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第1話 とりあえず公園で話そうか

勇者の前に現れた百八将の1人シュルト!まあアホそうだしなんとかなるだろう!

今日も勇者アレンは口先だけで相手を翻弄していくのであった。

「ふははははは!貴様が勇者アレンか!ここで合ったが百年目!魔王軍、百八将が1人…!フェイセル・シュルトが貴様を打ち取ってやろう!!」


ヤギのような角を生やした長髪イケメンが俺の前に立ちはだかる。こんなんがあと107体もいるのかよ。魔王軍は人材豊富でいいな…!


「フィールド魔法発動!フィールド【公園】」


とりあえず俺は唯一使える魔法を使う。ただただ自分と対象の相手に指定したフィールドにいるような錯覚を与えるもので、特に攻撃力もないし効果範囲も半径50m程しかない単純な術なのであまり魔力に恵まれてない俺でも、気軽に使用できる便利な魔法だ。


「な、なんだここは?…公園!?」


フェイセル・シュルトが目を白黒させてる。さぁ気乗りはしないが今回も始めるとしようか。


「立ち話もなんだし座って話さないか?」


「は…?え、あ、あぁ…?」


渋々と言った感じでシュルトはベンチに座る。俺も少し間を空けて隣に座るとしよう。


「いや、なんでこん…」


「そういえば、名前はなんて呼んだらいいかな?」


俺はすかさず牽制を入れる。とりあえずこっちのペースに引きずり込むのが大切だ。


「へ…?あ、あぁ。シュルトでもフェイセルでも好きに呼ぶがいい。」


魔物の名前も名、性の順番だしここは名前の方で呼んでおく。その方が打ち解けやすいしな。


「じゃあシュルトって呼ぶな!俺はアレンだよろしく!」


「あ、ああ…」


俺が差し出した手を戸惑いながらシュルトは握り返してくる。案外今回はちょろいかもな。


「いや、これはなんだ!?我はお前を倒しにきたのだぞ!」


シュルトは我に返ったように言い放つ。


「まぁまぁ別に命乞いをするわけじゃないし、シュルトは俺よりも見るからに強そうだからな…。と言うわけで俺が倒されて死ぬ前に少しだけ話に付き合ってくれよ?」


「ふむ、まあそれも一興か…。」


よし、とりあえず俺の術中に掛かったな!

今の少ないやり取りの中で俺はいくうかの会話テクニックを入れていたッ!


まずは名前呼び!人は誰しも自分の名前を呼ばれることに本能的な喜びを感じるものなのだ。


次に握手!肌と肌が触れ合うことで脳内から幸福ホルモンが分泌される!


さらにコイツはナルシストっぽいからな!とりあえず強そうだと誉めておく!


最後に"命乞いをしない代わりに少し話をしてくれないか"といった感じで、大きい要求から小さい要求をすることによって、シュルトの精神的なガードを余すことなく下げることに成功したと言っていいだろう!因みにこれらのテクニックは王国での社畜時代に培った経験を基にしているッ!


「ところでシュルトって百八将なんだろ?すごいよなあ!」


とりあえず序盤はヨイショしまくって気分よくなって貰おう。


「ふっ…まあ農民からここまで上り詰めたのは魔王軍では我くらいのものだろうな!」


へー魔物も農耕とか行ってるんだな。取り敢えず"共感"しておくか。


「へー!シュルトも農民出なんだな!実は俺もそうなんだよ。」


もちろん真っ赤な嘘である。


「そうか、お互いの苦労してるな。」


よしよし上手く"同調"出来たぞ!いい調子だ!


「いや、でも人間側の農民はともかく魔族の農民は大変だって聞くぞ?よっぱど努力したんじゃないか?」


魔族の農民がどんな扱いを受けてるかは知らないが、いつの時代も農民は大変なものだろう。


「分かるか?そうなのだ、親は実家の農業を継げとうるさいし、軍に入ったら田舎者と言われるしで散々だったぞ!?」


よしよし、コイツも普段たまっていたのだろうしな、狙い通り愚痴を言い始めた。どんどん喋らせよう。


「シュルトはすごいなあ、俺には想像もつかないくらい努力したんだろうな。」


「あぁ、我をバカにしてきた奴を実力で黙らせてここまで上り詰めてきたのだ!勇者であるおまえを討ち取れば十六魔人を飛び越えて四天王まで二階級特進だ。」


「気が合うな俺も殉職したら二階級特進だから似たようなもんだ。」


「「ふははははは」」


軽い冗談を交えながら俺たちは笑い合う。


「ははは、シュルトと話していると楽しいな!そうだ喉渇いただろ?これよかったら飲めよ!」


俺はヒョイとシュルトに飲み物の入った缶を投げ渡す。


「ふっ…気が利くじゃないか…。ふむ、癖のある味だが旨いな。」


「ああ!うちの王国の特産品なんだ!」


プハーッと飲み干したシュルトはベンチから立ち上がり


「では、名残惜しいが…これも運命だ。戦うとしよう。」


「そうだな…出来るだけひと思いにやってくれよ?苦しいのはごめんだ。」


「任せておけ…出来るだけ楽に、そして傷が分からぬよう綺麗に葬ってやる。」


「ありがとよ、嫁も綺麗な亡骸の方が悲しまないだろうしな助かるぜ。」


嫁なんていないけどな。


「では、さらばだ。初めて出来た人間の友よ…。」


お、友達だと思ってくれたらしい、ありがたいねえ。

俺は両手を広げ天を仰ぐ…もうそろそろかな?


「うぐっ…」


突然シュルトは剣を落とし苦しみ始めた。

よし、効いたな!


「ぐっ、おま、え…我に、なにを、した、、!?」


「何って、ちょいと飲み物に超強力な痺れ薬を混ぜただけだけど?いけないな~シュルト君~敵から貰ったものを疑いもせず簡単に飲んじゃうなんて~」


そう、先ほどシュルトに渡した缶には王国の科学者が精魂を掛けて造り上げた対魔族用の痺れ薬が入っていたのだ!効果は当社比20倍!


「き、さま…それ、でも勇者…か、?」


シュルトはどうすることも出来ないといった感じで地面に倒れこむ。


「うるせーな!こちらと魔力も筋力も人並みのほぼ一般人だぞ!?真面目にやってられるか!勇者なんて!」


大体、勇者が官職のひとつっておかしいだろ!?次長の次が勇者とか!じゃあ部長はみんな英雄じゃねえか!!


「ぐっ、こ、ころせ…」


「んな血生臭いことするかよ…おまえらの価値観で話すなっつーの。」


倒れているシュルトが顔を歪ませながらもよく分からないと言ったような表情をしている。痺れ薬が回ってきてもう喋ることも出来ないのだろう。


「王国は人道的だからな。魔族更正プログラムっていう名の洗の…。教育を受けさせられた後、王国で働いて貰うことになるだろう。おまえはイケメンだしモデルとかいいんじゃないか?最近はポリコレで王国もうるさいから魔族差別もなく働きやすいとは思うぞ?…ってもう聞こえてないか。」


見るとシュルトは泡を吹いて気絶していた。効果強すぎませんこの痺れ薬?


「さて、帰るとするか。」


コイツと戦う前に回収業者には電話をしといたしもうじき到着するだろう。

こうして世界はまた1つ平和になったのであった。


                つづく

聞くところによるとシュルトはあれから更正プログラムを受けて王国で美容室をやってるようだ。今度暇があったら寄ってやろう。

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