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闇に潜む影 ― 魔神士(ディーヴァ)の集い

 ヒマラヤ山脈、エベレスト―― 吹き荒れる嵐の中、ザガンの姿はすでに無く、那智は静かに雪に包まれていた。 満身創痍の身体でなお、狼は眠るように息をしている。 「……まだ終わりじゃねえ……ここからだ……」 微かに漏れる那智の言葉は、再び立ち上がる決意そのものだった。

だがそのころ―― 地の底、魔神士ディーヴァの拠点、カース・スローン。 ザガンはその玉座の間へと戻っていた。 「クソッ……あの狼野郎……俺の“アンリミテッド・スネイクチェーン”を……!」 ザガンの肩は怒りに震え、顔は歪み、声は呪詛のように響く。 「絶対に赦さん……あいつだけは……! 那智ィィィ!!」

その激情を前にしても、玉座に悠然と座る男――アドラメレクは微動だにしない。

「今は時を待て、ザガン……その怒り、焦りは力を鈍らせるだけ。戦局を制すには“駒”が足りぬ」 「駒だと……!?」 「――だが、我らには“切り札”がある。あらゆる神に背を向け、聖闘士に絶望した最強の聖者」

そのとき、空間が歪んだ。 音もなく、光もなく。 ただ、沈黙そのものが実体化したかのような威圧とともに、扉のない空間に一つの“穴”が開いた。 次の瞬間――そこから姿を現した男に、魔将たちの顔が一瞬にして凍りついた。 「なっ……!? まさか――」 「いや、嘘だろ……!? あれは……」 その男の足元には蓮の花が咲き乱れ、金色の髪が静かに揺れている。 閉じた瞼の奥に宇宙を宿すような気配。 漂うのは静寂と、圧倒的な威圧感。 アドラメレクだけが静かに、微笑を浮かべる。 「ようこそ……第六魔将。いや、“最強の聖闘士”と呼ばれた――乙女座バルゴのシャカよ」

「……な、何故だ!?」 ザガンが声を絞り出す。「あいつは……! 神に最も近い男と謳われた、アテナの守護者だったはずだ!」 シャカはゆっくりと目を開く――いや、半眼のまま語る。 「最も神に近いがゆえに、私は知ってしまった……この宇宙の真理。 アテナとて、神にすぎぬ。神々は常に争い、正義を振りかざし、地上に絶えぬ戦乱をもたらす」 「お前……それでも、シャカか!?」 ヴァラクが思わず声を荒げる。 シャカは微かに笑みを浮かべる。 「神をも捨てよ。正義をも捨てよ。私は私の信ずる道を往く。 ……そして、それがこの闇であるのなら、私は喜んで歩もう――魔神士ディーヴァとして」 沈黙が玉座の間を支配する。 最強の聖闘士の裏切り。 それは、全ての聖闘士にとっての希望の象徴の喪失を意味していた―― アドラメレクが静かに宣言する。 「これで六魔将が揃った。残るは最後の一人……“王”の覚醒だ。 そしてその時こそ、地上に“真なる神罰”が下される」 新たなる混沌の渦が、確かに、音を立てて動き始めていた――。


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