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毒味女と配膳男の叶わぬ恋

作者: うずらの卵。

シールド、私はあなたの最後の願いを叶える事が出来そうも有りません。

ごめんなさい。


「今日からアリーナ、あなたの仕事は毒味です、伯爵様達が召し上がるご飯の毒味をして頂きます」

「かしこまりました、宜しくお願い致します」

私の家は貧乏だった、幼い頃に父が亡くなり母は病弱で、妹と弟はまだ幼く食べる物もなく毎日お腹を空かせていたのだ。

そんな時に伯爵家から毒味の仕事の話が来て、私は家族を支える為にこの仕事を引き受けた。

しかし、毒味の仕事は命に関わる仕事だ。

いつ死んでもおかしくないのだ。

その代わりに貰えるお金もかなり高額だった。

もし、このまま仕事をせずにいたらいつか家族全員路頭に迷うのは目に見えていたから、この話が来た時は飛び付いたのだ。

でも、まさかこんな事になるなんて…。

朝昼夜と毒味の仕事は毎日続いた。

とても豪華な食事で今まで食べた事がない料理が並んだ。

でも、この中にいつ毒が混入されるか解らないのだ。

この、伯爵家は悪い噂が有り命を常に狙われているそうだ。

そして、毎回食事を運んで来てくれる配膳係の男がシールドだった。

初めて会った時は何て感じの悪い無愛想な男だうと思ってた。

年齢は私と同じ17歳位に見えた。

そして、食事を無言で置いてそのまま行ってしまうのだ。

最初は食べるのが怖かった、もしこの食事に毒が混入されていたら死んでしまうからだ。

でも、もし私が死んでも家族には生活が保証されるという契約だったので死を覚悟して一口食べたのだ。

毎回慣れる事はなく最初の一口目を飲み込むのが恐怖だけど自分を奮い立たせ食べていた。

そして、数ヶ月が経ったが私はまだ生きていた。

その頃からシールドとは段々打ち解けて話をするようになったのだ。

シールドと話をして行く内に私は段々シールドに引かれて行った。

いつ毒で死ぬか解らない命だからこそ、シールドとの楽しい時間を大切にしたいと思うようになったのだ。

でも、この気持ちは決してシールドには知られてはならないと思った。

そんなある日の晩御飯の毒味の時間、いつもはシールドがご飯を運んで来るのに、今日は違う人が運んで来たのだ。

今までこんな事は一度もなかったので、

私は聞いて見た。「今日はシールドはお休みですか?」と、するとその人は悲しげに目をそらし言った。

「シールドは亡くなりました」と。

「な、何故いきなり亡くなったのですか?」と聞くとその人は私に手紙と小包を渡して来たのだ。

「これはシールドの部屋に有りました。あなた宛です」と言いそのまま部屋から出て行った。

私は震える手で手紙を開いた。


アリーナへ。

この手紙を読んでいるという事は俺はもうこの世にいないという事だね。

実は俺は以前付き合っていた人が居たんだ。

その人はアリーナの前に毒味の仕事をしていたんだ。

彼女に毒味の仕事を辞めて欲しいと頼んだけど、彼女も家族の為に辞められなかったんだ。

俺は力になれなくて、結局彼女は毒で亡くなってしまったんだ。

だから、初めてアリーナに会った時は無愛想な態度を取ってしまったんだ。

もう、同じ思いをしたくなかったから。

でも段々アリーナに恋をしてしまった。

好きな人を又失うのは辛いんだ。

だから自分勝手だと怒るかもしれないけど、

アリーナが毒味をする前に俺が毒味をしていたんだ。

本当にごめん。アリーナには素敵な男性を見つけて幸せになって欲しい。

こんな仕事を辞めて欲しい。

今まで俺が貯めて来たお金を少しだけど残して置くね。生活の足しにして下さい。

シールド。


私は渡された小包を開けると、かなりのお金が入っていたのだ。

私は思いっきり泣いた、手紙を握りしめて。

そして、毒味の仕事を辞めて家族の元に帰り、

町のパン屋で雇って貰える事になった。

その後アリーナは生涯独身で通した。

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