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過去にいる宝物

作者: 成人未熟者

「せんせいー!かけるくんが僕の本とったぁーぁ!」

「はぁ?俺の方が先にこの本取ってたし!」

「はいはい」

小学生はくだらないことでよく喧嘩をする。

一人は泣きながら僕にしがみつき

もう一人はそっぽを向きながら横目で睨む。

「もーかけるくんなんて知らない!」

「はぁ?はるなんて知らん!こっちのセリフだ」

僕から見たこの子たちは

とても仲が良く、いつも二人で遊んでいる

いわゆる親友に見えた。


僕と君も側から見たらこんなふうに見えていたのだろうか….

別にずっと遊んでいたわけでもクラスがずっと一緒、部活が同じだったとかでもなくただ隣にずっといた


『そんな人』



小さい頃は良く親同士の仲がよかったり家が近かったりしただけで

その子供たちは自然と仲良くなっていくものだった。

当時、君とはそんな共通点しかなかった。


——小学生

君とは6年間ずっと同じクラスで

お互い何か熱中するものがあって

何者かになりたい夢を持っていた。

君との共通点が増えた。


——中学生

クラスは離れ、部活も違くて

前より共通点が減った。


だけど、お互い恥ずかしげなく

「将来お互い別々の道で有名人になってさ、テレビとかで共演できたらいいね」

と語り合ったり。

部活は違えど

グラウンドの半分側には君がいて

部活が終わると一緒に帰ったり外周が被った時は

勝てるわけもないのに、必死に君の大きな背中を追ったり。

根本的には前と何も変わっていなかった。


「お前あれファールだから!」

「は?止められてないしファールじゃないだろ」

「いや、俺から見てもファールだわ」

「ファールしなきゃ止められなかったんだよ」

「いや」

「さっきあいつもファールだったって言ってたよ」

中学2年、僕は部活終わりに部員と言い合いをしていた。

僕がファールをした、していないのくだらない言い合いだったが

プライドの高い両者は折れることなく5分ほど言い合いは続いた。


そして中学生ということもあって僕らはすぐに手を上げた。

僕は部活でハブられることが多々あって、言い合いから喧嘩に変わった

争いでは僕対その他だった。

その騒ぎを聞いた顧問は近寄ってきて

『何をしてる』

とだけ言って喧嘩を止めることなくただその場に佇んでいた。

この時顧問は、騒ぎにしたくなかったのだろうか。


そして僕は逃げるかのように校舎を後にした。

「おいどした」

校門で待っていた君が僕に問いかける。

その声を聞いた瞬間

自分一人ではなんもできなかった虚しさと、今まで我慢していた気持ちが溢れ出し僕は涙をこぼした。

「あいつらが、、まじ..うざい」

泣いていたこともあって感情のままに言葉を吐いた。

すると君はそれ以上聞かずに、僕の肩に手をのせ

「あいつらが悪い」

とだけ言った。


僕が認めれば、なんの問題にならなかったくだらない喧嘩。

隣を歩く君は心の底からなんでも相談でき

小さい頃から一緒にいて

誰よりも多く喧嘩をした


ただ


それだけの


『そんな人』


——中学3年

部活も引退し、君はスポーツ推薦で進路が決まっていたため

同じクラスの人とたくさん遊ぶようになった。

一方僕は、頭も悪く一歩先をいく君に追いつこうと

必死だった。

何をしても君に勝てた試しはない。

その気持ちが裏目に出たのか

中学生活も残りわずかとなった日のこと。


なんで喧嘩をしたのか忘れたが、僕らは下校中掴み合いの喧嘩をしていた。

多分初めは遊び感覚でやっていたと思う

けどそれは次第にエスカレートして僕を雪山に押し付ける君に腹を立てた僕は

君の急所を思いっきり蹴った。

そのあと君は何も言わずに、一人その場から立ち去り帰っていたった。

その背中は大きく憧れだったはずなのにどこか寂しげで

見ていると自分の中の線が切れるような感じがした。


それから何度か謝ろうと思ったが

君とは喧嘩をしても次の日には普通に話していた記憶しかなかったので

なんて謝ればいいのか

いつもみたいにふざけた感じでノリで謝れば..

それともちゃんと謝ったほうがいいのか..

仲直りの仕方がわからなかった。


そして僕は最悪なほう

ふざけた感じ、ノリで謝ることにした

多分僕は謝ることから逃げたのだと思う。


そして当然のように許してはくれず

それから卒業式まで

「まだ怒ってんのかよー」

などと言い続けた。


——高校生

僕は君と同じ高校だった。

君は進学コースで僕は総合コース。

廊下ですれ違っても一切話さず高校を卒業した。


——時はすぎて20歳

君と話さなくなって色々なことがあった。

高校3年の時、できた彼女に浮気され

人のこと信じれなくなって

自分の幼稚な性格を嫌いなって

通っていた専門学校が合わず辞めたくなって

それら全部

誰かに相談したりただ話を聞いて欲しかった。

けど周りに心から相談できる相手がいなくて..

その時初めて

君が失ってはいけなかった

『親友』

だったと気づいた。 



それから

心も少しは大人になって

自分勝手な僕の隣にずっといてくれた元親友の大切さ

僕は支えてもらってばっかだったのに

元親友が辛い時支えていなかったこと

終いには僕自身が元親友を傷つけたこと


それら全て遅すぎる反省をしていた。


——そして現在

もう元親友とはこの先話すことも

前の関係に戻ることも決してないと思う。


許してとか仲直りとか前みたいに戻ろうとか

中学で語った夢の続きをだなんて

そんなこと思っていない

思ってはいけないいから


でも

もし

俺があの時語った夢のように

友人として自慢できるような人になれたとしたら

......


「はるくん..かけるくん」

「君たちは困った時に、力を貸しあって目と目でものが言えて、言いたいことが言えて、小さい出来事だったとしても大人になってもきっと忘れはしない….」

「喧嘩をするなとは言わない。喧嘩は子供の特権だから..」

「嫌いなら無理に関わるなとは言わないよ。けど何億人っている世界で出会えた奇跡を手放してはいけないよ」

「せんせい何言ってんの..」

「なんか今日のせんせいへん」

「行こハル」

「うん」


今まで生きてきた時間の半分以上一緒だった人

なんでも相談できた人

泣いてる時に励ましてくれた人

きっと過去の僕は恵まれていたのだろう。

だから過去を見て戻りたいと夢をみる

それら全てが叶わない本当の夢。


あなたにとって元親友はどんな人ですかと聞かれたなら

きっとこう答えるだろう


「元親友は..僕にとって」


「[過去にいる宝物]です」





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