第八十八話 閑話:ドラム缶風呂再び
様々な事があった街トースアースより街ヒョーベイに帰還しました。
帰ってまず行ったのがオッドルさんの葬儀。ライロンさんが静かに悲しんでいたのが印象的だった。親族も居ないようなので、後処理は全てライロンさんがやってくれるとの事。
また今度、ライロンさんを励ましてあげよう。
そして恒例の如くギルドとジゼルさんへの報告だ。毎回重大な事に巻き込まれて帰ってくるのを呆れられていた。私は別にトラブルに巻き込まれたくて行動している訳じゃ無いのになぁ。
そして帰宅したるは我が家!
ちょっと疲れを取ろうと、ドラム缶風呂を準備。一つのドラム缶にベクトと一緒に入るのは狭すぎるので、ドラム缶風呂をもう一つ増設して並べて設置したよ。ベクトはなんかがっかりしていた気がしたけど?
「は~。お昼から温めのお風呂に入るというのは、良いねぇ~」
「そうね……いい湯だわ」
沈めた階段状の椅子に腰掛けてゆっくりと入る。うん、前回の反省から椅子を入れたのは正解だった。
ベクトもふぃ~とリラックスしている。ベクトの意外と白い肌に赤みが差してきている。
「そいやさ、ベクト?」
「ん?」
「ベクトはどんなスキルを持ってるの? ヒガンちゃんから貰ってるんでしょ?」
「ええ。そう言えば言ってなかったわね」
スキル:アセンブル・フラグメント
ベクトが見聞きした情報を基として、自身が望む結果に至る最適解の答えを知ることが出来るとの事。
本来は上位の役職に就くなどして多くの情報を得、最適の指示をするための統制、指揮の為のスキルらしい。
ベクトはそのようには用いず、戦闘中に使用することで、相手の行動に対応する最適解を得て、反撃するのに使用している。
これが、ベクトの戦闘での読みが非常に的確だったカラクリ。
「ちょっとそれは……チート過ぎない?」
「そうでもない。穴が結構多いのよ。元々戦闘で使うスキルじゃないし」
このスキルを戦闘で用いた場合の弱点として、フェイントに弱いという事が挙げられる。
あくまでベクトが見聞きした情報を基に回答を得るので、間違った情報を得てしまうと、回答も間違えてしまうのだ。
ただ、その場合はスキルに頼らず戦う事で解決することが出来る。
もう一つの弱点は、最適解を理解するのに時間が掛かる場合があるという事だ。
最適解を得、理解し、行動に移すという手順を踏むので、相手が超スピードで迫ってきた場合は間に合わない事になる。
街ヒルビンでルシードとベクトが戦った時の事を浮かべて、なんとなく理解する。
「なるほどねぇ。楽してチートはならないか」
「このスキルは便利だけど、余り私には合ってないのよ」
「私のスキルも同じだなぁ……ヒガンちゃんの思惑通りかな?」
「多分ね……」
ちょっとのぼせてきた。階段を上ってドラム缶風呂から出る。ベクトも同じく上がった。
むぅ。スタイルは負けるか……ベクトが将来の私ならいずれ!
「お~い。アーリィ。ちょっと良い……か?」
ルシードが、上がった私とベクトの後ろに現れた。
うむ。てんどんは基本だね。
「す、すまん!」
「ベクト」
「アーリィ」
二人でドラム缶風呂へ飛び降りる。
再度、様式美に従って、悲鳴を上げてルシードにお湯を浴びせておいた。
日常が戻ってきましたなあ。




