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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
科学と宗教の街トースアース
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第七十九話 廃れた神聖魔法

  今はトースアースを発った所。私とルシードとベクトは街を背にしてヒョーベイへの帰路に立っていた。

 予定通りではあるが、クレウス姉さん達はもう少し滞在している。

 待っていても良かったんだけど、どれだけ遅れるか判らないのでという事だ。私達が最近ヒョーベイに居なかったのを気遣ってくれたのかもしれない。


「にしても、ブレンダン代表大丈夫かな? あの女の人、ちょっと危ない感じがしたし……」

「何時もの事とか言ってたが、確かに危険な感じはあったな。まぁ、あの女もレン代表と話していたぐらい顔を知られているんだ。街中なら流石に変な気は起こさないだろ」


  確かに。密室殺人事件なら発生の可能性がワンチャンあるけど、騒ぎが起これば人の気が無い所では無いんだし、誰かが駆けつけるかな。


「ケンカぐらいは起きるかもだけどね。怪我しても治療魔法とか……ふと思ったけど」

「何だ?」

「治療魔法って、神聖魔法とかそういう分類じゃないのかなって」

「いや。治療魔法は一般的魔法と同じ分類だ。神聖魔法ってのは昔にあったらしいけど、今は使っている奴は居ないと思うぞ」

「何で使ってないの? 神聖魔法って神官とかそういう人たちが使うってイメージがあるんだけど」


  ゲームとかは、神官とかが回復役として、そういうのを使うよね。魔法とはちょっと別って感じで。


「魔法で治療とか同じことを行えるようになったのが要因だな。神聖魔法は理屈が違うらしいが、ちょっと習得が難しいらしい。そもそも宗教が無くなったのが要因と思うぞ」

「なるなる。残っているのが、あの街のアース教だけだしね」


  どうもこの世界は回復役職は廃れてしまったようだ。少し寂しい気もするね。


「いずれ完全に使う奴が居なくなるんだろうけど、惜しい気もするな」

「それはどうして?」

「神聖魔法には、呪いも含まれているんだ。世界に広がっている魔獣を押さえつけている物、それが呪いらしいからな。神聖魔法が残っていれば、いずれ魔獣を押さえつける呪いを強化出来たり、解析したりして何かに活用できるかもしれないだろ?」


  一般的な魔法は変化と発現の力。神聖魔法は対象への追加や上書きの力。そういうイメージらしい。

 魔獣は外からの魔法による変化を受け付けないが、呪いのような能力とは関係無しに追加される力というのが唯一通じるのかもしれない。

 魔獣が森から出てこないのは遥か昔に掛けられた呪いが原因なのよね。そう思うと、神聖魔法が無くなるという事は呪いを自分達で扱う事も出来ないということで、確かに惜しい気もする。何かこう秘伝書とかで残せると良いんだろうけど。


  こうやって一つ何かが途絶える毎に、この世界の終わりは近づいているのだろう。

 この世界が終わる前に、この世界を脱出できれば良いんだけど……けど、そうなるとこの世界の住人である人達は、ルシードはどうすれば良いのかな。

 この世界を出られるかもしれない方法はトースアースで発見することが出来た。

 いつかは地球日本に帰られるかもしれない。私の行動目的はそれだ。

 けど私は、今まで出会ってきた人たちを置いたままに出来るだろうか?

 今は答えを出せそうにない。幸いにもまだまだ時間はあるのだ。そのうち考えよう。




  色々と考えている間に街からそれなりに離れていた。

 私のスキルはトースアースでは秘密にするつもりはないのだけど、街から離れててからサテラ君に乗るのは習慣になっているのだ。


「じゃ、そろそろサテラ君に……」


  その時、街の方から大きな爆発が聞こえた。

 ルシードもベクトも、そして私も街の方を振り返る。


「何!?」

「爆発……街、多分、アース教の施設のある所だと思う」


  爆発? 事故か何か?

 何にせよ、あそこにはクレウス姉さん達がまだ居るのだ。


「ルシード! ベクト! 急いで戻るよ!」

「ああ、そうだな」

「わかった」


  呼び寄せていたサテラ君を方向転換。

 私が乗り、ルシードとベクトが捕まったのを確認してトースアースへと急いで戻る。




  見えた! トースアース。ベクトが言う通りアース教の施設がある所の外壁が崩されている。

 魔物の襲撃だろうか? ヒルビンで謎の男が起こしたあの襲撃が思い起こされる。


「銃撃だ! 流れ弾があるかもしれないから気を付けろ!」


  ルシードの言う通り、発砲音が鳴り響いている。それに混ざる悲痛な叫び声。

 魔物じゃない。魔物じゃない何かが襲ってきている!

 人の命が掛かった争い。直面することは何度もあったが、未だに首筋に冷や汗が浮かぶ思いだ。

 けど身を潜める訳にはいかない。


「今襲われてるみたい。このまま中に飛び込むよ!」

「わかった。アーリィも気を付けろよ」

「アーリィはなるべく私達の後ろに居て」


  銃声と悲鳴が響く中、崩れた外壁の煙の中に、私達は意を決して飛び込んだ。

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