第九十三話 作戦指令室
廃都フィーディングの中央、作戦指令室らしき部屋の調査が黙々と進められている。
今のところは魔物の襲撃等トラブルも無く平和だ。
今は役目の無い私もあれこれと覗いてみるが、結果は芳しくない。キーボードらしきものを発見して、指先でポンポンとキーを叩いてみるが当然反応が無い。次に近くの机に転がっていたファイルを開いてみるが、文字が掠れてまともに読むことすら難しい。読めても単語程度で、その意図を掴むことが叶わなかった。
「こりゃ、ハズレかな?」
「アーリィから見てもそうなのか。俺はこれが何なのかサッパリだ」
今の世界の人でパソコンとかを知っているのは難しいというより知らなくて当たり前だ。ルシードが物を知らないという訳じゃないよ。
と、調査していた研究員から全員に声が掛けられる。
「この部屋の電気を一時的にですが復旧できそうです。今から通電しますので、機器から手を離してください。漏電の恐れもあるので注意を」
こんな劣化した電気設備に通電したら、中々激しい結果になりそう。注意されてたけど漏電の可能性が高いし、電子機器が弾けて出火するかも。ちょっと離れておこっと。
そして電気が投入される。意外にも出火などのトラブルは起きず、部屋全体から電子機器が駆動する静かな音が響いた。
モニタに何やら文字が表示されると、皆がその視線を向けた。
「これは……パスコードの入力を促しているのか?」
モニタを覗き込んだレン代表が少し困った表情を浮かべて固まる。
それはそうだろう。まず、この世界でパスコードに慣れている人はそう居ない。レン代表ならそれなりに知識があると思うが、それでも地球程慣れ親しんだものでは無いだろう。
次に、この状況でパスコードと言われても思い浮かぶものが何もない。ヒントになりそうなものが何もないのだ。
「このパスコードに関する情報が無いか、探してください」
レン代表の指示で一斉に探し始めるが、容易には見つかりそうもの無い。色々と書かれた紙が転がっているが劣化が激しく、文字の欠落が多いうえに、崩れない様におっかな吃驚触るしかない。なのでパスコード探しは難航を極めた。
私も見ているだけというのは暇なので参加しているのだけど、サッパリだなぁ。
「ん~……ねえベクト」
「ん?」
「ベクトならパスコード判ったりしない? ベクトのスキルとかでこう、ちゃちゃっと」
「……やってみる」
ベクトは研究員の警護がお仕事だけど、ちょっと手伝ってもらおう。
ベクトは書類なんかは触らず、キーボードやモニタの周りにある紙片をなんか眺めている。何かあるのだろうか?
「……多分判った」
「え!? マジで?」
「うん。マジで」
なんで紙片をちらちら眺めただけでパスコードが判ったのだろうか? まいっか。試すだけ試してみよう。
「レン代表!」
「何かなアーリィ君」
「ベクトがパスコードが判ったかもしれないって。試してみて良いですか?」
「良いでしょう。試してみてください」
と、軽く許可が出たのでベクトに促してみる。
ベクトはキーボードを軽く叩くと、モニタが変わり入力受付画面へと変わった。驚いたことに一発でパスコードを当てたのだ。
「ベクト。スキルを使ったと言っても、あれ分かる事しか判らないんでしょ? どうやって判ったの?」
「いつの時代も、パスコードを手元に書いて置いている人が居たって事。スキルは使ってないわ」
ははは。ネタが判ればしょうもない事だったのね。
で、表示された画面だけどこれはどういったものだろうか? アイコンなんかは表示されずに入力を促されているだけだ。ちょこっと聞いたのを思い出したがコマンドで操作するタイプの奴だと思う……が、そうなるとどう操作すれば良いのかサッパリだ。レン代表もキーボードで叩いたものがモニタに表示されることは判ったが、そこからどうすれば良いのか悩んでいる。
「ベクえもん、どうにかならない?」
「私はそこまで便利じゃないよ。結果が判るだけだから。ちょっと良いかしら?」
レン代表からベクトへキーボードが明け渡される。
ベクトが何やらコマンドを打ち込む度に、良く判らない文字がずらずらと表示されては流れていった。
「すっごい! 意味は解らないけどやるじゃないベクト」
「私のスキルは、本来こういう所で使うものだから……ところで、なにやら私達というか、これを見た人に宛てた映像メッセージがあるみたいだけど?」
「……再生できますか?」
レン代表が興味を持ったようだ。これを見た人に宛てたメッセージ? なんんだろうか?
「じゃ、再生します」
ベクトがコマンドを叩くと、モニタが大きく拡張され画像が再生され始めた。私達に宛てた当時の人の伝えたいことが。




