第七十四話 異世界転移をどうやって証明するか?
「私とベクトはこの世界とは異なる世界からやってきました。元の世界に帰りたいのですが、その方法が不明なんです」
「ふむ……まずは、貴方達の正気を疑う所からですかね」
まあ、普通はそうだよね。冗談と受け取らないだけ、まだマシかもしれない。
「話に矛盾が出るまでは付き合ってあげます。貴方達が異なる世界から来たという証拠は何かありますか?」
「う~ん……私達の世界はどんな所かと言うとね」
知識チートは出来ないが、この世界との差異は説明できるかもしれない。
「……という所から来たのよ」
「平和で科学技術が高い世界というのは興味ありますが、それはただのお話です。証拠にはなりません」
「じゃ、この部屋にあるあのエアコン! 大体の仕組みとか言えるよ!」
「エアコンを知っていますか……エアコンは珍しく知っている人は非常に少ないと言えますが、絶対に知らないという訳でもありません」
そうだった。この世界の過去は地球日本以上の科学技術を誇った世界なのよね。エアコンぐらいは今でもあるものなのか。
じゃあ、何を持って証拠とすれば良いのか。むむむ……異世界モノで自身が転移者であるって証明する方法って何があったかなぁ。大体はそもそもそういうものだと周囲が知っていて、説明したことが無い事が殆どの様な気がする。
悩む私に助け舟を出してくれたのはベクトだった。
「アーリィ」
「ん? どしたのベクト」
「サテラ君を見せると良い」
あれはヒガンちゃんが用意してくれたものだけど、別に日本を示すってものじゃないと思うんだけど……まいっか。説明に行き詰まっちゃっているし。
窓は開くかな? 一部だけど開くようで、なんとかサテラ君を通せるかな。
「ちょっと大きい剣があるんですけど、外からこの部屋に入れても良いですか?」
「構わんが、剣?」
許可を頂いたので登場いただきましょうサテラ君! ……と思いつつ、窓割らない様に慎重に、ゆっくりとサテラ君を部屋に入れる。
ふ~ギリギリ入ったね。窓の開閉幅がもう少し小さかったら入らない所だったよ。
「……これは?」
「えっと、神様の使い?みたいな子から貰った剣です」
「ふむ……」
レン代表が机から手持ちレンズのような物を取り出して、レンズを通してサテラ君の刃を見ている。最初は何でもないような変わらない顔であったが、次第に険しい、驚きの色を滲ませ始めた。
「これは……まさか……」
「えっと……私が見せておいてなんですけど、何か判りました?」
「詳しく調べないと確かな事は言えないが、簡単に言うと、この剣はあの魔獣の体と非常によく似た組織で出来ている」
まさかサテラ君ってば、あの魔獣で出来てたの!?
まあ、今まで何度も触ってるし、長時間触れてきたけど何にも害は無いのよね。丈夫な事は良い事だ。
「ちょっと来なさい。隣の部屋だ」
なんだろ? この部屋を出て突き当りにある部屋……位置的にこの建屋の一室というよりは、後付けで増設されたような感じだ。
扉も金庫の様にやたらに頑丈そうなものになっている。その部屋の扉に鍵を差し込んでから横にあるリーダー的なものにレン代表が手を置くと、一瞬魔法的な文様が浮かび上がり、扉がガッチョンガッチョンと音を立てて開錠されていく。
「機械錠を魔法認証をトリガーとして開錠する仕組みだ。魔法を使うのは少し癪だが、耐久性は高いし電気も不要。機械と魔法の複合的な仕組みでセキュリティも高いからな」
この世界最高峰の科学の街としては、魔法はできるだけ使いたくないのでしょうね。けど、その気に入らない魔法を使ってまで鍵を掛けているこの部屋には一体何があるのだろうか?
私達が部屋に入ると同時に、部屋に明かりが付く。そして部屋の中央にある頑丈そうなケースに収められているのは……
「魔獣カオス・ダンプティだ」
「そう、その死骸だ。以前キョウスティンでアレクシス卿が倒したモノの一つを、恩師経由で譲って貰ったのだ。研究の為にね」
「恩師というのは?」
「王宮学部長マーク様だよ。以前、私は彼の教えを受けていてね」
意外な繫がりがあるんだねぇ。マーク様のお茶目な所は伝えられていないようで残念。
「魔獣の体組織を長い間調査して、魔獣はこの世界に元々存在しない……異世界からこの世界へと来たものか、神によって新たに作られた存在なのではと認識しているのだよ」
「つまり、あの剣が魔獣と同じか近しい物であるなら」
「それに付随する君たちも、そうかもしれない……という訳だな。正解がどうであれ、面白い物を見せて貰えたのだ。相談ぐらいは乗るさ。」
「それにしても……神に作られた存在って、科学者でもそういうのを信じるんですね」
「不思議かな? この世界の物理のみを追求する科学者が神の存在を信じるというのは」
「ええ、まあ、はい」
「科学者の中でも信じるかどうかはそれぞれだ。だが、私はその存在だけは信じている。この魔獣カオス・ダンプティを調べてからは特にそう思っているよ」




