第九十話 お久しぶりな人
あれから話はトントン拍子に進んでいった。
私の役目はスキルを利用して大人数……とは言っても二~三十数人程度の予定だが、廃都となったフィーディングの中央棟に上空から運ぶことと、戦利品を含めた帰還。
その方法は至って単純で、レン代表による試験でも思った以上に簡単にイケたので、作戦の準備が走ったのだ。
勿論ジゼルさんにも話が通っており、ジゼルさんはこの街から動けないので、信頼している他の貴族一人と、護衛としてギルドからライロンさんと他数名が参加することになった。
ルシードとベクト、そして私がヒョーベイからの参加だ。
そろそろ慣れてきた長旅の準備をし、レン代表から連絡が来るまではヒョーベイで待機。
レン代表から招待のお手紙が来たらしいので、早速出発だ。
このグループの代表は貴族の人が務める事になる。ま、街の貴族で偉い人だからね。
「私はカラム・ロセッティという。旅行経験は何度かあるが、君達から見れば素人同然だろう。交渉や責任問題は任せてくれていい。護衛は宜しく頼む」
ジゼルさん派閥の人で、能力は無いが性格の問題も無いので、責任を投げてやってくれていいとジゼルさんの談だ。
中肉背の痩せ型。顔立ちはそこそこ整っているが、ちょっと神経質そうなのが如何にもって感じだね。能力は無いと言いつつも、機械関係は多少心得があるので、結構手が掛からない。だから今回派遣されたのだろう。
「しっかし、アーリィも成長したもんだな。ギルドに入ろうとした時から成長したもんだ」
「あはは。あの時から色々経験しましたからね。今、あの時の試験やったら、結果は違うかもしれませんよ?」
「ほう、言うな。ならこれが終わった後、機会を見て相手してやるぜ」
「じゃ、その時は宜しく!」
ライロンさんはあの時から全然変わらない。髭もじゃの筋肉質、背丈が低いというドワーフかと思う外見は健在だ。
私としては冒険装備のライロンさんを見るのは初めてなので、着込んで大荷物を背負う姿がちょっと新鮮。
ライロンさんは基本カラムさんの護衛についてくれるので、お陰で私達は自由行動できるのだ。
街ヒョーベイと街トースアース間は、最近行き来が多かったせいか盗賊も魔物も全く出なかった。前に私達が通った時に軒並みボコったからなぁ。
とりあえず今回は楽が出来たよ。特にトラブルも無くトースアースに到着。
街トースアースは以前の事件の面影を……残してはいなかった。表面的には。
壁は綺麗に修繕されており、凄惨な事件があったとはとても思えないだろう。だが、その壁の向こう。特にアース教団施設のエリアは完全に見えない様になっている。そのエリアへ入る門は以前の倍の門番で封鎖されており、誰もそこを行き来していない。ブレンダン代表や生き残った信者の人達は元気にやっているだろうか?
レン代表は教団を支援していたようだから、少なくとも酷い扱いにはなってないと思うけど、ちょっと心配だ。折を見て様子を見る事にしよう。
案内の人に連れられてやって来たのは、私達も以前に来たレン代表の執務室がある棟だ。今回は二階の大講堂に通されることとなった。
大講堂に入ると、私達が最後だったようでトースアースの調査団の人達が色々と機材をチェックしている。機材は現地調査で使うものだろう。忘れ物があっても取りに帰る事は簡単には出来ないので、念入りに宜しくお願いしたい。
そしてもう一つの集団が居た。あの鎧には見覚えがあるぞ。
「アーリィさん! お久しぶりです!」
聞き覚えのある声が掛けられた。
「あら、アレクシス様!? お久しぶりです」
私に合えて破談のアレクシス様。ということは、この集団はやっぱりキョウスティンの騎士団の方々か。
「キョウスティンも、レン代表の計画に参加されるのですか?」
「ええ。私達は主に警護を担当することになります。万が一、魔獣と接敵し、回避できない場合は私が対応することになります」
「えっと……良いんですか?」
思わず小声で聞いてしまう。アレクシス様のスキル『最強』は魔獣ですら倒せる強力なスキルだが、使用に取り返しの付かない回数制限があり、おいそれとは使えないはずだ。
「ええ。まだ大丈夫です。マーク様とも相談していますので、一・二回戦うのは織り込み済みですから、頼っていただいて大丈夫です」
「そうでしたか。じゃ、頼りにしてますね」
「はい! 頼りにしてください!」
使う事を見越しているとの事がだ、スキルを使わないに越したことは無いだろう。なるべく彼がスキルを使わないで済むようにしないとね。
「おや、もしかして御高名なアレクシス様ではありませんか!?」
カラムさんが挨拶に加わってきた。私達の代表で貴族だし、キョウスティンの高官に挨拶しない訳にはいかないだろう。
折角なので、アレクシス様に此方のメンバーを紹介しておこう。ベクトを紹介した時の反応がちょっと面白かったかな。




