第七十一話 正体不明の装甲車を発見!
科学と宗教の街トースアース。
ヒョーベイから北東に位置し、街の規模としてはかなり小さい街。
街の特徴として、この世界最先端の科学技術を持ち、有能な科学者達が魔獣や魔物を倒し、世界を人の手に取り戻すための研究開発を日夜続けている。
私とベクトが地球日本に帰るための方法を相談してみるのも良いかもしれないね。異世界渡りなんて、科学者の興味を引きそうだ。
もう一つの特徴として、この世界唯一というか最後の宗教団体アースの本拠地でもある。
この世界の宗教、遥か昔には多数の宗教団体がありそれぞれの信じるものを信仰していたのだが、魔獣により世界が破壊され荒廃が続いても、信仰していたものは何も答えず信仰は衰退していった。
それでも信じ続けてる人はいたのだが、長い年月によりまた一つまた一つと宗教は消えていき、とうとう最後に残ったのがこのアースという名の神を信仰する団体なのだとか。
一般世間では『世界に神など居らず、信仰は無意味』という考えで、習慣として何となく残った崇拝行為が形だけあるぐらい。窮地での神頼みとかね。
ちなみにクレウス姉さんとトムさんの結婚も、街に婚姻届けを出し、ギルドでパーティを開いた程度だ。
「トースアースから借りていた発電機を返却するという依頼がギルドに入ってきたんだ。昔の人は結婚の式を開いて宗教の人から祝福の言葉を掛けて貰ったらしいじゃないか。行くついでに祝福を掛けて貰おうと思ってさ」
「なるほどね。……ちなみにクレウス姉さんは『祝福』の意味って知ってる?」
「知らないよ。魔法による強化みたいなもんじゃないのかい?」
ああ、そう言えばこの世界は魔法があったか。ゲームでは魔法と神聖は別物として分けられがちだし、この世界でもそうなのかな?
まいっか。害ある物じゃないっしょ。クレウス姉さんとトムさんの結婚生活は幸せなものになって欲しいしね。気休めなのかもしれないけど、協力しましょ。
この依頼を受けるのはトムさんチームの三人、私とルシードとベクトの三人。
ベクトもこの街に住むのにあたって、ギルドに登録と相成りました。ルシード並みの実力者なのでそれを放っておくのは勿体ないということで。
アイドルはヒルビンで卒業してしまったのでやらないが、夜の酒場でこっそり歌手として歌おうとしているのを私は知っているぞ。危ない事以外なら好きにしたら良いんじゃないと思うので見守るに留めてるけどね。
参加者はこれだけと思っていたが、余計なのが一人付いてきたのだ……
「なんだよ。俺がトースアースへの道程を一番よく知ってるんだ。だから参加するのは当たり前だろ」
これまで運良く見かけなかったのに、なんでがっつり絡んできたのか……以前にギルドで絡んできたチンピラことオッドルさんだ。
言っている通り、道案内兼護衛の一人として参加するそうな。
ライロンさんに話を聞くと「前にも言ったが、仕事だけはちゃんと出来る奴なんだ。そこは信頼してやってくれ」との事。ホントかなぁ。
荷物である発電機。通常なら四人ぐらいで神輿の様にして運ぶのだけど、今回は私が居る。
北門までは通常通り神輿形式で運ぶのだが、門から見えない所に来ればベルトを発電機に通し、サテラ君で釣り上げる方式で運ぶのだ。吊り荷の下は危険なので入らないようにご注意ください。
サテラ君をコントロールするため、私が隊列の中心に。最前列にルシードとオッドルさんが立ち、最後尾はベクト。両脇をトムさんチームが固める布陣だ。
人数は少ない為か、道中は盗賊が吸い寄せられるように絡んできた。
「へへへ……そんな少数で荷物運びなんて不用心だな。それを寄、ぐぼぉ!」
「命が惜しくば、げばぁ!」
「男コロス女オイテ、ごぼぉ!」
出てきた盗賊全員、セリフを言い切る前にルシードの剣とベクトの拳により速攻で沈黙させられていた。
この二人の戦闘能力が高過ぎて、クレウス姉さんが弓を構える時間すらない程だ。
「凄いですね……ルシードさんの強さは前から知っていますが、更に強くなってます。それと同じぐらい強いベクトさんは、本当にどういった人なんでしょう」
私の隣を歩いているドミニクちゃんの感想が漏れる。
「キョウスティンへ向かってからヒルビンから帰ってくるまで、本当に色々とあったのよ」
修羅場を何度か経験してるしね。ずっと一緒だった私には判り辛いのかもしれないけど、ルシードは強くなっているのだろう。ベクトの強さは私にも解らん。
ドミニクちゃんは13歳という若さにも関わらず、魔法を複数使える魔法使いらしい。どういう伝手か知らないがヒョーベイでは兵士騎士しか学べない攻撃魔法を習得しており、回復魔法まで使える。優秀な子なのだ。若いためか連続して魔法を使うことが出来ないのがネックかな。なので、普段は周囲警戒とかの、以前私がしていたクレウス姉さんのサポートみたいなことをメインとしている。
街トースアースへは次の日の昼過ぎに到着となった。予定ではもう少し掛かるはずだったのだが、道中の盗賊や魔物が瞬殺されたので、ほぼノンストップで来れたのが要因だ。
街が見えてきたので発電機をサテラ君から神輿に戻す。
見えてきた街の外観は他の街と大差は無かった。聞いていた通り街の大きさはかなり小さい。地下とか無いなら多分、人口は一万人にも満たないんじゃないだろうか。
と見ていると、大きな扉が大きな音を立てながらゆっくりと開く。開いた扉に居たのは……
「なんだアレ? 鉄の箱かい?」
「街を色々と渡り歩いてきたが、あれは見たことないな」
この世界に銃が残っているのだから、アレも残っていても不思議では無いのかもしれないね。
ただ、この世界の状況で運用できるとは、流石、最高峰の科学技術を持つ街と言えるかもしれない。
「あれはね。戦車っていうものよ」




