第八十五話 狂乱ケイトリン
ケイトリンと名乗った女性は、流れるような足運びを行い剣を振るっている。
派手さは無いし早くもないが、ルシードの電光石火の一撃を簡単に捌いている。防御に秀でた人だ。
だが今回はルシード一人ではない。一旦引いたルシードと入れ替わる様にベクトとトムさんがケイトリンに迫る。
「は!」
ベクトの肘鉄、回し蹴りのコンボが入り吹き飛ばした。致命的ではないが体力をそれなりに削れたはず……
「あは、痛いぃぃ……」
ケイトリンは泣きながら笑っていた。それに痛がり方が普通ではない。ベクトに打たれた所を押さえて身を捩っているようだが、体は脆い?
色々な方向に感情が突き破ってる人だなぁ。是非、お近づきになりたくない。
「もっと……来てぇ!」
ケイトリンは剣を泳がせるように構えながらベクトに向かって駆けだすが、ベクトが下がりトムさんとルシードが対応する。
ケイトリンは剣士として相当強い。強者三人を同時に相手に渡り合えることが出来ているのだから。
流れるような剣捌き。そして身のこなし。見た目と性格は兎も角、警戒すべきだろう。
とはいえ、この状況でケイトリンに勝ち目はない。
直ぐに劣勢となり、ルシードとトムさんを斬撃を腕と足に受け、堪らずに下がった所にベクトのアッパーがケイトリンの胸を強く穿った。
ベクトのアッパーは兎も角、斬撃は左程深くは無い。だが、重傷を受けたかのように痛みを堪えていた。恍惚の表情を浮かべながら。
「ぐぅぅぅ……良い……」
「なんか、相手にするの気味が悪いんだが、どうしようか」
ルシードがボヤくのは尤もだ。私も近づきたくない。
しかし、ケイトリンには足止めの役目を完全に果たされてしまっていた。
ヴェタリーとソウルさんの姿は完全に見えなくなっている。上空から探す手もあるが、向こうも追われていることは承知してるだろうから藪で隠れられるかもしれない。これは逃がしちゃったかな。
「仕方ない。ルシード、この人を捕まえよう。ヴェタリーの知り合いのようだし」
「ええ~。仕方ないのかなぁ」
ヴェタリーの潜伏先は知らないかもしれないけど、何度も貸しがあるような事を言っていたのだ。何かしら手掛かりを持っているかもしれない。
そのケイトリンは痛みに悶え、泣き笑いながらヴェクターが去った方を見ていた。
「そろそろ足止めは、イイかなぁ?」
「この状態から逃げられると思うのか?」
ルシード、ベクト、トムさんが半円に囲い、後方からはクレウス姉さんが弓を構え、ドミニクちゃんも魔法の準備をしている。
ケイトリンはヴェタリーのような反則じみたスキルを持っている訳でもなさそうだし、そう簡単に逃れる布陣ではない。
ケイトリンは懐に両手を入れ、取り出したのは……爆弾!?
「あははぁ……一緒に吹き飛びましょぉ!」
ピンを抜くと同時に、特攻を仕掛けてきた!
これは流石に想定外だ。足止めが終わったら逃げようとするのではなく、神風特攻してくるなんて誰が思う?
「自爆は、自分一人でやって……」
ケイトリンの腹に、強烈な飛び蹴りを加えるベクト。爆弾は放さずケイトリンは後方へ吹き飛んだ。
そしてルシードとベクトが私を、トムさんがクレウス姉さんとドミニクちゃんを押し倒し庇う。
「ひぃ!」
ケイトリンの断末魔と共に、強烈な爆風と爆音が巻き起こった。
少し離れたこの距離で肌に感じる程のビリビリ感。もし、私達の中で爆発したらどれだけの被害が出ただろうか。冷や汗が首筋を伝う。
焼け付くような熱風と共に、ケイトリンのものだと思う血風も混じっていた。爆風が赤みを帯びている気がする。
「人が破裂する所見えちゃった……」
すっごくグロい。敵とはいえヴェタリーの仲間だとはいえ、あんな風になって欲しいとは思わないよ。
「誰も怪我してないな?」
私も各人を見たが、皆、怪我はなかったようだ。そこは良かった良かった。
「ケイトリンとか言ったか……足止めで自爆するなんて、何だったんだ?」
「ん~多分あの人、何事も無く復活して再登場する気がする」
「……今、目の前でこれ以上ない程ハッキリ死んだんだが?」
「私も復活すると思う」
お約束という奴だ。ベクトも同意してくれている。
ああいう敵役が、脈絡も無く死ぬ場合は、なんらかのカラクリで復活するんだ。私は詳しいのだ。
まあ、どういう方法かは目星がつかないけどね。
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