第八十七話 閑話:自己鍛錬の拡張
ここはアース教敷地内。襲撃による戦火を免れた広場の一つだ。
「アーリィさんが、剣の修行を受けていると聞いてね。私も微力ながらお手伝いできるかと思い、この場を設けさせて貰ったのです」
「は、はぁ」
ブレンダン代表からお誘いが来た時は、もしかしたらごはんでも奢ってくれるのかと思ってのこのこ来た訳だが、いつの間にか私の剣の指導となっていたのだ。
確かブレンダン代表は、ケヤラさんに対していた時に剣を使っていた。あのロボットには敵わなかったが、それなりに剣術を学んだ身であるらしい。
この世はいつ自身の身に危険が及ぶか判らない。ブレンダン代表はスキルは持たず魔術も学べなかった。かつて神職が活用していた神術も今は使えるものは誰も居らず途絶えている。
なので剣術を学んだとの事。才能はそこそこあったようで、師範代の真似事程度であれば出来るらしい。
「私が学んだのは古流剣術の一つ『天神一刀流』というものです。指導を受けた訳でもなく古文書から読み解いたもので、私のアレンジが入ってしまっていますが、学べば自衛の程度には役に立つでしょう。まずはアーリィさんの今の実力を見せて頂けますか?」
「まぁ、教えて貰えて自分の力になるかな。宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
ブレンダン代表の構えは流石だ。ルシードのような軽快な構えとは違う、しっかりとした土台に据えられたかのような正眼の構え。
私もこれまで色々と教えて来て貰い、連中を重ねてきたのだ。ルシードとベクトに見て貰ったこともある。初期の私から見違えるほど成長しているのだ。
私も正眼に剣を構え、気合の声と共に踏み込み、打ち下ろす。
私の剣は刃が無いので、万が一斬ったとしても大怪我にはならないだろう。ブレンダン代表の剣に刃はあるが、扱いが私より上手いので、上手い事してくれると信頼している。
自分の姿勢を意識し、視界を揺らさない足運び。そして左手で力を込め右手でコントロールする。それらを可能な限りの速度で行い打ち込んだ。
「ほう……これは中々」
私としてはかなり良い打ち込みとなったはずなのだが、あっさりと払われ、体勢を崩した。
逸らされた剣に剣を重ねられ、これ以上剣を動かせなくなる。成長しているとはいえ、まだまだかぁ。
「基本は良さそうですね。であれば型を少しお教えしましょう。『端打ち』と『門払い』という基本の型ですが、身に付ければアーリィさんの役に立つはずです」
「おぅ、いぇ~」
訳の分からない呻き声を私は上げた。
そこからは恒例の如くしごかれる。意識の持ち方、剣捌き足裁き。一日にも満たない時間で身に着けるようなものではないので、今後の修練に加えてくださいと、練習方法の指導も入った。
長くなりつつある私の剣の練習が、さらに長くなりそうだ……




