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ウルフ那智編第1章:ウルフの影、そして再起の一歩

 彼の名は――那智なち。 かつて銀河戦争の舞台で、その名を一度でも高らかに呼ばれることはなかった。 フェニックス一輝。 その圧倒的な力の前に、ウルフの牙は折られた。 肉体は砕かれ、精神までも深くズタズタに砕かれた敗北。あの瞬間から、彼の時間は止まっていた。 それでも、那智は死ななかった。 地に伏しながらも、聖闘士であることを捨てなかった。 「俺は……まだ、終わっていない」


 修業地・アルプスの狼の谷。 全身を包帯に巻き、那智はかつて修業した山岳地帯へ戻った。 雪を踏みしめ、呼吸を整え、ただ黙々と己の肉体と心を鍛え直す。 しかし――限界はある。 己が力の“枠”を超える術を、彼は知らなかった。 ハーデス編での復帰も、その事実を突きつけるものだった。 幾度となく繰り返される幻影。自分より強い敵、自分の叫び、自分の敗北。 (――このままじゃ、星矢たちの背中は遠のく一方だ) 那智は苦しんでいた。 誇りを守るためではない。誰かに勝ちたいわけでもない。 ただ――自分を、自分で認めたいのだ。 そのためには、己の殻を破る術が必要だった。 そして那智は、心の奥にずっとくすぶっていたある存在を思い出す。 (……鷲座の魔鈴)


秘境・神々の絶壁 ― 魔鈴のもとへ


 伝説の女性白銀聖闘士、鷲座の魔鈴。 ペガサス星矢を育て上げた厳しき教練者。 聖戦後の今、彼女は人里離れた断崖の修業地に身を隠していた。 那智がその地を訪れたとき、魔鈴は既に彼の訪問を察していたかのように、 山頂で仮面の下の鋭い眼差しを彼に向けた。 「……狼が道を求めてきたのか」 那智は跪き、迷いを押し殺し、ただ一言―― 「弟子にしてほしい。俺に、力をください」 風が吹き荒れる崖の上。 魔鈴はしばらく沈黙し、そして冷たく告げた。 「私はもう聖闘士ではない。教える義理もない。だが―― それでも“這い上がる”覚悟があるなら……見せてみな。狼の牙がまだあるなら」 その言葉に、那智は拳を握り締める。 (星矢、お前が追い続けた背中。俺も、一歩でも近づいてみせる) こうして、かつて敗れた男――ウルフ那智の新たなる戦いが始まる。 今度こそ、誇りある牙を取り戻すために。

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