第八十一話 発掘兵器ゼオメグナ
講堂は既に崩壊しており、屋根すら無い有様だった。
壁は炎で彩られている。屋根が崩落していなければ、講堂はきっと煙で充満していたに違いない。
信者一同が集えるほど広い講堂には、椅子が敷き詰められていたのだが、その殆どが薙ぎ倒されていた。その要因と思われるロボットが講堂の中で立っていた。
そのロボットは、外のとは異なり完全な二足歩行型。ロマンあるシルエットだ。
「何故こんなことを? レン代表は承知しているのですか!」
こちらから見え難かったが、ブレンダン代表が倒れていたようだ。
肩に被弾しているようで、血を流し力無く倒れている。その手元には剣が落ちていたので、応戦したが敵わなかったと言った所か。
「何を言っているか判らないなぁ……宗教なんかに頼っている弱い奴ら。今の時代には不要なのよ!」
スピーカーから変調した声が聞こえた。
声を変えて正体を隠したつもりなんだろうけど何となく判った。あれケヤラさんだ。ロボットを着ているのかな?
危なそうな人だったけど、街の人がこんな事をしでかすなんて……
そして、ブレンダン代表に止めを刺すべく、凶刃を手に歩み寄る。
「おい、止めろ!」
ルシードが後ろからケヤラさんに斬りかかる。
完全な不意打ち。動きを止めるために足元を狙った防ぎ難い個所だったにも関わらず、ロボットが反応し、腕に取り付けられた刃で受け止めた。
「なんだお前。邪魔をするな!」
「お前こそ、なんでこんな事をしでかしている!」
「お前は関係ない!」
ルシードが力比べで完全に負けて、吹き飛ばされた。
器用に体勢を整えて着地出来たので、問題は無かったけど……これ、どうやって対処すれば良いの? 外に居たロボットとは異なり、装甲がちゃんと付けられており、中に居るはずのケヤラさんの姿は全く見えない。
「邪魔するなら、お前達から先に消してやる! ダーリン、電力補充お願い!」
「あ、ああ。生体バッテリ展開するよ」
ロボットの背中からカプセルが地面に投下され、割れる。カプセルからスライムのようなのが放電しながら蠢き始め、なかなか気味が悪い。
スライムの放電を浴びてロボットは充電しているようだ。中々凄い充電の仕方するなぁ。
それにしても、あのロボットにはケヤラさん以外に他にも乗っているのかな?
「ここに来たことを後悔しながらくたばりな!」
ロボットが銃口を私達に向けた! 銃撃かと思ったが、そこから放たれたのは……
「ルシード、あれ危ない! 爆発する!」
放たれたのはグレネードだった。着弾する前にルシードに引っ張られながら私も下がる。
私達が居た辺りが、爆風で無茶苦茶に弾け飛ぶ。そこに居たらタダでは済まなかったと思う。サンキュールシード。
壁際に私を置いて、ルシードはケヤラさんに向かって進む。爆風によって起きた煙を盾にしているため、接近を悟られていないはずだ。
が、何らかの方法でルシードを捉えているようで、腕に取り付けられている刃を向けている。
そこに真正面からルシードが突っ込んだ。力勝負は不利と思うけど……刃と剣が重なった直後、そこを軸にルシードがくるりと一回転。
ケヤラさんの懐に飛び込み、回転の勢いのまま剣を叩きつけた。
甲高い音が鳴り響き、ケヤラさんが吹き飛ばされた。ロボットに斬り付けた凹みが見えたが、やはり斬る事は出来ていないようだ。
とはいえ、ロボットの自重で転倒するとダメージがあるだろう。勿論、搭乗している人もタダでは済まないに違いない。
「……ダーリン。損傷アーマーパージ。武装制限解除お願い」
「あ、あいつら強いよ。けどケヤラ程じゃないよ!」
「ありがとダーリン、愛してる。けどこれ以上の油断はしないよ! サポートお願い!」
ロボットの装甲が剥がれ、その下にある筋肉のような金属パイプで構成された本体が露わになる。
両肩と背後に放熱板が励起し、熱を放出。銃口のある手はせり上がってきた板で覆われている。
ロボットものは余り興味は無かったけど、こうもがっしゃんがっしゃん展開されると、思わずぉぉっとなるよね。
「この機体は古代の科学最盛期に作られたもの。当時の基準だと下位量産型らしいけど、現代においては……」
板で覆われた手に稲光が走る。それをこちらに向け……悪い予感がして私とルシードは直ぐに飛び退いた。
光が走る。
その光が通った所は、瓦礫も壁も関係無く貫通し、溶解跡を残して穴を開けていた。
「誰であろうと、この発掘兵器ゼオメグナに勝てると思うなよ!」




