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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
科学と宗教の街トースアース
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第七十五話 異世界の空にあるもの

  再びレン代表の執務室に戻る。サテラ君はサンプルとして、なにやらペタペタとシールを貼って剥がしてカリカリとされた後に開放して貰えた。

 部屋に置いて置くのはちょっと邪魔なので、窓から再び上空へと飛ばしておく。


「さて。君達の相談は『異なる世界からやって来たので、帰りたい』という事だったね?」

「はい。そもそも、私達がこの世界にどうやって来たのかも判らないんです。気が付いたら居たって感じ。ベクトもそんな感じよね?」

「そう……いつの間にかに居た」


  もうちょっと細かい話、例えば空間の揺らぎは見たのかとか、何かトリガーとなる事は無かったかとか、その時の心理状態はどうだったとか、色々と問い詰められるように話は続いた。が、想定できるような事は思い当たらないらしい。


「君達が経由した方法はとりあえず置こうか。別のアプローチを考えよう」

「別のですか?」

「そう。実は一つ、この世界と異なる世界に繋がっているかもしれない所が一つあってね……君達の元の世界かどうかは保証出来ないが」

「そ、そんなのがあるんですね。何処でしょうか? もの凄く遠い所?」

「いや、ここからでも見える所だ」


  部屋の中を見渡したがそれらしいものは見当たらない。窓から見えるのも街と外の森、そして何処までも続く青空と太陽だけだ。特別なオブジェがあるとかでもなさそうだし。


「? それらしいものは見えたりませんが?」


  するとレン代表は上を指さした。上……天井を見ても特に変な所は無い。天井のシミでも数えたら良いのだろうか?


「天井ではない。もっと上……空だよ」

「空ぁ!?」


  レン代表曰く、過去どれだけ古い資料を調べても、この世界の人類は上空の更に向こうの宇宙。宇宙がある事を知ってはいるが、誰も宇宙の世界に辿り着いた事が無いらしい。それは魔獣に滅ぼされた最高峰の科学技術を誇った時代においてもだ。流石にそれはおかしいと思うが、その理由は何処にも残っていない。

 それならば自分達が調べようと、様々な努力を払ったが、未だに宇宙空間へと辿り着けないでいる。技術が足りず、燃料も確保できない。口惜しい事だと。


「宇宙空間に辿り着けないでいるのは解りましたが、それが何故『異なる世界』に繋がっていると思われるのでしょう?」

「魔獣……この世界には無い体組織を持つアレが来たのが、その宇宙空間だったと過去に調べた資料に残っていたのだ。もしかすれば、宇宙空間に魔獣が通ってきた何かが残っているかもしれない。空に辿り着いたのは、それ以降、誰も居らず、空は変わっていないのだからな」

「なるほどな……アーリィ。お前のスキルってどれぐらいの高さまで行けるんだ?」

「ん~雲に掛かる高さまでは飛んだことあるけど、それ以上は無いなぁ。感じ的にはまだまだ高く飛べそうではあったけど」

「なら、一回試してみるか?」




  って事で、サテラ君に乗って私とベクトの二人でチャレンジすることとなった。

 何故ベクトもかと言うと、いきなり元の世界に戻った時の為である。ルシードはちょっと悩ましい表情をしてたな。

 レン代表から道具を二つ借り受けた。一つは高度計、もう一つは緊急連絡用の発光弾。発光弾はフラッシュバンのようにピンを抜いて数秒後に強く発光するのだ。


「ベクト。サテラ君に繋いだベルト、ちゃんと締めた?」

「OK、問題無いよ」

「じゃ、ちょっと飛んできます! もし何か見つけても、触らず一回帰ってくるから」

「アーリィ。気を付けてな。無茶はするなよ」

「ルシード、心配しないで。ベクトも付いてるし、心配ないよ。多分」

「多分かよ」


  苦笑いを浮かべてルシードが見送ってくれる。

 私とベクトをベルトで巻き付けたサテラ君は、私のスキルの指示の通り、ひたすら一直線に上昇した。地上のルシードが瞬く間に小さくなっていく。




  高度計は1kmを突破。地上の人はもはや見えず、トースアースも豆粒だ。見渡すと地上には森一面がひたすらに広がっており、所々に集落や街らしき何かがあるのが判る。

 高度計は5kmを過ぎる。景色は余り変わらない。この世界がゲーム世界であるなら、世界の端はどうなっているのだろうか? 陸地の向こう、海が広がっているがその先は見えない。

 ひたすらに上がり続け、高度計は15km。この辺りになるとかなり寒い。ベクトの様子を伺ったがまだ問題無い様で、頷いて問題の無い事を返してくれる。

 高度計は50kmを過ぎた所を指し示している。辺りはいつぞや見た地球と宇宙の境界のような世界が広がっていた。周囲の気温は下がり続けており、もはや身が切れるかのような寒さとなっている。

 サテラ君はまだ飛ばせそうだが、これ以上は私達の体の方が限界だ。同じく耐えているベクトの方を見る。


「ベクト……一回戻った方が……ちょっと……キツイ」

「……アーリィ、何かにぶつかる!?」


  珍しいベクトの大声。はっと上を見た時、私の前に見えない壁のような水面のような、そんな何かが迫っていた。


「わぁ!」


  体が冷え切っていたこともあり、サテラ君の操作が遅れてまともにぶつかってしまった。

 幸いと言うべきか、見えない壁に吸い込まれず、クッションに埋もれたように勢いが止まり……弾き落とされた。


「ベクト! サテラ君を離さないで!」

「アーリィ、大丈夫」


  流石の身体能力でベクトはサテラ君を離さず、むしろ私の体が離れない様、私と一緒にベクト君を抱き抱えてくれた。


「つっ……何に当たったの?」

「多分、大当たりね……この世界の境界だよ。この境界の先が地球とは限らないけどね」


  たまたま来た街のたまたま相談した結果、あれほど望んだ帰還への道をこうもあっさりと見つけてしまったのだった。

 どうしようかね、コレ?

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