今は……」
目の前に広がるのは、かつて栄華を誇った神域の廃墟。 戦いの爪痕が深く残り、朽ちかけた石像と崩れた柱が、ただ風の中に沈黙している。 「……聖闘士の象徴だったこの場所も、変わっちまったな……でも、オレたちはまだ……終わっちゃいねぇ」 そう呟く邪武の前方に、一つの力強い小宇宙が浮上する。 「よう……来たか。お前も何か感じてたんだな、この聖域に残る微かな“鼓動”を」 崩れた柱の影から、現れたのは獅子の紋章を背負う男──ライオネット蛮。 物静かな男は新たな力に目覚め、鋭く洗練された雰囲気が、その身体から滲み出ていた。 「蛮……! お前も、ここに……?」 「応よ。オレは聖域を登りきった。その中で見たんだ……アテナの最後の選択と、星矢たちの“消滅”の意味を」 重く語る蛮の言葉に、邪武と静真は息を飲む。 「それって、どういうことだ……?」
蛮は静かに、聖域の奥で自らが見たもの──アテナ神殿に残されていた衣の断片、そこから受け継いだ微かな小宇宙の残響──を語る。 「……星矢たちは、アテナと共に“人間としての選択”をした。だからこそ……今、残されたオレたちが“新たな聖闘士”として立たなきゃならねぇんだ」 重く、しかし熱のこもったその言葉に、邪武は拳を強く握りしめた。 「オレも……オレたちも、そのために来たんだ。新しい力を手に入れた。もう、誰かの背中を見てるだけじゃいられないからな」
その時、柔らかくも強大な小宇宙が、上空から降り注いだ。 「その覚悟、確かに受け取ったよ──邪武、蛮、そして君も……クレインの静真くん」 音もなく降り立ったのは、紫の法衣に身を包んだ青年。 その額には、牡羊の角を模した飾り。かつて聖衣の修復を担い、聖域の知恵を司った黄金聖闘士・牡羊座のムウの弟子にして、今はその全てを継ぐ男── **アリエスの貴鬼**であった。 「僕は今、ムウ様から全てを継いだ者として、この聖域に残されたものを守り、そして“未来”へ繋げる役目を持っている。──君たちに、頼みがあるんだ」 風が止み、空気が張り詰める。 聖域の“再生”が、今ここから始まろうとしていた。