第六十七話 閑話:ベクトの経緯
「で、ベクトも私と似た状況で、結局は大した事は知らないのね」
「ん。そういう事」
「は~振出しに戻るかぁ」
ベクトを連れて街ヒョーベイに帰る道中。
休憩中にベクトが街ヒルビンにどういう経緯で住むことになったのか聞いたのだ。
ベクトは最初、何処とも知れない場所に出現したのだが、迷子になって滅茶苦茶な方向に歩いた結果、ヒルビンに着いたそうな。
そこで待っていたのは呆れ顔のヒガンちゃん。
私と同じように別の街で家を用意してくれていたらしいが、予想以上の迷走で別の街に着ちゃったって事だね。一応所有権利書を貰ったけど、結局は一度もその家に入らなかったらしい。そもそもヒルビンから他の街や集落に出なかったようだ。
ヒガンちゃんに導かれてヒルビンに入った後は、情報収集で聞いていた通り、大会でお金を稼ぎながら日々を過ごしていたそうな。
「恐らくだけど街に入る時、ヒガンちゃんは街の壁を一時的に消し去っていたようね」
そういえば、私がヒョーベイの街に入る時、街の壁が無かったのよね。ベクトの時も同じだったのか。
「多分大した意味は無いと思う。門から通らせるのが煩わしかっただけかな……後、アーリィ」
「ん?」
「あなたの名前、『アーリィ・ファスト』は偽名というか、自身の名前が思い出せなくて権利書に書かれていた名前を使ってるんでしょ?」
もはや、私が『アーリィ』と呼ばれることに違和感無くなっていたけど、そういえばそうだった!
「そういえば、そうね……今でも名前が出てこないや。何で判ったの?」
「私もね。同じだから」
「あんたもかい!?」
っと、突っ込んだので落ち着こう。
私とベクトが同じという事は、ガリアちゃんも同じ流れなんでしょう。
「確認するけど、ベクト、貴方はこの世界に転移する前の世界の事覚えてる?」
「……確認の意図は判った。地球日本の事は覚えてる。私が生活している日々をね」
「そうなると、単純に私が分裂したとかという話では無く、異なる時間軸の私が転移したって可能性も有るわね」
「ありがちな事ね……今は、それを否定する情報は無いけど、決定と言えるほどでもないわね」
「はぁ……やっぱり一度は、ガリアちゃんも含め、三人で直接集まった方が良さそうね」
「そうね。それが切っ掛けで何かが起こる可能性も有る」
「ルシードは何か思いつくことある?」
良く焼いた魔物肉を咀嚼していたルシードに話を振ってみる。
「そうだな……よくわからん!」
「ルシードに聞くべき話じゃなかったか」
がっくし。
ルシードは色々と経験豊富だから、何かアドバイス出るかなと思ったけど、転移とかの話は流石に守備範囲外か。
「所で一つ聞いて良いか?」
「ん?」「ん?」
「何でアーリィとベクトはそんなにくっ付いてるんだ?」
「私がお姉ちゃんみたいなものだから、アーリィを守ってあげないと……」
「そういって離れてくれないのよ……」
いつの間にかベクトに過保護お姉さん属性が付いたようだ。
一時的な事なら私にも身に覚えがあるから良いんだけどね……やられる側になって、こんな面倒な事とは思わなかった。
ルシードをからかったり巻き込むのは、少し自重しよう。
休憩も終わって再びサテラ君三人掛けで空の旅だ。
そして遠くに見えるのは、ほんと半年近くぶりになってしまった我が街ヒョーベイだ。
手掛かりを見失っちゃったし、あれこれ大変な日々だったから暫くはのんびりしたいものね。




