第九十六話 過去からのメッセージ3
次の予言された終わりは、既に始まっていた。
空を見上げれば、拡散しきれなかった雨雲の残りだろうか? それにしては妙に黒く重そうな雲が幾つも漂っている。
そしてその雲の大きさから発生したとは思えないような稲光が轟渡り、街中へと突き刺さり始めた。
雷が落ちた所の周辺にある自販機や電灯、公共の電子機器類が火を噴いて破損した。
「落雷が異常発生しています! 測定上起こるはずがないのですが、突如として雷が発生し全ての地域で被害を齎しています!」
「魔法の可能性は?」
「魔力変動も計測できません。未知の魔法が開発された可能性もありますが、我々の知る限りの範囲では計測に引っかかりませんでした!」
「なら、雷自体の対処を行う。先程まで使っていたアース回路があるだろう。紫外線誘導で引きこめないか?」
「試してみます!」
局員がパソコンを操作すると、地上から細く薄い色の光線が投影される。
一見頼りなく見える細い光線に雷が触れると、雷は急に向きを変え、投影元にある避雷針へと落下、アース回路を通して大地に流されていった。ただの紫外線ではない。これも魔法技術を取り入れたもので、光の中に呪的ラインが走っており、あらゆる力の流れを変えてしまうものだ。
次々と雷は紫外線の光に絡めとられ、街への被害を押さえていく。
これで対応できたか? この程度で? 中将の心中に不安の影がよぎった。
「……駄目です! 落雷の量が多過ぎてアース回路がもう限界です!」
報告を受けてやはりと落胆する。しかし、万策が尽きた訳ではない。
「雷霧散杖を展開せよ!」
「あ、あれですか? 了解しました!」
雷霧散杖……ほぼ魔法部門の独力で開発されたものだ。なんでも「ロマンを理解する奴が趣味で作った」だとか。魔法部門の事を信頼していない訳ではないが、門外漢の中将にその理論は理解し辛く、不安であるのだ。しかしこの場は頼るしかない。
避雷針の脇に水晶を頂点に飾った、いわば巨大な魔法使いの杖がせり上がってきた。今時、魔法を使うものでも魔法の杖を持っている者など居ないだろうに、何故に杖の形をしているのか。中将はこめかみを摘まむ。
「話では、避雷針と同じように使えば良いのだったな?」
「はい。雷を吸収し水晶の中で無害な水蒸気に変換し、放出するそうです」
窓から見える杖の一つに降り注ぐ全ての雷が吸い込まれたのが見えた。まずは説明通りだ。
雷を吸収した水晶の内部に、エネルギー流が渦巻いているのが見える。それが徐々に霞ががってきた。
杖の下部に水蒸気が吹き出す。猛烈な勢いの水蒸気は周囲の小物を吹き飛ばし、折角乾いて来ていた周囲を再び水浸しに変えてしまう。
「水蒸気になるとは聞いていたが……それはそれで被害が出てないか?」
「ま、まぁあの杖が出ている周辺は全て避難が済んでいるので、人的被害が無いのが救いでしょうか……」
「杖の周囲に誰も近づかない様に通達しておけ」
「了解しました!」
これで予言されていた轟雷に対する対応は大丈夫だ。
しかし破滅の波はその手を緩めない。
「む……?」
「……これは?」
デスクの上に置かれたペンが微かに揺れている。総大将の所だけでない。中将や局員全ての所で揺れていた。
予告されていた地震だ! そう考えた瞬間に総司令が叫ぶ。
「全員、対ショック体勢を取れ! 地震が来るぞ!」
「全員安全確保!」
次の瞬間、激しい揺れが全てを襲った。
この作戦指令室は衝撃を受けたとしても、倒れて誰かが下敷きになってしまうような物は無い。精々、私物が落ちてくるだけだ。
それにこの棟、とういうか街全てが何重もの免振機能を備えている。揺れは受けるかもしれないが、一定以上の震度には達しないはず……それなのに、これだけの揺れを受けるとは、異常な震度と言える。
「震源を確認せよ!」
未だに揺れているが、なんとか落ち着きを取り戻し、中将が指示を飛ばす。局員は指示に従って、いやそれ以上の地震に対して各所に連絡を発信すべく、席に着いた。
そして中将に報告が帰ってくる。
「確認出来ました。推定マグニチュード10以上、震源は……うそ!?」
「どうした?」
「失礼しました。計測した震源はこの地点……というか全域全ての地下100mです!」
「ありえんだろ!? そんな所に地震の要因となるような物は何も無いし、地下が走っている所すらあるのだぞ。陥没なら兎も角、地震なんて発生しようが無い」
「ですが、計測上はそう指し示しています」
中将は考える。
計測器の故障か? これまでの異常気象で計測器が壊れたと考える事は出来る……出来るが、そうでは無い気がする。計測通りの事が起こっているのだ。
考えれば、どの異常気象も通常では考えられない状況で考えられない規模が発生している。であればこれもそうなのだろう。
この異常気象の発生は予言通りだ。起きる事は知ることが出来ているが、その要因は判らない。
自然現象出ないのなら……神か!? いや、噂に聞いた世界を形作る者か?
中将の考えを裏付けるように、目の前の海岸線に火柱が上がった。
地震への対応に奔走している中、取って付けたかのように、火山が隆起し吹き上がってきたのだ。




